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1.思わぬ申し出。







 ――みなさん、事件です。



「ホントに、どうしてこうなったんだ……?」



 俺はいま炎天下の中、とある駅前で一人の女の子を待っていた。

 その子というのも狛犬シロさんなのだが、前回の待ち合わせと大きく異なっているのが目的だろう。以前はカフェで打ち合わせだったが、今回の名目はなんと――『デート』だ。

 何故にそうなったのか。

 それというのも、事はミリカのデビューシングル祝賀会に戻るのだった。







「え、いや……あの、この前に一回だけ二人でカラオケに……?」

「それって、つまるところ『デート』ですよねぇ!?」

「デ、デデデデ、デートォ!?」



 狛犬さんは何やら凄い剣幕で、俺を壁際へと追い込んでくる。

 たしかに、ミリカとは二人でカラオケにきたことがあった。しかしそれは作曲のためというか、止むを得ずという部分もあったので、心の中で勝手にノーカンにしている。というか、そう考えないと推しと二人でカラオケに行った、という記憶で死んでしまうに違いなかった。

 そんなこんなで忘れよう、としていたのだけど――。



「ソースケくんね、アタシの頭を撫でてくれたよね。優しかった!」

「頭を撫でた、ですってえええええええええええ!?」



 ちょっと待って、ミリカさん。

 どうしてキミはこの状況下において、笑顔で火に油を注げるのかな。

 そのことについて一度、真剣に叱ってあげたい気持ちが湧き上がってきた。だけどそれ以前に、まずは目の前で狂犬のようになっている狛犬さんをなだめないと……。



「先生、説明してください!!」

「いやですね、狛犬さん。これには仕方ない事情もあった、というか――」

「問答無用!!」

「説明してくれ、って言ったのそっちですよね!?」



 俺の言葉を遮って、彼女はそう叫ぶ。

 いったい何が、ここまで狛犬さんを駆り立てるのだろうか。――アレか。大切な後輩ライバーに手を出されたと思って、怒っているのか。あるいは、百合の間に挟まる男は処刑的なサムシングですか。もしそうなら俺も同意見なので、この場で腹を切りたい所存だが。


 しかし、何やら微妙に違うのも分かった。

 そのため絶妙な間合いを測りつつ、俺と狛犬さんは睨み合いになっている。カラオケという場に不釣り合いな重い静寂に包まれていたが、それを破ったのは少女の方だった。



「これは先生に、ちゃんとバランスを取ってもらわないと……!」

「……バ、バランス?」



 狛犬さんの言葉をオウム返しすると、彼女は腕を組む。

 そして、子供っぽく頬を膨らして言うのだった。



「近衛先生は次の休日に、私ともデートしてください!!」――と。









 ――で、いまに至る。

 俺は普段より整えた服装で、いま狛犬さんを待っていた。

 先日は狂犬の相貌になっていたが、果たして今日はどうだろうか。



「せ、先生! おはようございます!!」

「あぁ、おはようござ――」



 そう思っていると、背後から彼女の声。

 いつもの感覚で振り返って、その瞬間に言葉を失った。何故なら、



「あの、いかがでしょう……?」



 清楚な雰囲気の少女が、白のワンピースに愛らしい帽子を被っている。

 手に持った小さなバッグもまた、良いアクセントになっていた。正直なところ、初対面時から思っていたが、そこに輪をかけて美少女感が増している。

 俺は思わず意識が遠のくのを堪え、どうにか感想を絞り出した。



「か……かわいいです。とても」

「そう、ですか? やった」



 なんだその『やった』の可愛らしい言い方。

 ヤバいぞ。このままだと、完全に意識を呑み込まれる。そう思って、



「い、行きましょうか……!」

「……あ、はい!」




 わざとらしいくらいに、そう話をぶった切った。

 そうして、思わぬ形のデートが幕を開けたのである。



 


ここから第3章です!




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― 新着の感想 ―
向こうは自分を推しだと言っているのだから。まあ、気づいてあげないとねえw いまは、矢印がぐるぐる回っているだけの状況のままですが、どの矢印が方向を変えて向き合うことになりますかねえ。 案外、白の矢印…
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