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5話 人里散歩 其の参

 




「………と、里の案内はこれくらいね。どうですか、四さん」


 彼女……仙人を勤めている茨木華扇に人里の案内を任せてから、4時間ほどが経過したであろう

 

 時刻は午後1時を回ったところだ。


「あぁ、広くて覚えれなさそうだ」

「そ、そんなにキッパリ言い切るんですか?」


 何処にどれがあるか、を超ザックリとだが覚えることが出来た。

 華扇の教え方が上手で、一つ一つに小ネタを挟むくらい聞いていて"飽きない"説明だったのは確かだ。



 ……それが何十も続かなければ、の話であるが



「まぁでも、華扇さんが贔屓してるお菓子屋さんも甘味処も知れたし、美味い収穫だったぜ」


「そこはなんでしっかり覚えてるんですかーっ!///」



 ……後は、真面目キャラだと思った華扇は意外とノリの良い感情豊かな人だと言うことも分かった。


「もう! 私は大食いキャラじゃありませんったら!」

「ははは、悪かった。でも、これで少しは里を1人で回れそうになったよ。」

「……ごほんっ! ま、まぁ貴方がそう仰るようになったのでしたら良しという事にしましょう」


 ペースが崩されながらも、最終的には頼られたらちゃんと教える仙人たるモチベーションはあるみたいだ。


 こう回って見ると、里だけでもまだまだ寄ってみたいスポットが多いものだ。幻想郷生活、まだまだ先が長いように感じる。

 ……のらりくらりと、地に足つけて歩きながら過ごしていこう。


「ありがとう、華扇さん。良かったら何か奢るよ、今日のお礼だ。」

「奢られるのは仙人としてあるべき姿ではありませんので遠慮します。


 ですので、一緒に何か腹拵えに行きましょうか」


「…………」


 うーむ、良い子過ぎるな。流石"仙人"を名乗る程の人材である。



「んじゃあ、蕎麦食おうぜ、蕎麦」

「良いですね。ちょうどお腹が空いてきました」

「…………」

「……何ですか。『さっき団子をいっぱい食べてたのに?』と顔が仰っていますヨ」



「……べっぴんさんだなーって」

「……っ!/// あ、ご、誤魔化さない!そろそろ怒りますよ!もう!」





 ◆◆◆

 



