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1.シロの過去を辿って。

ここから第1章です。

応援よろしくお願いいたします。






『シロさん! いま、少しいいですか!?』

『どうしました? まつりちゃん』



 ――数日前、某チャットでのやり取り。

 コラボ配信を終えた黒猫まつりは翌々日、意を決して尊敬する狛犬シロに連絡を取っていた。事務所こそ異なるが、ライバー間の交流が禁じられているわけではない。

 そのため、まつりはこれを機にシロとお近づきになろうと考えていたのだ。



『この前、美味しいクレープのお店を見つけたんです! 明後日、一緒に行きませんか!?』



 しかし、当然ながらリスクもある。

 彼女もそのことは重々承知の上であるため、この誘いを送るのに日を置いてしまった。だが、このチャンスを逃せば仲良くなる機会はない。

 まつりにとって、これは一大決心によるものに違いなかった。

 しかし、



『あ……ごめんなさい。その日は、先約があるの』

『……先約、ですか?』



 返ってきたのは、期待に反する内容。

 予定があるのであれば、仕方がないとは思えた。なにせ狛犬シロというライバーは、アプリ内に限らず様々なメディアに進出しようとしている。そんな彼女のスケジュールを一日押さえる、というのは至難の業であると考えられた。

 それでも、まつりは少しだけ歯向かうように訊ねる。



『お仕事、ですか?』



 これで仕事なら諦めがつく。

 そう思っていたのだが、返ってきたのは――。



『ううん。強いて言えば、これは私の……初恋、かな?』





 そんな想定外の言葉だったのだ。







「うーん……ここから先、どうするか」




 狛犬シロさんとの打ち合わせから、数日が経過。

 俺は一生懸命に作詞に打ち込んではいたが、少ししたところで行き詰ってしまっていた。それというのも俺自身が、狛犬さんの活動や先日聞いた過去以外、彼女について明るくないからだろう。ファンなら知っていて当然の情報というのも、俺には枯渇していた。

 そうなってくると、必要な情報はどこから得るべきか……。



「一通り、彼女の過去に出した曲は聴いたけど……」



 それはあくまで、事務所によって彩られた狛犬シロ、という人格の曲だった。

 もちろん、それが悪いわけではない。むしろその中で活き活きと自己表現をしている彼女には、どこか嬉しさのようなものを感じずにはいられなかった。

 俺の書いた歌詞に感動した女の子が、こうやって花開いているのだから。

 それはきっと、作詞家にとって至上の喜びに違いなかった。



「でも、そうなると次は……インタビューが載ってる雑誌、か」



 俺は次に、もう一つの可能性を考えてみる。

 ライバーとしてデビューした彼女は、まさに飛ぶ鳥を落とす勢い、というやつだったらしい。当然ながら多くの雑誌で特集されていただろうし、過去の体験や、思い出も書かれているはず。しかしいま、それらを手に入れようと考えたら――。



「くそ、バックナンバー……電子化されてない、か」



 いくつかはデータとして購入できたが、初期のものが欠けてしまった。

 可能なら、その時期の話が一番知りたいというのに。



「こうなったら、街の古本屋で探すしかない、か……?」





 まさに藁にも縋る、という感じで。

 俺は一つ気合いを入れてから、外出の準備を始めたのだった。



 


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プロローグを拝読して、これ白がいれば黑は要らなくなっちゃうんじゃあ、と思いましたが。こういう形で黒が絡んで来ますかあ。 白の気持ちははっきりしてるようですが、黒の気持ちがどんなふうに変化していくのか(…
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