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02魔王との邂逅

扉がゆっくりと開く。

危険な気配が内側から噴き出してきた。

あり得ないほどの魔力が充満していて、身の毛がよだつ。

ウソだろ、こんなの絶対ウソに決まってる!

ってな時に限って、人は自分の人生の走馬灯を見るもんだ!夢じゃない証拠が必要だぜ!

俺::(何ていうか、危機……これは間違いなくオレ様28年の人生で最大の危機だ。)

(長くなるがな、これがいわゆる走馬灯ってやつか。情けない半生がフラッシュバックして、血迷って魔王征伐(笑)に参加したあの日のバカ笑いまで見えるぜ。)

(頼む、夢なら今すぐ覚めろ!だって今のオレは……)

(一人で!)

(魔王の宮殿に!!)

(魔王の目の前に立ってるんだからなあああ!!!)


危険なオーラを纏った女がこっちを向いた。心臓の鼓動が急加速し、この腰抜け心臓がオレを置き去りにして先に逃げ出しそうだった。


恐怖で、魔王の顔すらまともに見られない……失礼にならねえか心配で……

魔王:「あらあら、わが宮殿に小さい虫が一匹迷い込んだようね。」

魔王の冷たい視線に、ヘビに睨まれたハムスター状態だ。

俺::「て……てめぇが魔王か!」

(落ち着けオレ!今ちょっとでもビビった素振り見せて、自分がクソザコナメクジってバレたら即死だぞ!?)

魔王:「おお……いきなり余を見抜いたか?」

魔王:「然り!余こそがこの城の主、魔族の中の魔族、万王の王、魔族臣民がこぞって推戴する新たなる暗黒の救世主、魔界の頂点――魔王ユリシス二世!」

魔王:「汝、我が眼前に立つ人間よ、名を名乗れ!汝はいったい何者だ!」

魔王:「何故、余の宮殿に現れた!」

魔王:「汝の答え次第で、この場所を生きて出られるか否かが決まる!」

魔王:(ナイス!今の余、超カッコよかった!)

魔王:(突然現れたこの相手が誰かは知らんが、ようやくあの練習してた自己紹介を言うチャンスが来た!リズたちが家にいる時は恥ずかしくて練習できなかったんだよ!)

俺::(ひいいい!予感はしてたけど、マジで魔王だったのかよ!このクソったれな運命め、いつもいつもオレを危険に巻き込んで、ビクビクしてるこの心臓を弄ぶのが楽しいのか!?)

俺::(死にたくねぇ!オレはまだ若い!まだ楽しんでねぇ!何とかして生き延びる方法を考えなきゃ!そうだ!今はごまかし切ればいいんだ!)

俺::「余は……勇者、勇者ワッツワースである。」

(……)

(…………)

(………………)

(ああああバカかお前!なんで急に『勇者』なんて嘘こいたんだよ!バレたらどうするつもりだ!)

俺::(ついでに本名までバラしちまった!ていうか本物の勇者って何て名前だっけ?!)

魔王:「おお~、汝が噂の勇者ワッツワースというわけか?」

魔王:(えええええ?!?!勇者がこんなに早く現れるなんて!余、魔王になったばっかなのに!)

魔王:(魔王が勇者に会ったら普通何するんだっけ?戦い始める前に流れとかあるのか?!)

魔王:(そうそう、名乗り合って、ちょっと会話してから戦闘開始とか?経験ゼロだわ、まったく、タイミング悪すぎ!メイドたちも全員外出中だし!)

魔王:(あ……ていうか勇者って何て名前だっけ?彼がワッツワースって言うならそうなんだろうな)

魔王:(あーもう、早すぎて準備できてないよ!今襲ってきたら実力もわかんないし、四天王ってやつも五人ともいないし、勝てるかなぁ…まあ、様子見でいこっ。)

魔王:「どうした、勇者よ。手を出す気はないのか?」

俺::「……」

俺::(…………)

俺::(死死死死死!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぞ今度は!! 勝てるわけねぇだろ、偽物のくせに!今すぐ土下座して許し請うたほうがマシか?!)

