ヒジキと消しカス
子供の無邪気さは残酷さと表裏一体。そんな恐ろしさを具現化したような主人公である流大の視点で語られる物語。
わからなかった。どうしてママがボクを泣きながら叱るのか、どうしてパパがお顔を赤鬼さんみたいに真っ赤にして怒ってるのか。
分からなかった。ボクはタケシくんが許せなかったんだ。タケシくんはいつもボクのお友達のユウくんにイジワルするんだ。かみの毛引っ張ったり、わざとこかしたり、ボク見てたんだ。
先生はユウくんのママに「大人しい子で周りと馴染めていないようで、言葉の発達にも少し難が見られます。」って言ってた。
ユウくんは優しい子なんだ。ボクがコケたらボクよりも痛そうにするの。
ユウくんはおしゃべりがニガテみたいだけど、ニコニコ笑うとエクボが出来るんだ。ボクは笑ってもエクボが出来ないからユウくんの笑顔を見るのが好きなんだ。
「一度、遊くんのご両親と、武くんのご両親、流大くんのご両親も含めて話し合いの機会を設けたほうが良いでしょう。今後の事についても当事者たちの希望を聞いて、慎重に決めていかねばなりませんから。」
「本当にすみません。うちの流大が武くんに怪我を…謝って済む問題でもないのですが、一度そのような機会を頂けるとありがたいです。」
ママは赤くなった目でペコペコ謝ってる。ボクには大人の話がまだよく分かんない。大人は難しい話が好きみたい。
「流大、帰るわよ。パパが車で待ってるから早く行きましょ。」ママがボクを呼んでる。
「はぁい」
車に乗るとパパは運転席でじっとしてた。
「先生は何だって?」
「一度3人の両親含めて話し合った方がいいでしょうって。話し合いの前、明日にでも武くんのお宅に謝りに行ってくるわ。」
「あぁ、ごめんな明日仕事が入ってなかったら一緒に謝りに行けたのに。」
「いいのよ。仕事が忙しい事は知ってるし、今日付き合ってくれただけで十分。」
「流大、武くんに謝ったのか?」
パパは後ろに顔を向けてボクの目を見て聞いてきた。
「謝ったよ」ゴメンナサイする理由は分かんなかったけど、ゴメンナサイしないと昼休みになっちゃいそうだったから。
「家に着いてからまた話すけど、今回の事はパパもママもとても悲しく思ってる。もちろん先生や遊くんもな。」
パパはそう言いながら、車のエンジンを入れて運転しだした。ママは助手席で窓に寄りかかってるから顔が見えない。多分寝てるのだろう。
車のラジオから流れるボクの知らない男の人の歌だけが、深海のように重くなった車の空気の中を魚のように泳いでいた。
しばらく細々と続きます。
興味があれば是非読んでください。
読んでくれたら私が喜びます。




