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7話 "はじめての友達" 其ノ壱

タイトル表記ミスりましたので上げ直しました

(2025/04/17 18:15:12)



 


「おはゆかりん♡」




「…………ぅゎ」


「え、何その反応」


 四が幻想郷に来て、早3日。昨晩1人で床に入った気がしたのだが…


 体を横向きで寝ている四の正面に、"ないすばでー(本人自称)"の不審者(もとい)不審妖怪の姿があった。


 四言わく、「これで可愛いのが腹立つ」との事だ


「おはゆかりん」

「やめてよ恥ずかしくなってきたわ…///」

 マジでなんなんやコイツ


「昨日の事もあったから疲れたわよねぇ。おかげでぐっすりだったわ」

「寝顔見ねぇでくれや。恥ずかしいったらありゃしない」

「思ってないでしょ …て言うかそれは本来女の子側のセリフよ?」


 よっこいしょ、と布団を剥がして起き上がる。大きな欠伸をしてから洗面台へ……


「だぁめ♡」

「うわ〜何をする〜」


 ……を、紫が許さなかった。再びいつもより良い匂いのする布団の中へと引きずり込まれる。


「もう少しゆっくりしてましょうよ。もう学校なんて無いんだし」

「生活のリズムってのがあるんだよ。ほら、早く起きて朝ご飯食べよーぜ」

「あぁ、朝ご飯なら大丈夫よ。


 ………らぁん!」


 すると、台所から足音が。こちらにゆっくりとやってくる。


「もう…起きているのでしたら、早く床から起き上がって下さい。紫様」


「うわお」


 とびきりの美女が割烹着を纏ってやってきた。

 紫と同じ金髪で、紫と大差無いほどのナイスバディな長身の女性。


 ……そして、金毛の狐の尻尾と耳


「お初に御目にかかります、四殿。私は八雲(やくも) (らん)…紫様直属の式神です。」

「ご、ご丁寧にどうも……」

「誠に勝手ながら、厨房をお借りしておりました。朝食でしたら、あとは味噌汁で完成しますので身支度をどうぞ」


「君…ほ、本当に紫の式神?」

「はい、そうですよ」




「………紫より、しっかりとした美女じゃねぇか」

「お褒めいただき光栄に存じます」

「四ぁ〜?このままおっぱいの中で窒息死したいのかしらぁ〜?」




 ◆◆◆



「美味し」

「ありがとうございます」


「さっすが藍ね!どう四?ますます私のお嫁さんになりたくなったでしょう?今なら藍も付いてくる!」

「いや、これならお前より藍さんと結婚した方が良さそうじゃね?」

「ぽっ…///」

「ぶ、部下に…負けた…?」


 カルチャーショックを受けたような表情で固まる紫。……をスルーして四と藍は朝食を済ませる。


 今日はお家でゆっくりゴロゴロしようかと考えていた手筈だったが、早朝から不法侵入されているとは思わなんだ


 ということで早急に帰ってもらわねばならない

 話の分かりそうな藍に頼み込む事にした。


「左様でしたか」

「あぁ、紫が駄々こねないよう何とか頼むよ」

「大丈夫ですよ。今日の紫様は数少ない御友人との小宴会が御座います」

「ねぇ藍?そこの"数少ない"って部分いる?いらないと思うんだけど?」

「という訳で撤収致しましょう、紫様。四殿は羽を休めたいそうです」


 ……と、あっさりと紫を説得(?)させ朝の8時位にはスキマを広げて帰って行った。



(藍さんのあの妖力……ありゃ、かなりの大妖怪レベルだな……。

 俺が紫のお気に入りってだけで下手(したて)に出てくれていたけど…)


 あんな美人さんが、常人がマトモに見るとチビる程の大妖怪とは普通は思わないだろう。

 全く、幻想郷というのは人知では計り知れないほどの世界だということだ。



「………やっぱ霖之助さんってすげぇなぁ」


 そんな大妖怪やらがやってくる店を営業してるなんて、普通なら心臓に鉄の毛でも生えてなければ成せない偉業である。


 だってヘマしたらその場でぶち殺される訳だろう?考えたくもない


(参考にするってばどんだけ時間掛かるんだろ……


 まぁ、人里でやる分には香霖堂より安全か)


 そう思いつつ、昨日その霖之助から貰った、商売のノウハウがまとめられた古い書物を読み漁る事にした。




「うわ、文字の嵐」



 ◆◆◆



「ごめんくださぁ〜い」


「…………お」


 玄関の方から声が聞こえた。

 昨日聞いた声だ。


「あぁ、華扇さん。いらっしゃい」

「昨日ぶりですね、四さん」


 何やらお土産を持ってきてくれたようだ。

 これは…………




 ………………WOW


 