「こんなもんかしらね」

「すまない、霊夢。これで、何かと被害が収まれば良いが……」

「ま、何かあればまた相談しに来なさいな。…あ、お茶菓子持ってね」

「そうさせてもらうよ」



「……あ、霊夢と慧音さんだ」

「里長の家に集まっている……なるほど」


 里長とは、この人里の頭たる人物で、長老と呼ばれているお方だそうだ。里の真ん中に、大層立派な広い屋敷を構えているそうな。


 ……ちなみに里には里長の屋敷よりもっとデカイ屋敷もあるのだとか。確か、稗田さんってとこだった筈。



「流行病がどうたらっつってたな」

「えぇ。つい先週から流行りだしたんです。…死者は居ないし、竹林の医者から出される薬でどうにかなっているのですが、何分感染力が凄まじいとの事で……」

「……なるほど(あの時慧音さんがマスクに大きく反応してた理由が分かったぜ)」


 死人が居ないだけマシだ。……外の世界じゃ()なのが一時期蔓延していた事もある。四は『能力』のおかげで感染することは無かったが


 だがマスクは外せなかった時期が、かなーり長く続いたのを思い出す。


「あら、四さん。……げ、華扇」

「げ、とは酷い言われようね霊夢。……まぁ、今日はちゃんと巫女仕事していたようだから許してあげる」


「さっきぶり。慧音さん」

「そうだな。……華扇殿と人里を回っていたようだな」

「人里の地理をしっかり教えてくれて助かったよ。んで、今から腹拵えで食事処へな」

「そう、だったのか。……良ければ、私も一緒してもよろしいか?」


 勿論了承するとも。四も華扇も快く受け入れた。


「華扇、奢ってよ」

「……貴女ねぇ」

「ん?霊夢、持ち合いねぇのか?」

「…………」


 沈黙は正解、だろうか

 四は納得し、『能力』を使ってやる。……持ち合いの貸しだ。幻想郷に来た時少しだけ世話になったお礼も兼ねて。


「ほれ、こっちの貨幣分からんけどこれで足りるだろ」


 指で錬成したコインを弾いて霊夢に渡してやる。あわわと驚きながらしっかりと両手でキャッチしてくれた。


「あ、ありがとう、四さん。







 ……………え?」





 霊夢が、固まる。



「…………あえ?」

「………………」


 時間差で、渡したモノを見た慧音も華扇も固まった。

 ……もしかして、やり過ぎたかな





()』は



 



「き、きききききき、きききき」

「あわ、あわわわわわわわわわわわわ」


 霊夢と慧音が壊れた


「あ、四さん? こ、これ…自前のものなんですか!?」


 華扇も大きく反応していた。……なるほど、完全に失敗してしまったようだ。

 外の世界の貨幣を渡しても通用しないと思ったから、敢えて昔の通貨を渡してやったのが返って裏目に出てしまった。



「こ、こここここれがあれば3ヶ月は裕福して暮らせそう………え…えへへぇ〜幸せ〜……♡」

「れ、霊夢!戻ってきなさい!貴方は博麗神社の巫女でしょ!」


「え、えーと……」


「四くん。20円金貨はやり過ぎだ。私ですら初めて見た代物だぞ」


「そ、そもそも本物なんですか? ……後で、『香霖堂』に寄って見てもらいたいわ…」



「ま、先ずは腹拵えだろ?ほら、あそこの食事処に行こうぜ」





 ◆◆◆



「…………」

「えへへぇ♡♡♡」



「夢見てるのかしら…霊夢があんなに懐いて…」

「流石に20円金貨渡されたらなぁ……貧乏鬼巫女がああなるとは」



 食事処にそのまま4人で入り、その際テーブル席に座った訳だが……


 あろうことか霊夢は四の隣にびったりと引っ付き、猫撫で声で彼の二の腕に抱き着いて座っていた。


「四さん。霊夢を甘やかし過ぎないようにお願いしますね。…はぁ、後で『説教』しないと」

「紫も呼ぶさ。……な、霊夢」


「なぁに♡」


「「(重症だ……)」」


「霊夢は何食べるんだ?何でもいいぞ」

「四さんと一緒のが良い♡♡♡」

「じゃあ天そば食べようか」

「うん!私も食べたかったの♡ 」

 


 そういえば霊夢に四を紹介する時に、紫が「お金持ち」と付け加えていた気がする。


 そりゃそうだ。なぜなら彼は「1度触れたものを完璧に再現して創り出す能力」を持っているからだ。

 ……それ以外にもあるけども


 そう、彼はこのお宝、20円金貨(現代での金額へ換算すると約18〜20万円くらい)をぽんぽんと量産可能なのだから


 霊夢の目から映る四の姿は、「純金をありったけ創り出せる神のようなお方」となっているのであろう


 金とは恐ろしいものなのだ


「魔理沙が見たら何て顔するのかしら…」

「………………………むぅ」

「……………慧音さん?」


 気まずい空間へと早変わりしてしまった。女性3人に男1人というハーレム空間でこのような空気になるなんて、ギャルゲーのイベントくらいでしか起こらないだろう


 ……しかし、なぜ四は落ち着いていられるのだろうか

 華扇が冷静に彼の様子を見る。


 貧乏で、容赦の無い鬼巫女と言う2つ名を持つとはいえ、博麗霊夢はかなりの美少女だ。

 そんな彼女がデレデレで擦り寄ってくるのに対し、四は戯れる猫をあしらうかの如くいなしている。



 デレデレカップル、というより、兄と妹といった様子に見えるのだ。


「ほら霊夢、蕎麦きたから食べな。冷めるぜ」

「は〜い♡」


「………むぅ…!」



 ……それで、さっきからなぜ慧音は2人の様子を見て唸っているのだろうか?






