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1話 紅白の巫女


幻想郷の住人は、なんかこう、物事から達観しているような話し方をすると思いますよね



 


 早速だが、俺は紫の提案を呑み、ここで過ごして行く為の諸々をしに東へと向かい始めた。


 ……徒歩で。とほほ



 移動の際は結構暇なので、雑談をしながら進んでいく。


「結構久しぶりにここの"境界"を弄ったから、少しだけ不安だったのよね〜」

「へぇ〜。じゃあ紫って本当はここの住人だったんだ」

 


「……というか、この世界の成立に携わった……って言えばどう思ってくれる?」



「……すげぇな、そりゃ」

「あぁん信じてくれてないわねぇ〜?」


 信じるも何も、そんなこと出来るのは神様とかそのレベルじゃないか?


 神様はあまり見たことが無いから実際どうなのか分からないけども

 この怪しいオーラを纏う木々も、この空間も……全て紫が創り出したとなると、完成させる為の余程の執着を感じるように思える。


「じゃあ紫って俺の後輩じゃないんだな」

「17歳ですけど」

「ほな後輩か」


 おいおいとツッコミが入りそうだが別にこの空間には2人だけなので気にしない事にした



 ……ちなみに冒頭で"諸々"と略したが、実は結構重要な"手続き"なるものをしに彼女の言う『神社』へと向かうんだとか


 なんでも俺に合わせたい人もいると言っていた。神社で合わせたい人……って事は神主さんとかなのかな?


 いずれにせよ紫に全てを委ねる他に思い付く選択肢は無い。俺はこの世界に関して文字通り右も左も分からない状況なので、素直にうきうき気分の彼女について行くしかないのだ。


「随分とご機嫌だな」

「うふふ、やっと貴方を私の世界に招待できたんだもの。……でもぉ、ちょこっとだけ憧れてた華の学生生活も、想像してたよりも面白くなかったわ…」

「実際あんまり面白くないもんだよ。フィクションフィクション」

「悪いことばかりじゃないわ。こうして気になる人には会えたんだもの。それだけで充分かしらねぇ……


 どう?これからの生活、楽しみでしょ?」


 すすすっと体を接近させて、170cmもありそうな長身のままくねくねと戯れてくる。

 良い匂いするな……


「俺が受け入れられるなら、それはそれは嬉しいもんだな」

「でしょう?……うふふ、大丈夫」







「幻想郷は全てを受け入れるのよ♪」


 