「…………いっぱい買っちったね」

「な、あ、ちちちっ、違いますから!これは貴方と一緒に食べ……はっ!」


 四への贈り物として団子をたらふく買ってきてくれた華扇。

 ……しかし本音は自分も一緒になって食べたいと思っていたようで。


「……………っ〜!///」


 図星を遠回しに突っつかれ、真っ赤っかな表情でボフボフと自分のスカートを叩く華扇。

 相変わらず感情表現が可愛いなこの人…


「この量は1人じゃ食えねぇなぁ〜。きっと胸焼けしちまう


 だから一緒に食ってくれる人を募集するさね」


「………………」









 華扇を家に上げて、そのまま居間で2人で団子を食べる。



「もぐもぐ」


 ………ヤケになっているのか、随分と食すペースが早い

 まだまだ団子はあるが、このペースだと無くなるのに5分は掛からないだろう


「ごくん。………なんですか、どうせ私は甘党大食い仙人ですよーだ」


 あ、吹っ切れてる


「いっぱい食べるのはいい事だろ?別に俺はそう言う事気にする人じゃないから」

「……………本当ですか? 霊夢も魔理沙も出汁にして小馬鹿にしてくるんですよ。甘党大食い仙人だーって」

「しないしない。むしろありのままで良いって

 その方が話しやすいし落ち着くだろ?」


「………太ったら嫌ですもん」

「痩せすぎも体に悪いぜ」

「ふ、太ももがもっと太くなったらイヤです」

「ソイツは魅力的だなぁ」

「……………」

 じ、といつもより細い目で四を見つめる華扇。


 華扇自身も理解していないが、その頬は赤く染まっていた。




「女の子は多少ムチってしてた方が良いって誰かが言ってたしなぁ

 実際俺もそう思ってる節はあるぜ」

「……ふ、ふ〜ん。理由が不埒ですね。えぇ不埒です、四さん。仙人とは言え私自身その様な発言には引っかかるのですよ。そんな事をもし貴方の事を尊愛するような方に言いでもすれば堕落してしまうでしょう。不埒です不埒。いやもう不埒を超えて『えっち』です。」


 ……これが、霊夢の言っていた華扇の『説教モード』というヤツだろうか

 やっちまった、と少しばかり後悔してしまう四は、相変わらず顔を赤らめている華扇の"とてつもなく長く内容がたどたどしい"説教を聞いてやる事にした。


「…………ですから、今後は"私以外"にはそういう発言は控え……

 ……き、聞いているんですか。四さん?」


「あぁ。華扇さんのキレーな目を見て聞いてるよ」

「っっっっ!!?/// ………え、えっち!!/// えっちですってばッ!!///」





「………で、華扇さんはどうして俺の家に?わざわざここまで団子買って一緒に食べに来た訳では無さそうだけども」

「実は四さん宛に、『ぜひ顔を合わせたい』と相談される事が多々ありまして」

「……ほう?」

「八雲紫が言いふらしているお陰でしょうか。兎も角貴方は幻想郷では結構注目されているようですよ。それを予め伝えに参りました。




 け、決してお団子を沢山食べるためだけに来た訳じゃありませんからねっ」



 ……彼女は苦労しているようだ。


 人里と妖怪の中間……華扇や慧音、霖之助は恐らくその立場にいるからこそ"そういった"相談事もされるのかもしれない



 それこそ霊夢や魔理沙なんかも中立の立場なんじゃなかろうか?


