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5.ライブへの招待。








『近衛先生、ありがとうございました! 今回の歌詞、本当に気に入っていて、早く歌いたくて仕方ないです!! 作曲家の先生とのスケジュール感次第ですが、おそらく時間は思ったよりかからないかな、という感じだそうです!!』



 俺の作った歌詞データを送ると、狛犬さんはそれはもう喜んでくれた。

 社交辞令とも考えたのだが、具体的にどんなところが良いとか、この部分はどのような感情を込めれば良いかとか。かなり突っ込んだ相談をしてくれたので、本心からだろうと思えた。

 そんな反応が嬉しくて、ついついメッセージのやり取りも頻繁になっていく。

 それからしばらく経って、俺は――。





「よくよく考えれば、Vのライブって……くるの初めてだな」




 主催者の招待枠で、倍率が恐ろしく厳しい狛犬シロのライブに足を運んでいた。

 もちろんVIP席のようなものではなく、一般席だが。それでも用意してもらえるだけ、ありがたいというものだった。

 俺は会場の出入口で紙袋を片手に、狛犬シロ等身大パネルなどをボンヤリと眺めている。それというのも、今回は偶然にも同行者がいるのであった。

 その人物とは、



「あー!! ソースケくん、いたぁー!!」



 狛犬シロの大ファン……もとい、敬虔なる信者の来栖ミリカ嬢である。

 彼女は人混みの中からこちらを見つけると、まるでスキップするかのような足取りで近付いてきた。そして十年来の友人にするかのように、ハイタッチを求めてくる。

 俺がそれに苦笑しながら応えると、ミリカはまたマシンガンのように話し始めた。



「それにしても、倍率凄かったのによくお互いに当選できたね! ソースケくんは、どこでチケット手に入れたの? レーチケ、ヨロバシ、あとはゼブンとか?」

「いや、違うけど……」

「ええええええ!? だったら、まさか転売!?」

「それも絶対に違う!! 頼むから、その単語は大声で言うな!!」



 ミリカの声に、数名のファンが俺たちを睨んでくる。

 誓って転売ではないのだが、特殊な入場をするわけなので後ろめたさがあった。そんなこんなで、ひとまず連れの少女を落ち着かせてから、俺たちはひとまず物販コーナーへ。

 そこもまた人が入り乱れていたが、どうにか掻き分けて進んでいく。

 しかし、ミリカは上手く動けないらしい。



「ふぎゅ……待って、ソースケくん……!」



 いまにも人の波に攫われそうになっていたので、これは仕方ない。

 友人として、俺は彼女の伸ばした手を掴んだ。

 そして自身のもとへと引き寄せて、



「大丈夫か? 俺から離れないようにしろよ」

「……ふえ!?」



 呆れつつそう告げると、何やらミリカは顔を赤らめていた。

 たしかにいまの言い方はキザだったかもしれないが、俺にその気はない。女子高生に手を出そうものなら、社会的に抹殺されてしまう。

 そんなことになれば当然、近衛カナデとしての仕事はできなくなる。

 いままでかかわった方々もそうだが、狛犬シロ――推しの推しにもまた、多大な迷惑をかけることになってしまうに違いなかった。



「あ、ありがと……ソースケくん」



 だから、このように。

 仮に親しい美少女が照れていたとしても、俺はその気になってはいけない。あくまで大人として、来栖ミリカとは接していくのだと決めていた。





 ――さて、何やかんやあって。

 特別なペンライトなども購入した俺たちは、各々の席へと向かうため別れた。当然ながら同じライブに居合わせただけなので、並びの席なんてわけがない。

 そう思っていたのだが、思ったより近い場所に座席を確保していたようで、



「ミリカのやつ……そんなとこから、手を振るなって」



 俺の座席から見て右斜め上方に、彼女の姿はあった。

 互いに認識できるため、時折にミリカがこちらへ視線を送っているのが分かる。そのことに本日何度目か分からない苦笑をしつつ、そろそろ開演時間のため前を向いた。

 すると、一気に会場が暗転。




「いよいよ、か……!」




 俺は自然と胸が高鳴るのを感じながらも、緊張から拳を握るのだった。




 


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