 ……沈黙


「決め台詞、なんか似合わないなぁ」

「こう見えてボスキャラよ?もう……何でかしらね?」


 ボスキャラ?というのはあまり良く分からないが、妖怪という立場での決め台詞はどうなんだろう

 確実に人間より強い存在だから、威厳ってのは多少はあるかも知れないが


 まぁいいか






「……ん?」


 少しだけ立ち止まる。

 先程まで、木々や変なキノコくらいしか生えていない殺風景な不気味な森に、明らかに人工の建造物があった。


「『霧雨魔法店』?」

「あら」


 洋風な古屋だ。……デカデカと『霧雨魔法店』と看板が付いている。その上に荒い文字で「なんかします」と書かれていた。


「……『魔法』?」


 その単語に引っかかる。


 …"魔法"。俺の居た世界では空想上の単語だ。

 本来人間が使うことの出来ない非科学的な法術の事を指す。超能力ってのにも該当するんだったっけな


 魔の法術。人外の秘術……誰しもが一度は夢見る力……



(あずま)は魔法とかに興味があるの?」

「実はちょっとだけ。魔法に似たようなのは出来るけど、何かと中途半端だし」

「もし本格的に学びたいなら宛があるわ。ここに住んでる娘の"知り合い"に頼ってみても良いんじゃない?」

「ん?なんでここに住んでる娘本人には提案しないんだ?」

「悪い例を只管(ひたすら)教えられるかもしれないからよ」

「……ふーん」






 先の魔法店を過ぎて歩き続けてきた。すると紫が


「歩くの大変じゃない?」


 と、急にそんな事を聞いてきた


「まあまあかな。"散歩"だと思えば」

「デ・ー・ト♡」

「さ・ん・ぽ」

「…………まぁ、歩くのが大変ってのが分かれば宜しいわ」


 大変とは言ってねぇけどな


 ほぼ無理やり押し付けられた形で徒歩での移動を止めた紫が、俺の手を引っ張った。


「さぁ、風になるわよ!」


 俺の手を掴んだまま、ふよふよと高度を上げ始める。身体が宙に浮く感覚。


「そっか、お前飛べるんだもんな」


 という事で、空中へと浮いた途端普段の全速力と同じくらいの速度で空を駆ける。

 凄い景色だ。空を飛べるとこんな風に見えるもんなんだなぁ


「おー、こりゃ凄い!」

「珍しく食い付いたわね!……ふふ、でしょう? きっと貴方もすぐに出来るわよ」

「それは素敵な話だ。ちゃんと教えてくれよ?」


 俄然ハイテンションになってしまった紫は、俺の手を掴んだまま嬉しさの余りクルクルと回り出した。


「酔いそう……」

「あ、ごめんなさい」




 徒歩での移動よりもだいぶ楽で、尚且つ障害物や段差も無いため速い。

 こうして俺たちは目的の場所である『博麗神社』に到着することが出来たのだった。





 ◆◆◆




 境内にふわりと着地する。



「到着〜♪」


「……こりゃあまた」


 紫から離れて、神社内を見て回る。

 ……かなーり歴史のありそうな、年季入ってそうな神社だこと。


 手水舎に水が入ってない。というか肝心の柄杓が無いな……でも掃除はしっかりされてある。境内も綺麗だ。


 こっちは……立派な大木だなぁ。多分桜の木だろうか。……ボロい注連縄がしっかりされている。一応要チェックかな


 そんでもってこっちは、お。ご丁寧に摂社が置いてある。……なんか、本殿より立派な気がするんだけど


 こっちは倉庫っぽい。……特に気になるモノは無さそうかな。わざわざ漁る趣味は無いし


「裏の建物はなんなの?」

「温泉よ。」

「温泉!? ず、随分変わった神社だな……え?こんな山のてっぺんに?」

「事情が色々とあったの。後でゆっくり聞かせてあげるわね♪」


 ……そんで、本殿と。


 背後に聳え立っている赤い鳥居と交互に見渡す。

 構えてる建物は相当立派だ。けど、違和感が凄い。

 

 素直に紫に感じ取った事を教えることにした。

 



「普通の神社じゃ無いな、こりゃ」



「……あら、どうしてそう思うのかしら」


 俺の発言に紫は目を細め、興味深いと言った表情で聞いてきた。


「この神社自体には何か畏れ高い"存在"は無いように見えるんだよな。


 ……んーと、凄い失礼な事言うけど、()()()()()()()()()()|?」

 

「……♪」


 なぜか満足したようなニッコリ笑顔で俺の意見を聞き入ったようだ。

 多分、「よくわかったわね」と言っているんだろう。遠回しな図星って訳だ。



「それよりも、だ。……この中にいる"ヤツ"のが凄そうだ。遠くからでも異質な『気』が感じ取れるね


 合わせたい人って、もしかしてその人だったりする?」



「ひゃっくて〜ん♡」


 そう言って紫はひょこんと自身の能力で作りだした隙間に入り何処かへと行ってしまった。



 ……本殿の中から紫の声が聞こえる。どうやらその『凄まじい気』の正体と話をしているようだ。


 声質的に、女の子だ。

 片方はテンションが高い。こっちが紫な

 もう片方は……あまり乗り気じゃなさそうだ


「………んもぉ、苦労したんだけど折角連れてきたんだから会ってみてよ♪」

「ハイハイ分かったわよ。こっちだって折角掃除終わったところなんだから……それで?どんな子?」

「私が気に入った子。……そう、幻想郷(うち)にピッタリな人よ


『霊夢』も気に入るんじゃないかしら?」



 霊夢……ね。

 その『霊夢』という子をグイグイと押して紫は話を進めていた。一刻も早く俺を紹介したいといった様子で。


「紫が気に入るってのは気になるけど、私からしてあげられることは多分あんまり無いわよ?」

「お金もいっぱい持ってるわよ」

「ふ、ふ〜ん?」



 え、今何て言った?

