11話 酒は飲んでも呑まれるな / Scarlet Devil 其ノ壱
「春の大宴会?」
「そうそう。今年は予定通り開催されるらしいの! だから四も来てね?」
俺が不法侵入系爆乳隙間妖怪にそう告げられたのは、食器を拭いていた最中だった。
いつもと変わらず不思議な隙間を広げて身を乗り出した紫が、古風な新聞の見出しを見せるように叩いた。
へぇ、幻想郷にも新聞記者が居るもんなんだな
しかし春の大宴会か。……帰る際に霊夢から聞いたなソレ
「しっかし、大宴会ねぇ。桜、散ったんじゃねぇの?」
「幻想郷の子たちは宴会…飲みの席が大好きなのよ♡花より団子ってヤツ。 だから四も来てね?」
「確か厄介な妖怪がわらわらやってくるんだろ?いやー、寿命が縮みそうだ」
「大丈夫大丈夫。あの連中は酔えばどうとでもなるから♪ だから四も来てね?」
「必死過ぎだろ」
大妖怪特有の心臓を握るような圧をかけてきやがる幻想郷の賢者様。……これで行かないと言えるほど俺は勇者じゃねぇからな
「分かった分かった。行く予定ちゃんと立てとくから、落ち着いてベッドで寝ててくれな」
「え……♡もう、お布団にいく……?♡」
「独りでいってやがれ」
スキマ妖怪という生き物は朝っぱらから発情している性質があるのだろうか。てめえ様の部下の金毛九尾系爆乳式神さんを見習ってほしいものだ。
さて、本題の『春の大宴会』についてだが。差し出された新聞を広げて隅々まで読んでみる。
「……あ、右手から左に読むやつか」
「慣れるまで大変よね」
実は俺、新聞や機械の説明書は1文逃さず見るタイプなもんで。見落としがあったら大変な目に遭うかもしれねぇしな。
っとなになに……開催日時は5日後じゃねぇか。全然ブランクが空いている。
「その間に買い溜めでもしてんのか?」
「それは問題ないわ。各々宴会料理を持ってくるはずだから」
「へぇ」
──俺は改めて、大宴会もとい宴会という行事のおさらいを紫に話してみる。
「幻想郷の宴会って、あれだろ?色んな神様やおっかねぇ妖怪がたらふく集まってくるんだろ?」
「大したことないわよ。だってただの酒盛りだもの。基本的には暇を持て余した飲ん兵衛しか来ないわ」
「日本産の妖怪や神様は基本酒呑みだろーが」
「……………確かに」
確か現代日本に住まわれている八百万の神や仏なども、1年に1度集まり飲みの席で騒いでいるそうな
……このままいかないでいると、紫が拗ねるだろうなぁ。腹くくるしかねぇか
「……当日は宜しくな」
「暇にはさせないわよ♡」
そう言ってもらえて何よりだ。……投げキッスをした後紫は隙間へと消えていった。
「…………お早う、御座います。四様」
「おはよう、藍さん。水飲むかい?」
「頂きます。………あの、昨晩は…その…///」
布団に寝かしつけていた藍さんが遅れて起床してきた。俺と紫の会話を陰で聞いていたっぽいね
昨日の晩御飯に約束通りありったけのいなり寿司を作ってあげると、ありったけ食っていってくれた。酒も注いでやるといい飲みっぷりを披露して、そんでもって最終的には同じ布団に入って………お陰で寝不足を貰っちまった。
酔った勢いだったってのもあったけど、それそれは凄まじかったな。
紫もとい、妖怪ってすげぇなぁって思った(小並感)
「お酒って怖いね〜」
「私と、した事が。はしたない真似を……」
「もう気にしないでくれさ。
………ほら朝ごはん、食ってく?昨日の残りだけど」
「………はい…///」
◆◆◆
頬を赤らめた藍さんをで見送った俺は、腕をのばし絞るように息を吐く。
「はぁ〜…………散歩しにいくかぁ!」
まだまだ体が若くて助かる。今日も運動がてら幻想郷を散歩しに行こう。まだまだ行ったことのない所だらけだ。流石に森や山は行きたくないが
うーん、よし。今日は博麗神社の反対側、西側の方に言ってみよう。
問題の問題である妖怪の山があるが、近寄らなければ大丈夫。最悪紫を呼べば無問題だ。
髪を整えて外行きの格好に着替えて家を出る。一応鍵をかけて。
慧音さんが顔を顰めて言うように……人里には流行病が流行してやがる。その為あまり外に出ている人達は少ない。
店をしている人は俺があげたマスクをしてせっせと働いているようだが……客と呼べるような里人はあまりいないな。
前回の博麗神社へ行く際は結構里の人に声をかけられたが、今回はすんなり行けた。道中に慧音さんや華扇さんと顔を合わせる事が無かったな
それほど、里に蔓延している流行病が深刻なのだろう。
うーむ、どうしたもんか。死人が出てねぇならまだマシな方なんだがなぁ。
北西寄りの道を征く。獣道ってほど獣道では無いが、整備されていない背の高い雑草だらけの道を歩いて行く。
相も変わらず、周りからは気配が多々あるが…こちらには寄ってこない。便利なもんだな、結界ってやつは。
…………視界が霞んできたな。霧か?
