ヒジキと消しカス
帰宅した流大一家は家族で一度話し合うことに、両親の言葉は流大に届くのか…
家に着いてからもパパはムスッと口をへの字に曲げたまま、今日1日中そのままだったらパパの眉毛の間にはシワがくっきり残るんだろうな。ママはだいぶ落ち着いたみたい。でも目の周りはパンダみたいに薄く黒く、鼻の先っぽはサンタのトナカイみたいに赤くなっている。
パパもママも何も喋らない。
「今日の夕飯は何かデリバリーでも頼もうか」
「それが良いわね。こんな気分で作った料理が美味しくなるわけないもの」
夕飯はピザになった。配達のお兄さんにパパは少しだけ口の端が上がってたからボクも少しだけ口の端を上げた。
「ピザ、2枚でよかったのか?大きめのサイズだが意外とすぐ食べ切れそうだぞ。」
ピザの袋を少し持ち上げながらパパは尋ねた。
「大丈夫だと思うけど、もし足りなそうなら追加でいくつか頼んでおいてもいいかもしれないわね。サイドメニュー何があったかしら」
ママがスマホでメニューをスクロールする。
「ボク、ポテト食べたい」
「いいな。俺はビールでも開けるか、2人は何か飲むか?」
「甘いお酒ってあったかしら?」
「あー、どうだろ最近買い足してなかったからな」
パパは冷蔵庫を開けながら首を傾げる。
「悪い無いみたいだ。今からでも買って帰ろうか?」
「ボク、コーラ飲みたい」
「コーラァ?あー、ちょっと待てよ。あったあった、ソレ」
パパがボクの方にコーラのペットボトルを投げてきた。炭酸の泡が落ち着くまでコーラはしばらく飲めそうにない。残念
「お酒はやっぱりいらないわ私コーヒー淹れるからちょっと通るわよ」
ママは体を横に滑らせるように進んで電気ポットの中に水を入れだした。コーヒー、1回飲んでみたけどあんなに苦いものを飲むなんて、大人の好みは分かんないや。
「この時間からコーヒー?夜眠れなくなっても知らないぞ?」
「眠れなくなったら録画してるドラマでも観るわよ」
パパとママはほんの少しいつも通りに戻った。まだ2人の顔は少し強張ってるけど。
さて、パパは車で「話をする」なんて言ってたから、ボクは少し居心地が悪い。怒られるか、長いお説教か、どっちでも今日はゲームができそうにない。学校でどこまで進めたかみんなから聞かされるんだろう。ネタバレされないように気をつけないと…
「じゃあ食べるか。」
「はーい」
「「「いただきます」」」
みんなで手を合わせて挨拶をする。ママのこだわりで毎食してるけど、めんどくさいって思ってるのはボクだけじゃないと思ってる。パパは仕事から帰ってくるのが遅くなると1人で後から夜ご飯を食べるけど、その時は挨拶してないのをボクは何回か見かけた。
それとも挨拶をしなくていいのも「大人の特権」なのか?それならママは変わった大人だ。わざわざめんどくさい事を毎日してるんだから。
「美味そうだぞ。流大はどれから食べる?」
ピザはトロトロのチーズがたっぷりかかってておいしそうに湯気を立てていた。
「じゃあ、照り焼き」
ボクはパパの1番近くにあった色の濃い鶏肉がのってマヨネーズがかかった物を指差した。おいしそうな物を見ておなかがすいたみたい。
「ん。ママは?」
パパはヒョイッとボクのお皿にピザをのせるとママの顔をのぞき込みながら聞いた。
「んー、あんまりお腹空いてないのよね。サラミピザを1切れ貰おうかしら」
「はいよ」
ママはまだ少し顔が怖いけどそれ以上に病気みたいに元気がない声をしてる。
ボクのせいなんだろうな
「食べながら聞いてもいいか?」
パパがボクの目をまっすぐに見ながら聞いてきた。大事な話をする時のパパは絶対に目を合わせてくる。まばたきを全然しないからメドゥーサよりも人を石にするのが早そう。
「うん」ボクはピザを口に入れながら頷いた。鶏肉が少しずれて落ちないか心配になった。
「何で流大は武くんをジャングルジムから突き落としたんだ?」
パパの質問を聞いてボクは少し首を傾げた
「タケルくんがユウくんをバカにしたから」
「何て馬鹿にしてたんだ?」
「えっと、お前はこんなとこまで登れないだろとか、弱虫とか」
ボクの言葉をパパはまばたきをせずにだまって聞いてた。
「遊くんが馬鹿にされてるのを見てカッとなって流大は武くんを突き落としたのか?」
「うん」
「その事をお前は後悔してるのか?」
パパの目はボクを見てるようでボクじゃないとこを見てるように見えた。だってボクと目が合ってなかったから。
「後悔してない」ボクは正直に答えた。ウソをついたらすぐにでも石にされそうで。
「何で後悔してないんだ?」
「だってユウくんをバカにしてきたんだ。ジャングルジムから落ちるだけじゃあますぎる」
パパの眉毛がピクッと動いた。本当の事を話してもボクは石になるみたい。ゲームは進めきれずに終わるのかな。レベル上げがんばったのにな。
「甘すぎる事はないとパパは思うぞ。少なくともそれは遊くんと武くんの問題だ。お前が武くんを傷付けていい理由にはなってない。」
パパの低い声がボクのお腹に入ってきた。ピザはいつの間にかお腹の中からいなくなっていた。
「武くんが遊くんを馬鹿にしていたことは分かった。でも口で言えばよかったんじゃないのか?」
「ゆってもタケルくんは変わんないもん」
「変わらないからって暴力を振るうのはダメだ。特に突き落とすなんて、打ちどころが悪かったら怪我じゃ済まなかったかもしれないんだぞ。」
パパの目はとうとう赤くなってきた。まばたきしないから乾燥したんだろう。相変わらずパパの目にボクは映っていない。
「とにかくしてしまった事はどうしようもないが、自分がした事の重さをもう1度よく考えてみろ。そして心の底から武くんに謝るんだいいな?」
パパの目を見つめてるうちにボクまでまばたきを忘れてたみたい。少し目が痛い。ママはだまってボクたちの会話を聞いてた。
「流大は今回の事をちゃんと考えないといけない。それはこれからの流大のためにも大切なことなのよ」
静な雨のようにゆったりとしたママの声がボクの頭をポンポンとたたいてきた。ボクにとって大切?ボクは正しいことをしたのに?まだ考えなきゃなんてジョウダンじゃない。
でも、うなずかないとパパもママもボクを解放してくれなさそうだったからボクは「うん」とうなずいた。
やっぱり分かんない。何が良くて何がダメなのか。良いことと悪いことは誰が最初に決めたんだろう?
続きを書きました。引き続き不慣れな文章で申し訳ないです。が是非読んでください。




