表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/38

コラボ配信

 コラボ配信の話をして以降、紗由の機嫌が悪い。

 先日、デパ地下で買ってきたデザートを実家に持っていってからは、メッセージには返答してくれるようにはなった。

 しかし、まだ、通話には出てくれない。


 紗由の中で、俺は姫川ユリナとワンチャン狙っている男扱いされているようだ。

 あいつも結構、潔癖というか、ガチ恋勢っぽさがあると思う。



 まあ。こういった感じで、コラボ配信について妹と一悶着あったが、約束してしまったものは仕方がない。

 なんとか妹を説き伏せた上で、配信に臨むことになった。




 配信開始30分前。

 事前に準備している最中だった。


 Discordの着信音が鳴った。


 発信者の名前を見て、俺は思わず背筋を伸ばした。


『姫川ユリナ』


 同じ事務所に所属しているが、顔を合わせたのは1回だけ。言葉を交わしたのも挨拶程度。

 それが今日、コラボをすることになった。



 本日行うゲーム、鉄の咎人の配信は、既に3回目になる。俺が攻略に詰まっている様子の配信を見て、

「私、もうクリアしたんで、もし良ければ指示役みたいな感じでどうですか?」

 という話があり、コラボが実現した。


 一度リアルで会った縁もある。断る理由はなかった。


 俺は通話に出た。


「お待たせしました、ベルンさん」


 第一声は、想像していたよりも柔らかかった。初対面の時に感じた、クールな印象とは少し違う、落ち着いた声。


「……いや、こちらも準備できたところですよ」


「よかった。えっと……今日はよろしくお願いします」


「ええ、こちらこそお願いします」


 沈黙が流れた。


 ……気まずい。


 配信上であれば、灰城ベルンっぽいの語彙の言葉が自然に出てくるのだが、配信前のこの状態では、あくまでただの一ノ瀬透である。どのように接するべきか、正解がわからなかった。


「あの、今日の流れなんですが」とユリナが口を開いた。


「私が指示を出して、ベルンさんが操作する形でいいですよね」


「ええ、それで」


「はい。えっと……今、溶鉱炉の手前でしたっけ?」


「そうですね、溶鉱炉のボスまでの道中を攻略中です」


「溶鉱炉、私も苦労しましたよ。敵の配置がいやらしくて...」


「苦労したんですか?」


「え、あ。でも、ボスも倒しましたよ?一応」


 ちゃんと指示役として力になれる筈です。

 そう、慌てたように付け加える声が、少し可笑しかった。


「よし、じゃあ今日はお願いしますね」


「はい、任せてください」


 ヘッドホン越しで聞く声は、なんとも自信ありげだった。


「あ、そうだ」とユリナが言った。

「配信タイトル、私の方で考えてきたんですけど、大丈夫でしたか?」


「ああ、問題ないですよ」


「よかった。『【コラボ】没落貴族のボス攻略、クールな姫の参謀が助けてくれるらしい』にしましょう」


「ユリナさんって、自認クールなんですか」


「デビューから、そのキャラでやらせてもらってます」


 少し恥ずかしそうな声色だった。




 少しだけ間が空いて、配信時間が近づいていることに気がついた。


「じゃあ、そろそろ始めましょうか」


 ユリナの声が切り替わった。さっきまでとは打って変わって、落ち着いたトーンになる。


「お願いします」



 自枠の配信を開始する。すると、待機場のコメント欄が動き始める。


《あ、始まった》

《今日もベルン様の沼配信見にきた!》

《ユリナ姫とコラボ?》


「同志たちよ、待たせたな」


 俺はいつもの声で言った。


「本日は特別な配信をお届けする。我が灰城家復興の前に立ちはだかるダンジョン、溶鉱炉を攻略すべく、今日は助力を借りることにした。紹介しよう——我が参謀、姫川ユリナ先輩だ」


「……参謀役を務めます、姫川ユリナです。よろしくお願いします」


 先ほどより、少しだけ声のトーンが高かった。普段の配信だと、こういう声なのか。さっきDiscordで話していた声とは、結構違う。


 そして、さすがに半年以上vtuberとして配信しているだけはある。落ち着いた雰囲気だ。


《ユリナ様おるやんけ》

《この組み合わせ聞いてない》

《貴族と姫は豪華すぎる》

《助っ人かあ、だいぶ沼ってたもんな》


「本日の形式を説明する。姫川先輩が指示を出し、私が操作する。いわば、姫川先輩が指揮官で、私が兵隊、そういった関係だ」


《ついに一兵士にまで墜ちたか...》

《没落して最前線に行かされてるの草》


 うるさいぞ、コメント欄。


 ユリナからも、説明が入る。

「簡単に言うと、私が攻略の指示を出しながら、ベルン様に実際にプレイしてもらう形です」


《ラジコンスタイルね》

《没落貴族ラジコン》

《没落して結果、ラジコンにまで堕ちた男》

《ユリナ姫が指示役で大丈夫なんか》


「では、ベルンさん——ベルン様、参りましょう」


「うむ」


 初コラボという少し浮ついた雰囲気の中、ユリナとのコラボが始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