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フシギたんきゅーぶ!!!!!!!(二次創作)

作者: 鼎ロア


偶然か、必然か。そんなのはどうでもいいけれど、俺はよくこんな夢を見る。


黒い空に真っ白な草原。時空の歪みのようなそんな世界に俺は毎回立っている。

そこにいつもいるのは姿が見えにくく、影に近しい、知らない子。


どこかで見たことあるようにも思える。だけど、それを思い出すことは毎回できない。

そう思ってしまうのは、その子を見ていると胸が締め付けられるように苦しくなるからだろうか。


この感覚は一体……。あの子は、誰なんだ……?


そういう疑問は頭に残り、考えさせることを止めない。

そしてなぜか、体を動かすことも、声を出すことも、させてくれない。


「こ……そ……」


なんだか悲しそうな声で、俺になにかを語りかけているようだが、まったくもって聞き取ることができない。

その言葉を少しでも聞き取ろうと前へ進もうとするがやはり動けない。


「き、き……は……」


頑張って、声だけでも出そうとする。だけどそれは叶わなくて、結局喉から変な音がするだけだった。

すると突然、まるで箱であった世界が誰かにぺしゃんこにされているかのように、世界が歪み始めた。


頭に謎の痛みが走る。そのせいか、少しずつ頭がふらついていく。

こんな夢は、今までにはなかった。どういうことなんだ……?

すると、痛みがより強くなり、それと同時期に耳に不思議な音が流れる。


トントン、トントンと。

その音と今の状況は、まるで強い地震が起きたときのような、そんな突発的な不安を俺に覚えさせた。


やがて、その不思議な音は少しづつ聞き覚えのある音へと変わっていった。


ペシペシ、ペシペシ


音が頭に響くたび謎の痛みと不安がこみ上げる。


ペシペシ、ペシペシ


ペシペシ、ペシペシ


何度も何度も繰り返されるその不思議な音と感覚。


ペシペシ、ペシペシ


だんだんとその音は大きくなっていた。




────────────────────




ペシペシ、ペシペシ


目の前の世界が完全に真っ暗になり、数秒が経った頃、俺の意識は現実へと戻っていった。

頭に当たる不可解なものを視認すべく、俺が頭を上げて正面を見てみると、そこにはなんとも小柄な可愛らしい女の子が少し笑顔で立っているのを見つけた。


「あ、起きちゃったかぁ。 結構これ楽しかったのに。というか、もう授業終わってるよ」

少しぼんやりとした頭でよーく整理してみる。


「……さっきから頭になんか当たってると思えば叩いてたのはお前か!」


「せーかーい。 起きる前に気づいてくれないかなぁ」


「無理があるわ!」


ムスッとした顔で俺を見ている目の前の彼女は咲上あき(さきじょうあき)。茶色い髪を腰のあたりまで伸ばした少女だ。


童顔で、そのきれいな瞳はアメジストの宝石を想像させるかのように輝いている。

背丈は……近所の小学生となんら変わりがない程に小さい。俺と同じ高校生だとは思えないときがボチボチある程だ。


そんな可愛い容姿をしているあきは、もちろんと言っていいほど優秀で、成績は良いはスポーツもできるは。

()()()()()()非の打ち所のない完璧美少女ではある。が、中身がアレだからか怖いと思ってしまうときも多々……。


「眠い。眠すぎる……。学校来て最初の授業が世界史って寝ろと言ってるようなもんだろ……」


そう眠そうに文句を垂れている俺。

名前は白優(しらいゆう)咲上あきと同じ高校一年生だ。

雪のように真っ白な髪に、ペリドットのように緑色に明るく輝く瞳。容姿は……まあまあちょっとはいいはず。

いいはずなんだけど、女子からはまったくモテないんだ。なんでだろうね……。


まあ、右腕に()()()()()()()()()()()イタイ人と見られて相手にされないのもある意味必然かもしれないけど。


5月6日。ゴールデンウィークを明けであった今日は、昼夜逆転を無理にでも直して学校に来ていたからか、心身共に限界に近い。


「ほとんどの授業寝てたもんね。まあ私も寝てたけど」


「おい」


「だって授業つまんないしー」


あきはスッパリとそう言い切った。

こういうとき成績優秀者はなかなかに羨ましい。だって寝ててもそこそこの点が取れちゃうわけだし……。


まあ、あきの言い分も一理、いや、百理くらいある。

そう、あの授業はつまらない。いや、正確に言ってしまえば興味が持てない。

俺の教師に対する評価基準は、相手にその科目に興味を持たせられるかどうかだ。それができない世界史の教師は“ただの世界史オタク”でしかない。


「おっと、僕はしっかりと起きてたよ。ノートは100円で見せてあげよう」


「ノート見るだけでそんな使うのかよ。それに、ノートならしっかりとってたんだからな」


そう俺が不満げに言い放った相手は河井トオル(かわいとおる)。金髪の顔に整った顔つき。ただのイケメンだ。うん。見た目に関してはそれ以外はない。あ、瞳の色はルビーだ。はい、これだけ。


