4.伝え合うということ。
「日本語が上手くコメントできないアタシに、シロ様はどうしたと思います!? あちらも一生懸命に英語で色々教えてくださろうとしたんです!! ――『せっかくきてくれたんだから、思ってることは伝えあいたいよね』と仰って!!」
「な、なるほど……」
――さすがは狛犬さんの大ファン。
思い出話であるにもかかわらず、その場面が目に浮かびそうなほどの熱量だった。いいや、ここまできたらファンを超えて信者ではないだろうか。そんなことを思いながら、俺はこう言った。
「それで、日本語ができるようになったんだ?」
「えぇ、その通りです!! 物凄く勉強して、一ヶ月でマスターしましたとも!!」
「……い、一ヶ月」
日本語って世界的に見ても、かなり難易度の高い言語じゃなかったか。
俺はこの来栖ミリカという少女の勢いに、苦笑するしかなかった。しかしいまの話は、狛犬シロという少女の人となりを知るには大きな情報だ。
あとは、今日手に入れたこの雑誌になにか情報があると良いのだけど……。
「さてさて、ソースケくん! まだ時間はありますよね!?」
「え、あ……うん。まだ少しは話せるけど――」
「それでは、シロ様の素晴らしさについて語らいましょう!!」
「……おおう」
俺は思わず、そんな声を漏らしてしまった。
ありがたいのだけど、さすがに新参者の自分にとっては重荷な気がする。しかしこれも、恩人により良い歌詞を提供するために必要なこと。
一つ気合いを入れ直して、俺はミリカに向き直るのだった。
◆
『今日は楽しかったです! まさかアタシの話を最後まで、真剣に聞いてくださる新規様がおられるなんて!! 素直に感動しました!!』
『いやいや。今日は本当にありがとう、勉強になったよ』
帰宅後、俺はミリカからのメッセージにそう返信する。
結局のところあの後は、ミリカのマシンガントークに圧倒されているだけだったが。それでも狛犬シロという少女が、いかにファンから愛されているか、それが良く分かった。
狛犬さんはファンを愛して、共に歩みたいと心の底から思っているのだろう。
そう結論付けていると――。
『今度また、シロ様の素晴らしさをお話しますね!』
「……おおう」
勢いで交換させられた連絡先。
そこに届くメッセージに、俺はまた苦笑いしてしまった。
「でも、とりあえずファンからの視点は補強できたな。あとは――」
返信もそこそこに、俺はミリカから預かった雑誌を取り出す。
残るは狛犬さんがファンたちに、どのような想いを持っているのか。それを彼女の言葉の記録から、紐解くことができたらいいのだけど。
俺は椅子に腰かけてから、雑誌を開いて該当のインタビューに目を通した。
そして、見つけたのだ。
「あぁ、これだ。……やっぱり、そういうことだよな」
デビュー間もない頃。
飾り気のない、狛犬シロの等身大のコメント。
そこには自分を愛してくれるファンへの想いが、強く語られていた。俺はそれをすべて読み終えてから、ふっと一息つく。
そうすると、頭の中に自然と言葉が浮かんできた。
言葉同士が引き合いあって、文章になり、そして歌詞になっていく。
「……よし。方向性は、これでいこう」
そうして俺は、パソコンを起動して作業を開始したのだった。
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