まぁ主に霞んでいるのは今俺のいる場所ではなく、俺の見ている視界の先。"視覚"の能力で見透すと、大きな広い湖が拡がっていた。迫力のある大きさだ。
その上に、昼間なのに濃いめの霧がかかっている。はぁ、なんとも壮大な景色だ。
───魔力で構成された水を何らかの術式で雲散させ霧にしているみたいだな。……結界の役割でもさせてんのかね?
そんでもって、向こうに隠れるように見える異様な建物。
ここからでも分かる、血のように真っ赤な大きな洋館だ。春の陽射しを遮る霧によって、不気味な存在感を放っている。
廃墟?には見えねぇな。ちょっと近付いて見るとするか。
(近付いたらイベント発生!…ってな事にならなきゃいいんだが)
じゃあ鼻っから近付くなよってツッコミは野暮ってヤツだ。幻想郷には危ねぇ妖怪も多々いるが、友好的な妖怪の集団もちゃんとあると情報がある。
人里にこんだけ近いんだ。きっとあそこの人達は友好的な人達に違いねぇ
※根拠はありません
館に近付けば近付くほど、その場所にどんな奴らが居るのかがどんどん見えてくる感覚。
感じれる大きめな妖気が1つ。こっちはすぐ側に居るな。多分外…近いな。
それで館の真ん中と…向こう側に更に大きな魔力が1つ。寝ているのかね。
ゾッとするほど奇妙な魔力が地下にある。…心臓を握られているかのように濃密な魔力。こっちは危ねぇな
幸いなのは館の中に構えているデカイ魔力の塊に反応が無いことだ。恐らく眠っているのだろう。
──ブンっ! ブンっ!
館の真ん前に来た。館の周りにはいっちょ前に門と塀があり近くで見ると更に荘厳で立派だ。
「へぇ〜……すっげぇ」
──ブンっ!ブンっ!
思わず声が漏れる。何より、近くから見た館の迫力よ。
遠くからだと『なんかデケぇ』くらいにしか思えなかったが、こういう大きな洋館は外の世界じゃ中々お目にかかれない。少なくとも俺は拝んだことがねぇな
「……せいっ!とぉっ!」
──ブンっ!シュっ!
んでもって、さっきから空気を割くような威力で中国拳法を披露しているこの美人のお姉ちゃんは何だろう。
鮮やかな赤い長髪が元気いっぱいに拳を振ると同時に激しく靡く。格好も緑を基調とした中華風の……チャイナ服だっけ?
あれだ、『チーパオ』ってヤツを着ている。俺と同じくらいの背の長身の女性だ。……すげぇ、パンツがモロみえじゃねぇか。
人間じゃない………妖怪だ。妖気の反応はここか。敵意も無ければ殺意も無い。危ない雰囲気は全く纏っていない。
そもそも"気"の流れが大河様に完成されている。……只者じゃねぇな。
「ふぅ……よし!眠気が吹っ飛んだぞ〜!……………え?」
「……お」
ようやく俺に気付いたみたいだな。目が合った。……綺麗な目だな
パチパチと目を瞬かせ、たまにゴシゴシと目を擦っている。もしかして、俺が珍しいのかな。
「おはようございます」
咄嗟に挨拶を仕掛ける。怪しまれないように自分から。
「おはようございます! ……えっと、里の人間かな?一人でここに来るなんて危ないぞ?」
「えぇまあ。最近こっちに越してきた者でして」
「…………あぁ!もしかして、最近巷で有名な『八雲紫のお気に入り』!?」
「…………そうそう」
この2つ名は果たして良いものなのかどうなのか
認知の仕方によってプラスにもマイナスにもなりそうだな……少なくとも、今回はプラスに働いてくれたっぽいな
「いやぁすみません。こんな朝っぱらからアポ無しで急に」
「大丈夫ですよ、寧ろ好都合というか〜……。あっ、実は最近はウチでも貴方の事で盛り上がってまして〜」
「……ほう?」
何だろう。拳法を振るってた時は凛とした雰囲気だなぁと思ったけど、大雑把というか、能天気というか…朗らかな人だな
「本当は貴方の御宅宛に招待状を渡そうと、お嬢様が考えてたんですよ。
でもまさか、ご自分でわざわざ歩いてくるなんて!」
「いやぁ、ははは。朝の散歩ですよ」
「まさか〜。妖精に絡まれませんでした?実は紅魔館の周りには結構面倒な妖精の集団がいっぱいいますからね」
妖精……妖怪の他にもそんなのがいるのか。見た事ないな…
紫の妖除けが、まさか妖精相手にも働いてんのか?