中身はあき同様にかなりぶっ飛んでおり、俺はこの二人に振り回されてばかりだ。

この三人で唯一マトモなのは俺だけ、だよな?うん。たぶんそうだ。俺はマトモ。


そんなぶっ飛んだ二人とは小学校からの幼なじみだ。

高校に入学してからもう一ヶ月が経つが、基本的にこの二人としか会話をしていない。

あとは……中学のときの友達とちょくちょくと言ったところだろうか。


いい加減他の人達とも仲良くしたほうがいい気もするが、この二人がいれば一応はぼっちじゃないわけだから、と理由付けて行動に移せていないというのが現状だ。

それに、別に他の人らと話さなくてもいいしな。

そんな退屈な学校生活を俺は送っていた。


「いやぁ、いくら世界史の先生でも象形文字は読めないんじゃないかぁ?」


トオルは俺のノートをスラッと読むとそう言い放った。

俺もそれに反応し自分のノートを見てみる。


「え……」


ぐっちゃぐちゃだ。もはや文字かどうかもわからない。線という線が、まばらに並んでいる。ただそれだけのノート。

あるよね。なんか意識落ちるといつのまにかに変な線書いてるとき。まさにあんな感じ。


「タダじゃ……ダメですか……?」


「ダメですね。きっぱり100円をいただきます」


おいおい、うっそだろ。書き写すのだけでも大変なのによぉ。


「あ、私には後で見せてね」


そう言ってあきは100円玉をチラつかせる。


「もちろんあきはタダでいいよ」


「やったー!」


「おい、おいおい。なんだよこの扱いの差。俺たち三人の仲だろ?俺もタダにしてくれよ」


「ユウは可愛らしさがないんだよねぇ」


可愛らしさ……可愛らしさか……。

……ええい!恥ずかしがってる場合じゃない!ここはいっちょやらないと!俺の金がなくなっちまう!


「あ、あのぉ……わた──」


キーンコーンカーンコーン


俺が勇気を振り絞り可愛らしさを表現しようとしている真っ最中で、狙ったようにチャイムが鳴りやがった。


まるでムシケラを見るような目で俺のことを見下しながら、二人は自席へと戻って行った。


それなりに傷ついている。あんなに勇気振り絞ったのによぉ。

おかげで目は覚めたが、体も冷めたよ。


それから俺はまたぐったりとした。



────────────────────




──昼休み。



退屈な授業も一通り終わって、俺は朝自分で作った弁当を机の上に広げた。

誘いもせずとも、当たり前かのように二人は俺のところに来て、自然と机をくっつけて座る。おかげでボッチと思われないから割りと二人には感謝しているというのは内緒だ。


「ねぇねぇ、ユーは部活どこ入ったの?」


あきが座ったと同時にそんなことを聞いてきた。この時期、部活の勧誘ラッシュも終りを迎え、だいたいの一年生はもうすでに入部して部活動に勤しんでいる。が、しかし


「入るわけないだろ。本を読みたいんだ本を」


「本が読みたいなら読書部ってとこもあるらしいけど?それに文芸部とかでも本は読めるんじゃない」


「それでは追記をしよう。俺は家でゆっくり本を楽しみたいんだ。わかるか?」


「うん。根っからのインドア派ってことがよーく伝わったよ」


「伝わる伝わる」


あきの言葉にトオルも続けて頷いた。


「あのなぁ、俺は時間を無駄に使いたくないんだ。高校の部活動にでも入ってみろ?貴重な勉強時間、趣味の時間、読書の時間。すべてが無くなってしまうじゃないか」


元々、自分の偏差値よりも少し高い高校に無理やり入ったんだから、そんなことに時間を使っていたらタダでさえギリギリな勉強に押しつぶされてしまう。

そんなこと起こっちゃったら留学という穴にまっしぐらだ。それだけは困る。


「適当な時間を適当に過ごすよりかは全然いいと思うんだけどなぁ」


あきはなぜか不満げにそう呟いた。


「あれ、そういう二人はなんか入ったの?」


「ふっふっふー、よくぞ聞いてくれたね!ユーにはこれを見せようと思って!!!」


あきは勢いよく立ち上がり、どこからともなく一枚の紙を取り出し俺たちの前に突き出した。


「『貴殿らの部活動を同好会として認める』……?なんなんだ?これ。お前、同好会でも作ったのか?」


「そうですそうです、名付けて『フシギたんきゅーぶ』!!!!!!!」


んーと、フシギたんきゅーぶ……?なんだその変な名前。

なんでもできるあきだが、ネーミングセンスは皆無なようだ。


「今は僕達しか部員がいないから、部活動として認められるには残り二人の部員が必要だよ」


とトオルは説明をする。

へー、まだ三人しかいないんだ。

……うん?僕達三人……?