 人里では妖怪に襲われる事は無いのは前述した彼女たちによって重点的に護られている故だろう。




 ……幻想郷に来て3日。そんな四にも会いたいという物好きが里の外から。

 十中八九、人外の存在から声がかかっただろうに


「まぁ会いたいって言ってんなら会ってみてもいいさなぁ

 見聞を広めるのもこの先重要だし?」

「賢明な判断ですね。私も友好的な交流であれば機会を作ってあげても良いと思いますよ」


 四の午後の予定が決まった。

 それじゃあこの後は着替えて人里に行こう。


 まだ幻想郷を隅々まで知らない四にとって、人里の外に住んでいる幻想郷の住人との交流は貴重な機会だ。



「それじゃあ昼飯食べようか。華扇さん座ってて」

「宜しいのですか?……そ、それじゃあ甘えましょうか」

「じゃーん。唐揚げにしますか」

「……!!? ほ、本当に凄い能力ですね……」




 ◆◆◆




 四にとって、幻想郷の人里の地理はとてもとても分かりやすかった。



 あっちに食事処があって、あっちには駄菓子屋があって、そっちには呉服屋があって、将又向こうには道具屋があって……



 現代における"その店を象徴とする『看板』"というものは、ハッキリ言って分かりづらいものもある。


 名の知れたチェーン店ならまだしも、「あれ?この店なんの店だ……?」と入るまで分からない所もある。


 その点ここは現代には追い付いていない…故になんの店なのか()()()()()()のだ。



「四さん、こんにちは。」

「やぁ四さん。今日も散歩かい?」

「四さん、この間はありがとうね」



 色んな人が、彼のことを良く思っているからこそ、『顔見知り』ってのが多くなる。

 だからこそ、覚えやすい。分かりやすいのだ。



 ………だからこそ、なのだが





 今まで"無かった"ものが"ある"と、一瞬で違和感を覚えるのだ。





「市場、か?」

 

 

 人里の大通り。そこにズラーっと市場が開かれていた。川魚や立派な野菜。鮮やかな景色が広がっており、壮観だった。


 天気も良いし、人集りも出来ている。こんなイベント事まで開かれるのか、幻想郷は。






「四さん!」


「お、霊夢。こんにちは」


 霊夢から声が掛かった。小走りで此方にやってくると、嬉しそうな表情を隠し切れていない様子でモジモジし始める。




(あずま)……さん?」


 


 そして見知らぬ少女が1人。……さっきまで霊夢と話していた人だった。



「………この人は?」


 正直言って、()()()()()()()()()()()()だった。


 もう、何だろう、キャラクターを全面に押し出しているというかなんというか


 紺色の髪をショートにし、とても可愛らしい美少女……だが、何より服装だ。

 虹色の目立つカチューシャに、裏側に空模様を施した白いマント。

 極めつけは、パッチワーク風の、あらゆる色をした布をジッパーで組み合わせた奇抜過ぎるファッション。


 ……霊夢も華扇もハッキリ言えば外の世界だとかなり目立つファッションだが、それを更に超えてくるとは…


「…あぁ、この人はね……」



「は、初めましてっ!」


 声高らかに、四に向かって挨拶をする。

 すると右の腕を上げ天に指を差し、反対の左腕を地に向け指を差す。


 ……これは彼女の『決めポーズ』とやらなのだろうか。

 



 


「私は天弓(てんきゅう) 千亦(ちまた)

 市場のプレゼンター…もとい、市場を司る神です!」









「……霊夢、この人は?」

「…えと、一応『市場の神』なの。本当に」

「し、信じてくれてないぃぃぃ!!」




 少女移動中………







「ぐすっ…、本当に私って神様なのかな……」


「「(この上なく落ち込んでる……)」」


 賑わう市場に反して、気分が沈む『市場の神』。天弓 千亦、という少女と霊夢を連れて、市場の外れにある茶屋に移動した。


 ずーん、という効果音が聞こえそうな程消沈しており、両足を抱えて体育座りで椅子に座っていた。



「("気質"って奴は視覚の情報から見るに人間じゃねぇ。それに妖怪ほど濁ってもなく清らかだ。


 ……なるほど、これほどまでに綺麗な"気"の流れは見た事がねぇ。)」



「自己紹介が遅れました、千亦様。俺は四。………先程の無礼は申し訳ない。最近幻想郷に越してきたので、貴方様が神だと分かりませんでした。」


 改めて、彼女に挨拶をする。ハッキリ分かるくらいの『ご機嫌取り』という奴だ。



「あ、四さん。それ多分やり過ぎ…」






「うわぁぁぁぁん! こんなに私の事敬ってくれた人、幻想郷(こっち)じゃ初めてぇぇぇぇ!!」



 全部の発言に濁点が付きそうな勢いで、号泣。神様がみっともなく号泣するものなのか…?


 あまりの嬉しさになのか、千亦は四の膝目掛けて飛び掛かり、顔を埋める。涙を拭いていらっしゃるようだ。





「あ、こら!四さんから離れなさいってば!め、迷惑になるでしょうが!」




 結構容赦なく、お祓い棒で千亦をベシベシとぶっ叩く霊夢。



 ……ていうか、神様をお祓い棒で殴っても良いもんなのか?





四の容姿に至っては、どこまでも甘やかしてくる系の悪い美男子というコンセプトで進めております


幻想郷の少女たちがハマれば大変な事になるくらいのヤベー男です。ダメ人間にされる……!

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