魔王:(動かねぇな)

魔王:(ずっと真顔で固まってるのも疲れるわ)

魔王:(剣抜くなり逃げるなり、早く何かリアクションしろよ陰キャ勇者!もしかして女の子の手も握ったことない童貞?)

俺::「人間と魔族は……本当に共存できぬものなのか?」

俺::(……は?)

俺::(今のオレ、何言ってんだ?)

俺::(もうダメだ、オレ。)


魔王:(は?こいついきなり何言い出したの?勇者ってこんな感じなの?初めてだし。これどう返せばいいのよ?)

魔王:(ま……とりあえず戦う気はなさそうだし、実力もわかんないし、慎重にいこっ。)

魔王:(うーん、魔王らしい返しってなんだ?そうだ、昔読んだ『魔界英雄物語』には……)

魔王:「ふむ、共存か……それは我等ではなく、汝ら人間次第である。もし汝らが平和を望むならば、余はその平和を与えよう。だが、もし戦いを望むならば、余は汝らが望む以上の戦いを与えるまでだ。」


俺::(…………)

俺::(この言い回し……つまり、オレがこの魔王城を生きて出られる見込みはゼロってことか……)

俺::「我等は……平和を望む。人間と魔族が長く共存できる平和を。余は勇者として、人間代表の名において、魔王との和平交渉を申し出る。」

俺::(終わった……何が『我等』だよ、つい魔王の口調に釣られちまった。それに勇者だの人間代表だの、和平交渉って何をどうするつもりだオイ!)

俺::(もし魔王がマジで承諾したらどうすんだよ、国際問題だぞ?バレたら国内で大恥かくし、切腹ものだぞ!?)

魔王:「ふむ……ならば、余はひとまず汝を信じてやろう。何しろ汝の身に殺気はなく、聖剣すら携えていないようだ。」

魔王:(ん、上出来!なかなかいい返しだったわ、『魔界英雄物語』の流れ通りだし。問題ないよね?魔王じゃなければ自分に褒美やりたかったぐらい!)

魔王:(でも交渉ってどう進めるんだろう?結構大きな話だよな、超面倒くさ……)

魔王:(リズたちが戻ってくるまで待つべきか?……いやいや、もう子供じゃない、魔王なんだからね!一人でも大丈夫なんだから!)

俺::「感謝する……」

俺::(……え?)

(勇者って聖剣持ってなきゃダメなのか?! あと殺気って?普通の人間から出せるわけねぇだろ!でもどうやら魔王は信じてくれたみたいだ、とりあえず命は助かった。)

魔王:「では、勇者よ。汝の交渉案とは?」

俺::「…………」

俺::(あるわけねぇだろそんなもん!!!!!)

魔王:(あら、勇者が黙り込んだ。交渉のことを考えてるのかしら。)

俺::「その……とにかく!魔族と人間が共存できるか、実験してみようじゃありませんか!」

魔王:「おお……共存?実験?」

魔王:(意味わかんないんだけど?共存実験って何?まったく、この陰キャ勇者の考えてること、ますますわからん。もっとストレートに話してよ。)

俺::「魔族から代表を一名、人間の国に派遣し、相互理解と交流を促進するのです。その代表の身の安全は、この余が保証いたしましょう。」

魔王:「おお~」

魔王:(あら、なんかすごく面白そう。)

俺::(頼むから適当に断ってくれ!『両軍交戦せば使者を斬らず』だ、この流れでそっと解放してくれええ!)

魔王:「面白い!余、承諾したぞ!」

魔王:(今の台詞、超カッコよかった。魔族の面目を保てたはず……)

魔王:(……ねえバカ勇者、何かリアクションしなさいよ。)

俺::「…………」

俺::(えええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!)

俺::(マジで承諾しやがったあああ!!!!!! どうにかせねば!)

俺::「感謝いたします。では、余はひとまず人界へ戻りましょう。魔族の代表は後からお越しくだされば結構。異論はござらぬな?」

俺::(よし、この流れで魔王が気づく前に、ゆっくり後退りして脱出だ……)

魔王:「待て、勇者よ。何もそこまで急ぐことはあるまい。」

俺::(やっぱり……終わった。バレたか。もう帰れねぇ。母上、すぐに天国でお会いします。)

魔王:「人間の世界とは……いかなる場所なのだ?」

俺::(え?! も……もしかしたら助かる……? ここはしっかり答えねば!)

