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レベルが上がると加齢臭も上がる勇者、仕方なく低レベルで魔王に挑む。

作者: しいたけ
掲載日:2022/11/17

 彼がその異臭に気が付いたのは、とある宿屋に泊まった翌日のこと。


「……なんか臭うな」


 魔王討伐の旅も中盤に差し掛かり、序盤のボスの色違いが雑魚として現れだした頃、勇者は自らの加齢臭にようやく気が付き始めたのだった。


「ステータスオープン」


 勇者として当然の権利である【見えるステータス】の端っこに、今まで気が付かなかった項目が見えた。


 勇者ももちき

 Lv.31

 こうげき 108

 ぼうぎょ 112

 すばやさ  83

 加齢臭   58


「なん……だと!?」


 勇者は焦りを憶えた。

 これではレベルが上がる度に加齢臭も強くなり、最終的には臭すぎて姫との結婚も御破算になってしまう、と。


「とにかくこれ以上のレベル上げは危険だ……!! かくなる上はこのまま魔王城へ向かうしかない……!!」


 勇者は仲間達が起きる前にシャワーを浴び、この日初めて香水をつけた。過去に誰かから聞いた、コロンは叩くという都市伝説を信じ、シャワールームで自らの胸周りを強く叩き続けた。


「香水つけすぎ。臭いわ」

「香水臭い」

「臭い」


 仲間達から何を言われようが、勇者は無視を決め込み自ら棺桶の中へと閉じ籠もり魔王城へ向かうように指示を出した。





「──魔王の部屋の前に着いたわよ」


 棺桶の中から聞こえるスパンキング音に首を傾げながら、魔法使いは棺桶を杖で突いて勇者を呼んだ。


「よし! 行くぞ!」

「ええ!」

「おお!」

「うん!」


 ──が、当然レベル上げを怠った勇者が魔王に敵うわけもなく、勇者一行はあっという間に窮地へ追いやられた。


「なんという弱きことよ……!! このまま死ぬがよい……!!」


 魔王がとどめの一撃を身構える。


「おいおい、勇者ももきちとあろう方が、なんと情けない醜態を晒しているのかねぇ……」


 半死半生の勇者の前に、別の勇者が現れた!


「クッ……やつは強い! 油断するな……!!」

「後は俺に任せな! ステータスオープン!!」



 勇者やたろう

 Lv.48

 こうげき 298

 ぼうぎょ 191

 すばやさ 146

 加齢臭  256



 辺り一面に強い異臭が立ち込め始めた。やたろうの加齢臭だ。


「お前……レベルを上げたのか!!」

「なぁに、平和の代償には軽すぎるさ!」

「仲間はどうした……!?」

「聞くな!!」

「臭くて逃げられたのか……!?」

「言うな!!」

「鎧のワキが黄ばんでる……!?」

「見るな!!」

「お前……最高に勇者だな!!」

「あたりめぇだろが!!」


 勇者やたろうは、泣きながら魔王へと斬りかかった。


「うおぉぉぉぉ!!!!」

「さっきのよりは手応えがありそうだが……まだまだワシの相手ではないわ!!!!」


 二合三合と討ち合う勇者やたろうと魔王。

 が、勇者やたろうは深手を負い、その臭い体を横たわらせた。


「やたろう……!!」

「……まだ……レベルが足りなかった……か……」

「ククク、とどめじゃあ!!」


 魔王はとどめの一撃を身構えた。



「そこまでだ魔王!」


 魔王の部屋の扉が強く開け放たれ、長身金髪イケメンの勇者が、格好良くポーズを決めて現れた。


「待たせたな二人とも! 真打ちは遅れてやって来るものサ!」

「勇者ななもと……!」

「遅ぇぞ……こちとら死ぬ間際だそおい……!!」

「そこで死にながら僕の勇姿を観ているがいいサ! ステータスオープン!!」



 勇者ななもと

 Lv.86

 こうげき 634

 ぼうぎょ 469

 すばやさ 272

 加齢臭  788



 魔王の部屋にただならぬ死臭が立ち込め始めた。ななもとの加齢臭だ。

 既にももきちが朝叩いたコロンは無臭なのではないのかと思うほどに効いていない。


「そんなにレベル上げたら、誰とも結婚出来ねぇぞおい……!」

「ふふん! 加齢臭の一つで救える世界があるのなら、僕は喜んでこの身を差し出すサ!」


 ななもとは聖剣を構え、走り出した。


「ぐおぉぉぉぉ……!!」


 聖剣は魔王の体を二つに切り裂き、見事に地に伏し身動きの一つを許さなかった。


「僕の勝ちサ!」

「……ぉのれぇぇぇぇ!! 真の姿を晒させおってぇぇ……!!」


 第二形態という当然の権利で復活した魔王は、容赦ない三回攻撃で勇者ななもとをぶちのめした。


「ぐわぁぁ……!!」

「ククク……とどめじゃ!」


 と、そこへ颯爽と女勇者が駆け込んだ。


「魔王め! 勇者の血を引くこの私が成敗してくれる!! 最大まで上げたレベルで貴様をぶちのめしてくれる! ステータスオープン!」


  勇者まりりん

 Lv.99

 こうげき  12

 ぼうぎょ  10

 すばやさ   8

 加齢臭  9999


 魔王の部屋に黄土色の濃霧が立ち込め始めた。勇者まりりんの加齢臭だ。


(可哀相過ぎる……!!)

(なんとむごい……!!)

(臭すぎるのサ……!!)


 三人は思わず目を背けた。ついでに鼻を押さえて息を潜めた。


「な、なんと臭い娘ぞ……!!」


 魔王の目に涙が見えた。刺激臭が目に染みたからである。


「だが美しい。そなた、吾輩と結婚せよ。そうすれば命は助けてやるぞ?」

「えーっ? ……じゃあ……悪いこと止めてくれる?」

「……分かったぞい」


 こうして、魔王は隠居した。世界に平和が訪れたのだ。



 僻地の奥にあるとされる加齢臭の濃霧の先に、魔王と勇者まりりんの住む庵があった。そこで二人は仲睦まじく暮らしている。


 一方、役目を終えた三人の勇者達は、今日も泣きながらシャワールームでコロンを叩き続けている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり結局顔か(・ε・` )ケッ 魔王が真の勇者説を強く推したいのです笑
[一言] わぁ〜……( ;´Д`) でも、臭いを気にしない魔王。ある意味勇者。 アラフィフのお姉様が、60代以上のメンズが揃う会議室に行って「なんかいい匂いしたんだけど、なんのコロンだろう…」って言…
[良い点] ステータスの加齢臭。 レベルと一緒に上昇する呪い(笑)がついてるのに、レベルカンストまで上げるとは……まりりんは勇者の称号にふさわしい猛者なのです。 [気になる点] 濃霧? 生身で毒ガス…
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