 下手な事はあまり教えてほしく無いところだが……無理か。あのテンションじゃ流石に。




「お待たせ、四。彼女が『博麗 霊夢』よ♪」


「ちょ、押さない押さない……それで? アンタが紫の言った……子………




 え、男の人……?」





「……巫女さんだ」






 巫女、邂逅






 ◆◆◆





「そ、粗茶ですがどうぞ……」

「あ、こりゃどうも」



 あんまり慣れて無さそうなよそよそしい敬語でお茶を入れてくれた。

 そしてもどかしい…というより、緊張した面持ちで俺の対面に座った。


「あら、どうしたの?いつもの傍若無人な鬼巫女は何処に行ったのかしら」

「ちょ、ちょっと黙って……あんまり慣れてないのよ、霖之助さん以外の男の人は……」

「……あらあら♪」


『博麗 霊夢』。ここ博麗神社で巫女を勤めている若い女の子。……15歳とかそこら辺かな。"少女"って言っても無理なさそうな可愛い子だ。


 結構珍しい紅白ベースの……肩部が露出した独特な巫女服に後頭部な大きな赤いリボン。特徴という特徴が分かりやすい子だこと。


「ほぉら、自己紹介」

「は、博麗霊夢よ。ここで巫女業を行っています。……その、貴方の事は前々から聞いていたわ。


『外の世界に、霊夢()みたいな子がいたの!』って教えられてたの」


「成程、そうだったんだ。……俺が、君みたいな?」


 少しだけ引っかかるな。無論紫に問い質してみる。



「まぁ……波長的な?」


「「そこ適当でどうする」」


 俺と霊夢さんのツッコミが被った。

 ちゃんとした深い意味は無いんかい


「『幻想郷』向きの性格だったし、妖怪の私を見てもフツーに接してくれたんだもん。


 ……だから神隠しにしちゃった♡」

「しちゃった♡ じゃないでしょうが…」


「もしかして、紫って普段からこんな感じ?」

「なんだか迷惑かけちゃったわね、あ…ずまさん?」

(あずま)で結構だよ。霊夢さん」

「……じゃあ、私も霊夢で結構よ」


 軽い交流が行えたので、早速本題に入ってもらう。俺は紫に視線で促した。


「今日から彼は幻想郷の住人になるわけだけど……霊夢から見て彼はどう見える?」


 適正チェック、ってわけか。

 霊夢はんー、と低く唸ってから、細い目で俺を凝視し始める。

 目が合うと、ドキっとした顔で目を背けられた。


「ま、まあいいんじゃない? 邪な事考えて無ければ歓迎するわ。……妖避けの祈祷でもすれば良い?」

「彼なら()()()()()()()()、一応お願いしてもらおうかしら


 傷物になったら嫌だもの」

「言っとくけど意志の無い妖怪(ヤツら)限定だからね?

 ……四さん。じゃあ今から準備するから少し待っててちょうだい」


「呼び捨てでいいのに」

「歳上の男の人は珍しいんじゃない?まだ慣れてないから大目に見てあげて♪」

「ま、そうならそうで仕方ないか」


 座りながら、出されたお茶を飲む。……美味しい。お茶菓子が欲しいところだが




 致し方ないか




「あ、ずるい」

「紫も食べる?」

「えぇ、いただくわ。


 うふふ……ホント、便()()()()()ねぇ」










「霊夢〜。居るか〜?」









次回、気になる四の能力露出


主人公だし、ここまでやってもいいやろ、的な能力です。

ちなみに彼は立場的には人間よりの存在かな?なんて


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