俺::(でもこれ、魔王の探りか? もうバレてるのか……?)

俺::(平常心平常心……こういう時こそ冷静に!)

俺::「人間の世界か……もしやわが故郷、南の都のことであれば……」

俺::(チャンス!頑張れオレ!とにかく、ありのまま話すか、またごまかすか考えよう……)



ありのままに答える --- A-1


ごまかす --- B-1


A-1 (選択肢1: ありのままに答える - 続き)

俺:「良い場所ですぞ。南の都セラニアは海に近く、風は爽やかで……」

俺:「南国特有のミズメンリョウの木がそこかしこに生え、セラ川の流れが都の中心を貫く。名産の南国海老にパン粉と天ぷら粉、卵液をまぶして揚げれば、その味は絶品!サクッとした衣にプリプリのエビ、一口で天国行き確定!」

俺:「ああ、そうだ!キビナゴという小魚もおる。その身を煮込めば牛乳のように白く、湯気とともに漂う香りは鮮烈極まりない!」

俺:「これに南国産のオレンジジュースでも添えれば、まさに至福の時!天国に昇った気分だ!」

俺:「午後にはナンシー亭のフィレパイもオススメ!パンにバターと特製ソースで焼いた牛肉を挟んだもので、ほおばれば湯気とともにジュワッと肉汁が……たまらん!」

俺:(ちょっと待て待て!話しすぎじゃねぇか?)

俺:(つい調子に乗って長々喋っちまった、この話しグセ!さっきまでの陰キャキャラと違いすぎるぞ!)

魔王:(ゴクリ)←涎を飲み込む音

俺:(ん?なんか雰囲気変わったぞ?さっきまでの魔王と印象が違う……気のせいか?)

魔王:「(ゴクリ)……ふ、ふむ。……なるほど、興味深き情報じゃ!決めた!機会があれば南の都で味わってみるぞ。」

俺:(ふぅ……どうやら満足してくれたようだ。適当にでっち上げなくて正解だった。)


1. よし、この調子で続けよう。

俺:「ですから、こんな素晴らしい世界を滅ぼすなんて、あまりにも惜しいと思いませんか?あの美味しい食べ物も、あの素敵な街並みも、永遠に失われてしまいます。」

俺:「人間がいる限り、魔族も人間が開発した美食を心ゆくまで楽しみ、開発された南国の快適な風景を満喫できるのです!」

俺:「ご覧になりたくはありませんか!魔王様!人間と魔族が共存する美しい未来を!戦争のない、隣人として共に暮らし、魔族と人間が互いに『おやすみなさい』と言い合える世界を!」

魔王:「……勇者よ、汝の口数が急に増えたようだがな。」

魔王:「魔界の王たる余が、他人からどうすべきかを教わる謂れはない。」

俺:(えええ?!……今の地雷踏んだ?!どうしよう、今すぐ土下座するか、全力で逃げるか?!)

俺:「魔……魔王様お許しを!余、失言いたしました!」

魔王:「……構わん。」

魔王:「だが、汝の言うことは面白い。余は気に入った。」

俺:(ふぅ……マジで肝冷えたぜ……)

魔王:(人間と魔族……共存する世界か……)


魔王:「ところで、勇者よ。汝は如何にして無傷で余の宮殿に侵入したのだ?」

魔王:「余は興味がある。警戒が手薄とはいえ、魔法“虚空幻像”を一般の人間が見破れるものではない。」

魔王:「あ……いや、勇者たる汝ならば、当然のことか。失礼、答えぬでも構わぬ。」

俺:(ああ……これは申し訳ない、魔王様……)

俺:(迷子で偶然入り込んだなんて、とても言えねぇ……)

俺:(うーん、どう返すのがベストか?)