「いやちょっと待て!僕達三人?なんかおかしくないか……?」


「そうなんだよね。だからまずはいろんな人を勧誘していかないと行けないの。部室はすでに確保済みよ」


「いやいやいや、そうじゃなくてだな、その部活の部員ってもしかして俺、あき、トオルのことか!?」


「え?そりゃそーでしょ。逆に他に人いるの?」


え?いてもいいでしょ。僕ら以外にも友達くらいいるでしょ?

え、てか俺強制か!?せめて一言ってくれよ……!!

それに、あきとトオルはそのことになんの疑問も抱かないのかよ!普通一言言うだろ!!てかどっちでもいいから先に気づいてくれよ……。


「おいおい…………つか、さっきの部活何入ってるかって聞く意味ねーじゃん」


「いや?一応、それで入ってたら無理にでも辞めてもらおうかと思ってただけだよ?案の定入ってなかったけど」


ええ………てか案の定って酷いな!少しは期待しててくれよ!!まあ、入ってなかったし入る気もサラサラなかったけど。

それに、それがまったくもって冗談に聞こえないのが怖い。こいつは目的の為ならば手段を選ばないからな……。もし部活動入ってたら、俺、一体何させられてたんだ……?


「そ、それで、『フシギたんきゅーぶ』って具体的にはなにするんだよ」


俺は、あまりにもぶっ飛んだ二人に根負けし、部員になることを認めた。


「お、部員になってくれるのね」


「作っちまったもんは仕方がないしな」


「んーそうだなぁ。まあ、やることは適当でいいんじゃない?」


は?なんとなく予想ついてたけど、まさかの部名とあんま関係ない?


「何言ってんの。僕たち三人と言ったら、やっぱアレじゃん?」


「まあ、たしかに。アレしかないわよね……」


トオルとあきは互いに目を合わせる。

いや、そんな心と心が通じ合ってるみたいなことされてもだな。


「いや、アレってなんだよ」


「えっ、まさか察せないの?幼なじみ失格だよ?それ」


「失格だね」


「そういうお前らこそ、もう長い付き合いなんだから俺が察し悪い人間だってことくらい覚えとけよ」


「努力はしないのか」


「まあそれがユウだよ。しかたがないしかたがない」


半ば諦めているトオルはあきに気づかせようと肩をトントンとしている。

いやさっきからなんだよ。


「ほら、あるじゃんかさ。僕たち三人だけの秘密の秘密の遊びが」


「おまえ……まさかアレじゃないよな?」


「はぁ、そのまさかだよ。『化け物退治』。やっぱり僕達はこれで充分だよ」


「え、ちょ、怪我でもしたいのか!?」


「ユウ、部活動に怪我なんて付き物だよ付き物」


「いやでも死ぬかもだぞ!?死にたいのか!?」


「大丈夫大丈夫。私がついてるし。怪我なんてちょっとなら大丈夫だよ」


「いやちょっとでもアレにはだいぶだわ!たしかにお前は強いけどだな……」


たしかに、この三人は強い。だけど、危険を顧みず簡単にやらおうとするのは、どうしても心配でしかなかった。


「それに、ユウ。君のその『力』もついてるんだし問題なんてどこにもないよ」


「それ俺とあきが大変なだけじゃねえか!」


「それも心配しないで。私が全部員戦えるよう、武器を作ったげるから」


あきはピシッとし、かっこよくそう言った。


「え、ちょ、なんでさ!何回も僕が頼んでも作ってくれなかったのに!」


「別にアンタにあってもしかたないでしょ」


「しかたなくないよ!保険だよ保険!!」


「まあ、あとはそうね……適当にゲームとか本とか読んでのんびり過ごせばいいんじゃないかしら。部活なんて楽しむだけにあればいいもの」


「あー、うん。うん。そうだね。うん」


俺は少し呆れ気味にそう言う。

『化け物退治』をただの遊びとして見ているこいつらが怖い。

死なんて恐れていないかのような勢いだ。


「それじゃあ、決まりね!」


あきは、その持っていた紙を再度高く掲げた。

同好会という文字が太陽に照らされ、眩しく写った。






──これは、君たちとは似ているようで、似ていない。すっごーく曖昧なお話。


フシギなフシギな俺達の、日常のお話。


Thank you for reading!

あらさじにて解説したとおり、これは原作の一話をシナリオを変えずに書いております。

次話は投稿しませんので、原作『フシギたんきゅーぶ!!!!!!!』からご覧ください。


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