(………まさか、慧音さんも?)



 仙人、茨木華扇の苦悩は続く。




 ◆◆◆



「金ってのは、なぜ高価なものか知ってるか?」


 香霖堂へ先導する華扇の後ろを歩いていた四が、全員に聞こえるようにそう発した。


 先ず一番に反応したのが、彼の横にピッタリとくっついて歩く霊夢だった。


「綺麗だから!」


 先程彼にもらった20円金貨をルンルンと嬉しそうに抱えながら元気よくそう答える。

 ……こんなハイテンションな霊夢は見た事が無い…華扇も慧音もそう思っているのである。


「そうさ、金は天然でこんな綺麗な金色をしてやがる。加工して、それから装飾品なんかに使われているんだぜ」

「古代の歴史だと、今よりも更に金が取れていたとか。」

「そうそう、それが金が高い2つ目の理由。……この星に埋まっているであろう金鉱石は限られてるもんだ。


 かなーり希少でな、どこに埋まってんのかも分からねぇときた。そら高価なもんだよ」


  慧音が補足した古代、というのは恐らく『古代エジプト文明』のことであろう。正に金のオンパレードと言っても過言では無い程、あの文明は兎に角"金"だ。


「だから普通に見える『金色』ってのは、意外とちゃちなモンだったりするんだよ。着色してたりして誤魔化してるんだ」


「でも不思議ねぇ〜。どうして金をわざわざ貨幣にするなんて」


「おわぁ!?」


 フワッと香る香水の匂い。

 幻想郷の賢者、八雲紫がスキマを広げて登場した。

 彼女は現れて早々、四が霊夢に渡した金貨を眺めていた。恐らく最初から話を聞いていたのだろう。


「一説だと、『後世に遺す』事を重んじていたっぽいんだけど、実際のところは分かんねぇもんだよ」


「現代と幻想郷、金の価値はいずれも同じくらいだから分からない事も多々あるのよね〜


 それはそれとして、霊夢?四先輩は私のものなんだけど♡」


「四さんは渡さないわ……彼は博麗神社の神主兼博麗の姓を授かる貴きお方なんだから…!」


「いや、ただ金貨渡しただけでしょ」


「……四くんが嫌がると思うがな。適切な距離を守る女性程、世の殿方が求める理想とは思わないか?」




(………あぁ、なんか頭が痛くなってきたわ…)


「………お、なんだなんだお前ら揃って!」


  先導する華扇よりも、さらに前から……向かっていた目的地辺りから、此方を指差して少女の声が聞こえた。


「団体様かよ」

「あら、魔理沙も来てたの?」


 霧雨魔理沙。早朝に四の家を訪れたあと、彼から渡された弁当を持って『香霖堂』に向かうと言っていた。

 主に紫と霊夢がガヤガヤしていたせいか、店の中まで声が聞こえてしまったのだろう


「よう魔理沙。朝ぶりだな」

「おっす四。…あ、弁当すげぇ美味しかったぜ!また作ってくれよ!」




「「「……弁当?」」」

「(………しまった)」


 霊夢、紫、慧音が魔理沙の発言に反応する。早朝に魔理沙に手渡した弁当を、おそらくかなり斜めの方向に勘違いしているようだ。







「………何かと思えば、これはまた御一行で来てくれるなんてね」






 低い、男の人の声。四以外の、成人済みの男の人。




『香霖堂』の中から現れた、




「………おや、見かけないお客さんだ



 ようこそ、『香霖堂』へ」








「あ、この人が『香霖堂』の店主です。」

「自己紹介は自分でやらせてほしいな。」

 



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