「自己紹介が遅れましたね。私は美鈴! 紅 美鈴と言います!ここ紅魔館の門番をやっています。以後お見知りおきを!」
「知ってるかもしれやせんが、俺の名前は四。こちらこそ宜しく。美鈴さん」
挨拶を交わすと、美鈴さんは気楽に会話をふっかけて来てくれた。なんでも門番という仕事は立ちっぱなしだから眠くなるんだと
脚は疲れないのか?と聞くと慣れましたので!と返してくれた。職人病という奴の1種なのだろうか
「はあ〜、四さんがしっかり門から入ってくれる人で良かったぁ〜」
「ん?そいつはどういう事で?」
「博麗の巫女も泥棒白黒魔法使いも、みーんな不法侵入してくるんですよっ!そのせいで、しっかり門番している私が咲夜さんに怒られて───」
「それは貴女が"職務中に居眠りしていらっしゃるから"ではありませんこと?」
背後から声が聞こえた。思わず身構えたが……敵意が無い。すぐに能力を引っ込める。
誰もいなかった筈だ。美鈴さんの反応を見れば明らか……
「──メイドさんだ」
「うふふ…はい、メイドさんですよ」
「咲夜さん!? え、えーと」
美鈴さんが慌て始める。咲夜さん、か。この人が話に聞いた咲夜さんなる人らしい。
………ちょっと失礼な事を言うと、彼女は美鈴さんよりも細めの…華奢な女性だった。美鈴さんは決して太っていないが、"比べると"だ。
銀髪のショートヘアをウルフカットというものに整えた、青を基調としたミニスカのメイド服に白いフリルとエプロン。……太ももに暗器のようなモノをベルトで巻き付けている。
俺と美鈴さんより身長は低いが、それでも女性の括りであれば長身の人だ。幻想郷は美人が多いねぇ
「咲夜さん!四さんには真面目門番キャラで行きたかったのにぃ!」
「大切なお客様にウソはよろしく無いわ」
「あうっ」
咲夜さんは美鈴さんの帽子に、何処から取り出したのかナイフを刺した。こちらに向き直ると笑顔のままカーテシーで頭を下げてくれる。
「ご紹介にあずかりました、四様。私は紅魔館にてメイド長を務めております。十六夜 咲夜と申します。美鈴共々以後、お見知り置き…」
「ご丁寧にどうも…」
「そう固くならないで下さいまし。私と美鈴には是非、敬語を抜いて話して下さると恐縮ですわ」
「呼び捨てでも結構ですよ!」
「…………敬語、は抜かすけど、流石に呼び捨てはまだ早いからしないぜ。咲夜さんに美鈴さん」
「では…これからに期待、ですわね」
「ね〜」
………なんで初対面なのにこんなに好感度?が高いのだろうか。しかしこの2人は言わば従者的な立場にいるのであろう。
多分この館の主が構えているはずだ。……あの中心部のでけぇ魔力の反応だな
「私としたことが…大切なお客様である四様を外に置いたままにする訳にはいけません。
それではこちらへ。
────レミリア・スカーレットお嬢様の元へご案内致しますわ」
実は美鈴さんは推しなんです
後は乳は大きい方がいいと教訓があるので美鈴さんも咲夜さんも巨乳です(迫真)
あと咲夜さんのウルフカットは完璧に癖です。ウルフカット咲夜さん概念増えろ…