1. 適切な理由を述べる --- 続く

2. ありのままを告げる --- BADEND03

俺:(やっぱり……適切な理由をこね上げるのが無難だな。落ち着け、顔色一つ変えず、それらしい大義名分をでっち上げるんだ……)

俺:「余……いえ、私が平和を求めて参ったため、聖母のご加護があったのでしょう。」

俺:「刃を交えずに共存の道を開けたのも、魔王様のご英断あってこそ。深く感服しております。」

俺:「魔族は年齢と外見の差が大きく、誤解を招きやすいと聞いておりますが、かくも円熟したお心遣い……さぞ長年にわたり魔王の重責を担われ、民の信望厚きお方なのでしょう。」

俺:(ははは……今の返答完璧!嫌味なくお世辞も言えた!人生最高の嘘かもしれん!いける、いけるぞ!こんな褒め言葉に免疫ある奴はいねぇ!勝ったな!)

魔王:「汝…...死にたいか?」

俺:(……は?)

俺:(え?!?!?!なんで急に怒り出したんだよ?!)

魔王:(むっ!この陰キャ勇者、やっぱり童貞だろ!?女の子に何て言えばいいのか分かってない!まるで老婆扱いじゃないか!余は二……げほっ……永遠に輝く十八歳だぞ!失礼極まりない!)←(内心で足をバタバタ)

俺:「そ……その!言……言葉足らずでご不快ならば、深くお詫び申し上げます!」

俺:(ああ……やっぱりダメか。死ぬならせめて故郷で死にたかったな……)

魔王:「……よかろう。余も心狭き者ではない。汝が単身、危険を顧みず余に謁見するその胆力、その真心を思えば、些細な失言など大目に見てやろう。」

俺:「感謝!!!寛大なお心に、心より御礼申し上げます!」

--- シナリオ続行 ---


(B-1) もう一つの選択肢 (選択肢2: ごまかす)

俺:(魔界、まさか南の都を狙ってるんじゃないだろ?!市議会に魔王軍を呼び込んだのがオレだとバレたら、即切腹ものだ!やっぱりごまかすしかねぇ!)

俺:(ああ……セラニアの亜人スラム街ってどんな感じだっけ?えーと……)

俺:「その……汚くて散らかったクソみたいな場所ですな。」

俺:「動物や人間の死体が放置され、ゴミは山積み……ハエがブンブン飛び交い、糞尿は川に垂れ流し。上流から下流まで、街中の住民は極度の飢餓と貧困に喘ぎ、毎日毎日、真っ黒になったパン屑一つ奪い合って殴り合ってる……」

俺:「まったく……最悪ですわ。」

魔王:「ふむ……」

魔王:(うぇ…陰キャ勇者、淑女の前で何言ってんだよ…ちょっと幻滅。想像しただけで気分悪くなりそう…)

魔王:(人間なんて滅ぼしちゃった方がいいかも?価値なさそうだし。あ、でも…そうしたら人間が魔界に逃げてくるか?臭そうだなぁ…)

魔王:「人間の世界がかくも落ちぶれておるとは、失望したわ。」

俺:「……お恥ずかしい限りです。」

魔王:「うむ…それほど劣悪な環境では、魔界の貴族も共存実験など望まぬだろう。やはり取りやめるわ。」

魔王:「そんなめちゃくちゃな人間の世界など、消し去ってしまおう。」

俺:「ちょ待てよォォォ!?お待ちを!」

(え?!選択ミスかよ!?なんとか取り繕わねぇと、魔王が簡単には帰してくれなくなるぞ…どうすりゃいいんだ…ここで間違えたら、また人生のBADEND確定だぜ!?)



選択肢:


