第4試行 first game2
――静かに開く玄関。
そこに立っていたのは、ピンク色の髪をした中性的な人物。
身長は低く、年齢も判然としない。だがその表情には、不思議な“ズレ”がある。
「やっほー。ここが『手動くん』たちの巣?
んー、思ったよりでっかいじゃん。ま、いいや。奪って壊して帰るね~?」
満面の笑み。無邪気。
だけど、その背に漂う気配は「破壊者」のものだった。
「お前……奪取者、ozeか」
ハルが言った瞬間、ozeの笑みがひときわ強くなる。
「うん。正解っ。よく知ってるね、嬉しいなぁ。
ご褒美に……どれか一個、選ばせてあげるよ。何を奪われたい?」
「ふざけんな」
げーみんぐが即座に構える。
なゆも言葉を発さず、背中の端末に指をかけた。
「情報じゃ、ozeは唯一のアカウント強制干渉型。触れずともIDを“塗り替える”。接触は厳禁。下手すれば消されるよ」
ハルは頷いた。
「話が通じないタイプか?」
「ううん、話してるじゃん。ちゃんと。まあ、聞いてないけどねぇ」
一瞬のうちに、空気が歪んだ。
ハルの足元から、文字列のノイズが浮かび上がる。
“ID強制操作プロトコル”――ozeの能力が発動していた。
「これで、君の名前は“無”になる。いーでしょ?」
「……させるかよ!」
ハルは横に飛び、ノイズをかわす。
続けざまにげーみんぐが通報砲を放つ。
「そんなの、政府所属の僕に効く訳ないでしょ!」
床を蹴って宙に舞うoze。その動きは軽く、獣のようだった。
そして――
「うりゃっ!」
言葉と共に、なゆの背後へ回り込む。
「なっ――!」
回避が間に合わず、なゆの端末にノイズが触れる。
だが、その瞬間。
「ッ、遅ぇよ!!」
ハルの蹴りが、ozeの背中に炸裂する。
「いったぁ~~……もう、なにすんの……政府直属の僕に触るとか、規約違反じゃないのかい?」
そう言いながら、ozeの笑顔が微妙に揺れる。
無邪気さの奥に、狂気が見える。
「つまんないなー。でもさ、いいよ。
もうちょっと“遊んで”あげるよ。君たちが泣くまでね♪」
ハルは息を整える。
「こいつ、ヤバいな。反応速度が異常だ。戦闘経験、軍レベルのもんじゃない」
なゆが小さく唇を噛んだ。
「多分、こいつは人間じゃない」
一気に戦闘は激化していく。
ハルたちは全力で迎撃するが、ozeの「IDを奪う力」は触れずとも影響を及ぼす。
データ空間が歪む中で、彼らは命をかけた知恵と連携で、僅かな反撃の糸口を探していた――。




