第7試行 くもり時々ツールハブ
「ねぐの位置、なんとか把握できたが…これ、ちょっとおかしいな。」げーみんぐの声が、通信越しに聞こえてきた。
ハルとなゆは、げーみんぐが解析していた端末の前で立ち止まった。
「おかしい?どういうこと?」なゆが不安げに尋ねる。
「位置情報はあってる。でも、GPSの信号に異常があるんだ。見た目はただの位置確認だけど、なぜか途中で偽装がかけられている。」
「偽装?」
「うん。簡単に言うと、ねぐが意図的に隠した可能性が高い。多分ST対策かな…」げーみんぐは頭をひねる声を出しつつ、さらに解析を進める。
「それ、解除できるの?」 なゆが焦り気味に言う。
「解除は可能だけど、少し時間がかかる。しばらくは混乱させられるかもな。でも、解除が終わったら正確な位置がわかる。」げーみんぐはキーボードを叩きながら、再び真剣な表情になった。
「その間、俺たちどうする?」ハルが腕を組んで言う。
「待つしかない...と思う。もし仮に、ねぐが何か対策をしてるなら、準備しておかないと。」
その後しばらく、三人は静かに待った。数分後、げーみんぐの声が再び響く。
「解除完了。ねぐの正確な位置、出たぞ。」
「どこなの?」なゆが息をのむ。
「廃工場跡だ。場所はここだ。」げーみんぐが端末に表示された地図を送る。
「廃工場跡…。そこ、危険じゃないか?」ハルが言った。
「ああ。でも他に手がかりがない。」
なゆは覚悟を決めたようで、ハルに頷く。
二人は急いで向かう準備を整え、車に乗り込んだ。向かう先は、荒れ果てた廃工場。やがてその建物が見えてきた。
「ここにねぐが…!」なゆが息を呑むと、ハルは目を細めて周囲を警戒する。
「気をつけろ。何か仕掛けがあるかもしれない。」
工場内に入ると、重い空気が二人を包み込んだ。すぐに、何かが動いた気配がした。
「ねぐ…!」なゆは名を呼ぶが、返事はない。代わりに、影のようなものが目の前に現れた。
突如ねぐの攻撃がなゆとハルに向けて発射される。
「なんだ!?サメがサーフィンしてるみたいだ...!」
サメがハルに噛みつこうとするが、ハルが間一髪で避ける。
「ねぐ…どうしてこんなこと...!」なゆが手を伸ばす。
だが、その手を払うように、ねぐが近づいてきて、無言で攻撃を放った。
「待って、ねぐ!私だよ、なゆ!」なゆは必死に言うが、ねぐは何も答えず、攻撃を続ける。
「くっ…!」ハルはすかさず盾となり、なゆを守る。
「なぜこんなことを?」ハルが聞いた。
ねぐが低く笑った。だがその笑みは、ねぐのものではない。見たことのない冷たい表情を浮かべていた。
「ねぐ…?」なゆは驚き、ハルもその異常さに気づいた。
その瞬間、げーみんぐから通信が入った。
「やっぱりおかしい。ねぐ、ツールハブに乗っ取られてる。あの反応、完全に別の人格が支配してる。」
「ツールハブ…!?」なゆは驚愕する。
「そうだ。ねぐが使ってたツールハブ、完全に乗っ取られてる。だからお前のことも知らない、感情もない。何か、強制的に指令を出している者がいる。」げーみんぐは冷静に説明を続けた。
「じゃあ…ねぐはもういないの...?」なゆの声が震える。
「いや、今はツールハブが体を使っている。ねぐが完全に支配されてるから、今のねぐを倒せば元に戻せるかもしれない。」
「倒す…」なゆは一瞬言葉に詰まったが、すぐに決意を固めた。
「よし、やるしかない!」ハルも決心した。
二人は、ツールハブに支配されたねぐに立ち向かう。あの冷徹な目をしているねぐを、もう一度元に戻すために――。




