表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
@last_hand  作者: last_hand
11/12

第11試行 ツールハブ、崩壊

暗い地下施設の入り口で、四人は最後の打ち合わせを行っていた。


「内部構造はこっちで把握済みだ」

げーみんぐが端末を操作しながら説明する。

「物理サーバーは最下層。中央セクションの隔壁を越えたらすぐだ」


「問題はSTだな」

ハルが警戒の目を細める。

「奴らもツールハブの破壊を阻止するために動くはずだ」


「STが本格的に動くのは明日以降だろう」

げーみんぐが分析する。

「だが下っ端や巡回ボットは既に配置されている可能性が高い」


「僕が案内する」

ねぐが前に出る。

「ツールハブに操られていた時の記憶……システムの脆弱点が分かる」


「よし、行くぞ」


四人は暗闇の中へと踏み出した。内部は予想通りSTの小型ドローンが巡回していたが、げーみんぐの遠隔操作によってシステムに偽装情報を流し込み、彼らの存在を隠した。


「ここだ……」



最下層に到達すると、巨大なサーバーラックが立ち並ぶ部屋が広がっている。その中心に鎮座するのはツールハブの物理コア──球体型の金属装置だった。


「パスコード認証が二重になってる」

げーみんぐが言う。

「普通なら解除に最低15分はかかるが...」


「僕に任せて」

ねぐが前へ進む。

「ツールハブと同調していた時の感覚……まだ残ってる」


彼が端末を装置に接続すると、青いライトが激しく明滅し始めた。複雑な数字とアルファベットが画面を踊る。


「来た……!」


突然、通路のスピーカーからSTの警告音が響いた。


「侵入者検知。セキュリティレベル3。武装ドローン発進……」


「まずい!」

なゆが叫ぶ。


ハルが即座にスタンガンを構える。

「ここは俺が食い止める。げーみんぐ、サポートを!」


「了解!」


通路から黒いドローン群が現れる。鋭利な刃と光学センサーを搭載した最新鋭モデルだ。ハルは最小限の動きで初撃をかわし、電流を込めた一撃で一体を撃墜する。


「二体目も来るぞ!」

げーみんぐの声。


空中で回転するドローンを紙一重で避けながら、ハルは再びスタンガンを振るう。高電圧が金属装甲を貫き、機体が火花を散らして墜落した。


その間、ねぐの作業は順調に進んでいた。


「第一認証解除完了……第二認証は……」


彼の額には汗が滲んでいる。極度の集中が要求される作業だ。


「あと30秒で完全ロックダウンが始まる!」

げーみんぐが警告する。

「急げ!」


「分かってる……!」


ねぐの指が高速でキーボードを叩く。画面に最後の暗号が表示され、彼は迷うことなくコードを入力した。


「認証突破……!」


装置全体が赤く発光し始めた。


「破壊プロセスを開始……」


最終コマンドを打ち込んだ瞬間、サーバールームの非常灯が点滅し、隔壁が急速に閉まり始めた。


「撤収だ!」

ハルが叫ぶ。


四人はドローンを振り切りながら通路を駆け抜けた。背後で轟音が響き、赤い光が膨張して消えていく。


「ツールハブ、完全停止確認」


げーみんぐの端末に通知が表示された。


「やったな……」

ハルが安堵の息をつく。


「まだまだ終わりじゃない」

ねぐが言いながらも、緊張から解放された顔には笑みが浮かんでいた。


「とりあえず拠点に戻ろう」

なゆが提案する。

「今日はみんな休んだ方がいいと思う」


地下施設を脱出し、夜の街を走り抜けてげーみんぐの拠点へと戻る。古びた倉庫の扉が閉まると同時に、全員が床に座り込んだ。


「なんとか乗り切ったな……」


ハルが壁にもたれかかり、天井を見上げる。げーみんぐは端末をチェックしながら頷いた。


「STの追跡網はしばらく誤作動するはずだ。奴らが真実に気づくまで数日は稼げる」


「よかった……」

なゆが膝を抱えて呟く。

「ねぐも無事で」


「おかげさまでね」

ねぐは妹の頭を優しく撫でた。

「ありがとう」


沈黙が流れる。張り詰めていた空気が緩み、疲れが一気に押し寄せた。げーみんぐが立ち上がる。


「今日はもう休もう。明日からは……」


「日常が戻ってくるんだな」

ハルが笑う。

「久しぶりにまともな睡眠が取れそうだ」


「僕はお茶でも淹れるよ」

ねぐが立ち上がった。

「みんな疲れてるだろうから」


「ありがと……」

なゆが小さく微笑む。


外は朝日が昇りかけていた。長い一日が終わったが、それは同時に新しい一日の始まりでもあった。


ツールハブの脅威が去り、STの追跡も一時的に抑えられた今、束の間の平穏が訪れようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