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第零話:ヒーローなんて…

俺は超雄(ヒーロー)が嫌いだ。

 子供の頃、テレビで見た超雄(ヒーロー)の活躍が朝のニュース番組から深夜のワイドショーまで映し出され、街に出かければ超雄(ヒーロー)が出演した広告や超雄(ヒーロー)のグッズを見かけるようになり、ご近所の井戸端会議から学校の友達の世間話にまで超雄(ヒーロー)の話題で持ち切りだった。

 俺は超雄(ヒーロー)を支持する気持ちになれず、むしろ見飽きるを通り越して、うんざりした。

超雄(ヒーロー)が出演しない番組を見ると、両親から文句を言われ、

超雄(ヒーロー)とは別のキャラクターグッズを買うと、他の客から白い目を見られ、

超雄(ヒーロー)以外の会話を切り出せば、友達の輪から爪弾きにされる。

 周囲の人々が良くも悪くも超雄(ヒーロー)信者だった為、窮屈で、居心地の悪い感覚とそんな彼らの恐怖に支配されていった。

 そんなある日、道端の段ボール箱に入って捨てられていた子犬を拾う。その子犬にマオと名付け、両親を説得し、家に入らせた。

 そんなマオだけはそんな自分を邪険にせず、純粋で優しい表情を見せてくれた。彼とのかけがえない時間が俺の心の拠り所となった。

 はずなのに、突然の火災で取り残され、焼死した。当時、この事件で対応した超雄(ヒーロー)はただ一人、『バーニング・ファイター』だ。彼は超雄救助隊のリーダーである火を操る超異能(アビリティ)覚醒者(・ホルダー)で、金髪碧眼の美男子の容姿によって女性ファンを獲得しつつある期待の大型新人だ。

 彼は他にいる隊員を差し置いて、自分だけが先行し、マオ以外の俺たち家族を救った。俺はそのことに対し、疑問に思った。

「なんで、俺の大切なマオを助けなかった!? 超雄(ヒーロー)は誰一人見捨てないんじゃないのかよ!?」

 その言葉を皮切りにあいつへの不信感が爆発し、責め立てる。そしたらあいつは嘘のように涙を流し、言い訳のように謝罪をした。

「すまない、君の大切な()()を救えなかった。あの時、炎が激しすぎて、近づくことすらままならなかった。しかし、全ては私の責任だ。君への罪を背負い、同じ過ちを繰り返さない。」

 何言ってるんだよ?お前は確か、テレビで”肌には防火耐性を持っていて、百兆度の火炎にも耐えれる”って言ってたじゃねぇか。それより、なんで、家族しか言わなかったのにマオが()だってこと知ってんだよ。そう言おうとした瞬間、俺は恐ろしい形相を顔に浮かべた父親に殴られた。

「お前は何故、こんな大変な時にバーニング・ファイター様を侮辱するんだ!」

 叩きつけられた地べたから起き上がり、初めに見たのは父親だけでなく、母親や取り巻きが見せる俺への失望感、拒絶意識、汚物を見るような蔑む視線だった。

「いつまで、超雄(ヒーロー)様たちに文句言えば気が済むんだい! あなたを産んだ事を後悔したよ!」

「バーニング・ファイター様への暴言を取り消せ! この糞異怪種否定主義者(ノーマリアン)!」

「お前などバーニング・ファイター様に救われるべきではなかったんだ!」

 誰も俺の心の傷を擁護しない。誰も俺の心の声を聞こうとしない。俺は愚かな怪物という凡人の群衆への暴力に耐えるしかなかった。その時、バーニング・ファイターは俺を庇い、胸糞悪い甘い言葉で皆を制止した。

「皆んな、彼の言う通りだ! 彼の大切な家族を無くした事実は変わらない! それでも、この罪を背負い、今再び誓おう。もう誰一人犠牲にはしないと!」

「ああっ、何て慈悲ある言葉! それに引き換えこいつはなんて浅ましいんだ!」

 俺は確信した。この世界に俺のような超雄(ヒーロー)を疑う奴は変人悪人扱いされ、味方など得られないと。

 その時、俺は余りにも酷く、醜い現実(せかい)と愚かな群衆(くずども)にただただ流される現状に目を背く為に瞼を閉じた。

 その数十年後、俺が超雄退治(ヒーロースレイヤー )に出会うまで、そんな絶望に飲み込まれた。


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