誠実に謝罪し、真実を伝える。 --- A-1に接続


でたらめを続ける。


1. 誠実に謝罪し、真実を伝える。 --- A-1に接続

俺:「おおっ!魔王様、お待ちを!先ほどの無礼、お許しください!あれは真実ではなく、つい出まかせで口走った戯言でございます!どうかご寛恕を!」

俺:「魔王様の真意を理解いたしました。改めて、南の都の素晴らしさをご説明させてください!」

---- A-1に戻る ----


2. でたらめを続ける。

俺:「ああ、そ、その……人間の世界はですね……ええと、非常に……非常に良いところですよ!食べ物も飲み物も色々と……」

俺:「あとカジノでたまに小銭を稼げたりもします、普段はほぼほぼスッカラカンに負けるんですけどね!」

俺:「あああ!オレ今何ボケてんだよ!!!」

魔王:「勇者よ、余は……不誠実で口先だけの人間が大嫌いじゃ……」

魔王:「ここで……消えよ!」

俺:「ひぎゃああああ!!! ---- BADEND03**


……正しい回答A-1の後


ああ……次に何を話せばいいんだろう……

1. (ああ足がすっごく疲れたな、座れないかな……) --- C-1

2. (なぜか急にマイトカードが打ちたくなってきた) --- HAPPYEND01 --- D-1


C-1

俺:「話しすぎて足がすごく疲れましたよ。えっと……魔王様、座って何か食べながら話せませんか?ハハ、冗談ですよ。」

俺:(え?!今の心の声が口に出たぞ!?なんで言っちゃったんだ?!もしかして誰かが糸引いてるのか?誰だコノヤロー!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ……)

魔王:「……そうか、すまなかったな。余の不覚であった。」

魔王:「ならば、余が汝をもてなそう。魔王城で勇者をもてなすなど前代未聞、これぞ魔王の大度量というものじゃ。」

魔王:(あら、度胸があるというか?こんなドジな勇者が言うとは思わなかったわ、ここ魔王城よ?人間にとっては一番危険な場所でしょ?!)

魔王:(余の玉座の前でそんな余裕を見せるとは、さすが勇者ってところか?ちょうど余もお腹が空いてたし、勇者自らが言い出したことだし、ついでにおやつ休憩しちゃおっかな♪)

魔王:「リズよ!余のために魔界の上等料理を一卓用意せよ!余が自ら、単身わが宮殿に踏み込んだ勇者をもてなしてやる!」

魔王:「……」

魔王:「………….」

魔王:「…………. ………….」

……

俺:(え……もう3分経ったけど、誰も返事ないし、魔王様も無反応……どうなってんだ?!)

魔王:「……」

俺:(おいおい魔王様、今の雰囲気マジで謎の気まずさなんですけど、何か言ってくれませんか……)

俺:(……一体どうなってるんだ?偽物の魔王に遭遇したんじゃねぇか……)

魔王:「……」

俺:(あれ?魔王様、顔が赤くなってるぞ……?)

魔王:「げほっ……」

魔王:(あら!ヤバい……リズたちが買い出しでいないの忘れてた!城の中、余一人しかいないじゃん!)

魔王:(台所からお菓子持ってきて適当にもてなそうかな……)

魔王:(ダメ!絶対ダメ!今台所にあるのは余の大好物の魔界ケーキばっかり!絶対に絶対に他人には分けられない!譲らない!)

魔王:「う…うぬぬぬ!そ、その……なんという偶然じゃ!」

魔王:「勇者よ、わが僕ら外出して戻っておらぬようじゃ。本日はもてなすことは叶わん。失礼!」

俺:「いえいえ、とんでもない。無理を申して申し訳ございません。」

魔王:(え?結構気にしないんだ?でもなんかちょっと申し訳ない気分……人間どもに魔族は貧乏で飯も出せないと思われてないかしら?)

魔王:(いやいや、そんなはずない、ここは魔界だし、人間界とは違うってわかってるだろ、勇者よ分かってるよな!?)

魔王:(魔界ケーキは、絶対にケチってるわけじゃないんだからね!)

魔王:「まあ!お前さん、なかなか分かってるようじゃな。」

魔王:「よし、今日のところは、余が小さい借りを一つ作ったと思っておけ。後で何か頼みがあれば、遠慮なく言うがよい。」

俺:(ふぅ……真に受けなくてよかった……)

俺:(それにさっきより魔王の性格が変わった気がする……気のせいか?)

俺:(でも魔族って普段何食うんだ?後で人間の手足の盛り合わせとか出されたら、食うのか食わないのか……)

俺:(あ……今よく見たら、この魔王けっこう美人だな……でも初めて会った時はマジで怖かったぞ。あの若さを保つ方法って……さっきも手の血をすすってたし……)


双方(内心):(彼女/彼、気にしてないみたいでよかった……)

----


D-1

俺:「もういい、一戦マイトカードやろうぜ。」

俺:(……あ)

俺:(クソが……マジかよ)

俺:(神ってるマイトカードって……)

俺:(次は白髪の魔物ハンターでも現れるのか?)

