表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@last_hand  作者: last_hand
2/12

第2試行 改行者

春日は夜の街を歩いていた。


いつもと変わらない、暗いネオンと薄汚れた路地。しかし、@22822を取った後だからだろうか。心なしか世界が明るく見える気がする。

ID探しに疲れた後ふと、ハルはただ気晴らしに散歩していた時だった。


そんなとき、黒いフードを深くかぶった女が目に入った。


誰にも気づかれないように、周囲を警戒しながらスマホを操作している。

春日は何となく気になって、その女をちらっと見た。

女がスマホをしまおうとした瞬間、春日の目にスマホの画面がわずかに映った。


そこには、二文字のIDが表示されていた。


「……二文字だと...?」


思わず声が漏れた。

女は振り返り、鋭く春日を見つめた。


「......」


春日は少し言葉を選びながら答えた。


「二文字で...その様子だと"改行者"か」


女は一瞬だけ動揺を見せたが、ハルに害意がないとわかると安堵した。


「……そうよ」


沈黙が少し流れた。


「私はなゆ、時間がないの。」


女はそう言って、周囲を警戒し始めた。


「俺はハル。手動者だ。手動でIDを探してる」


「そう...珍しいね」


なゆはさっきの不安そうな顔が嘘のように微笑んだ


自己紹介をしたそのすぐ後、遠くからエンジン音が近づく。


「セキュリティ・チーム、STが来たわ」


女の表情が一気に硬くなった。


「私は逃げなきゃ。」


女は振り返りざまに言った。


「さようなら、"手動者"さん」


春日は眉をひそめた。


「でも、お前、怪我してるだろ?あんた、一人じゃ無理だ」


なゆは首を横に振る。


「大丈夫。放っておいて」


だが、遠くから近づくエンジン音が明らかに迫っていた。


「そう言われても、見過ごせない」


春日は勝手に動き出した。


「一緒に逃げるぞ!」


なゆは驚いた表情で彼を見たが、抗う余裕はなかった。

二人は暗い路地を走り始めた、がSTが近づいてくるのを感じる。


「これでしばらくは追跡をかわす」


通信妨害装置、VPNを起動し、STの目をくらます。

なゆはしばらく静かに息を整え、やっと言った。


「……ありがとう。でも、これ以上は迷惑かけたくない」


春日は苦笑いを浮かべた。


「助けるのに迷惑なんてないさ」


彼女の持つ、改行で取得した二文字IDを知っている春日。


「お前のID、ただの二文字じゃないだろ。だから見過ごせなかった」


「で、助けてくれたのは嬉しいけどアテはあるの?」


「この辺に仲間の拠点がある。そこに当分は隠れられるはずだ。」


ようやく暗い路地を2人は抜け、工業地帯に駆け込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