俺:(オレは結構好きでな、自画自賛じゃないが、腕は悪くないぜ。)

俺:(だが!)

ワッツワース:(今はいつだ!)

俺:(頭がフリーズしたからこんな答えを出したんだろうな……生死の瀬戸際なのに、たわけ、どこの誰がオレを操ってこんなトンチンカンな答えをさせてるんだ?!)

魔王:「ふむ、なるほど、なかなか見識ある者と見た。汝、マイトカードを打つのか?」

俺:「自慢じゃないが、セラニアでオレより強い者はいねぇぜ。」

魔王:「よし!」

魔王は満足そうにうなずいた。


三日後……

魔王:「素晴らしい!なんと優秀な勇者よ!」

魔王:「正直に言おう、我が魔界に転向する気はないか?約束する、汝の臨機応変の胆力、その手腕、確かに大任を担えるであろう……」

魔王:「ああそうそう、決して余がマイトカード好きだからってわけじゃないぞ?」

魔王:「ん?……返事がない?どうした?」

俺:「ぐぉ……」

魔王:「空腹で気絶したか?」

魔王:「そういえば余も少し腹が減ったな、しばらく何も食べてなかった気がする。台所から魔界ケーキを持ってきて食べよう。勇者の分も……慈悲深く分けてやろう。」

魔王:(特別サービスだぞ、感謝しろよ?)

台所、がらんどう。————

魔王:「な、なんでやねーん!!!!!!!」

魔王:「まさか、あのマイトカードやってる間に泥棒が入ったのか?!畜生!」

パシッ!

手刀の一撃が魔王の頭に炸裂した。

魔王:「いててててて!!!」

リズ:「ユリア様、何度も言ってますけど、腐ったケーキは食べちゃダメです!」

どうやらメイドのリズが戻ってきたようだ。

魔王:「違うんじゃ……本当にケーキが消えたんじゃああ!」

リズ:「はいはい、わかってますわ。また『知らぬ間に』お腹の中に消えたんでしょ?食べたなら仕方ない、今から夕食の支度しますから、少々お待ちを。」

魔王:「うううう……本当に食べてないってば……あ、そうだリズ、一人分多く用意して、お客様がいるの。」

リズ:「……」

リズ:「は?お客様?腐ったケーキで頭やられたんですか?お嬢様。」

魔王:「リズ!ここは間違いを正す!第一、余はもうお嬢様ではない!」

魔王:「魔王様と呼べ!第二、美味しい魔界ケーキは絶対に頭を悪くしたりしない!腐っててもだ!」

リズ:「はいはい、かしこまりました、偉大なる魔王様。で、お客様とはどちらの魔界貴族様で?リリス王女様?それともミスト様?」

魔王:「勇者じゃよ!」

リズ:「……お嬢様、今後一切魔界ケーキはお断りします。あれは明らかに身体、特に脳みそに悪いようですから。」

魔王:「リズよ、奴は会議室におるぞ。」

リズ:(まさか……)

………………………..

…………………

………..

.

後日談:

その後、魔界四天王に六人目が加わったと言われる。その正体は最も謎に包まれ、魔王とそのメイド以外はほとんど知る者はいない。この謎の第六天王は、一手のマイトカードさばきで知られているとか……しかし何らかの理由で正体を隠すよう強く要求し、かえって人々の好奇心を掻き立てたという。


エピローグ:

俺:「だからさ、胆力だの能力だの、そんなのないだろ?オレって第六天王、何の役に立ってるんだ?……ただ魔王がマイトカード好きだからだけかよ……?」

魔王:「その通りじゃ!優秀な王の側には、機知に富んだ寵臣が必要ってわけよ!」

俺:「で、この貧乏作者、マジでマイトカードのルール考えたの?」

魔王:「ありえねーよバカ!」

俺:「そりゃそうだよなぁ……--- HAPPY END 01**


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