表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
95/96

エピソード93

ダンジョンは地上1階から、地下に潜るタイプのダンジョンだった。今のところそういものしか見たことがないが、ギルドの飼料には、上へと上がっていくものもあるらしい。

一説には、自分たちが居る世界とは別の空間・世界だという説もあるらしく、ダンジョンには独自の法則もあるらしい。まあ、魔物が死ぬと光りの粒子になって消えるというゲームっぽさが、生命への敬意を誓約としている自分が、受け入れられている理由なのだが。

ダンジョンの入り口をくぐると、そこは雪国ではなかった。

アンタレスの街の近くにあったダンジョンしかしらないが、そことも違う、石を切り出して人工的に作られた何かの遺跡の中にいるようだった。

前世では日本から出たことのない僕だが、テレビなどで、ピラミッドや南米のマヤ文明の遺跡の映像はみたことがある。あんな感じだ。ボルサリーノと鞭があれば、どこかの考古学者兼遺跡探検隊の気分が味わえるかもしれない。

古代遺跡にありがちで、中は真っ暗だった。

「ライト」その言葉によって、僕を起点に周囲に灯りが広がっていく。

理屈は全く説明出来ないが、剣と魔法のふぁんたじー世界なので、これでいいのだ。

他人を攻撃しないなら、大概のことは神様からもらった「医療魔法」によって具現化出来る。

したがって、今回のダンジョン探検隊は、物理的に戦うギンとタラちゃんしかいない。プルンはダンジョン内で誰かが怪我していた場合の医療補助要員であり、踏み潰されないように、僕の鞄の中で待機している。

タラちゃんが僕の肩に乗り、守備と共に、蜘蛛の糸攻撃で、襲ってくる魔物の動きを止め、ギンがいろいろするという連携を取っている。

まあ、もっともギンだけでどうにでもなるらしく、実際僕は光りの粒子に消えるところすら見ていない。

ギンが目の前からいなくなったと思ったら、また現れて、進行方向に進むと足元に魔石が落ちているという感じだ。

異次元ポケットは、視認したものを収納するイメージによって発動するので、わざわざ屈みながら拾い上げる動作さえ不要であることから、歩く速度は変わらない。

ダンジョンマップはギルドのダンジョン前派出所で各階ごとに販売している。地上階は銅貨3枚だが、下の階層ほど地図の値段も上がっていく。

ダンジョンの最下層まで到達し、らすぼす、と呼ばれている最難関の魔物を倒すと、ゲームクリアになるらしく、ダンジョン制覇おめでとうというくす玉が割れるらしいのだが、実際のところまだ誰も最終階まで到達していないので、本当のことは分からないはずだ。まことしやかに流れているこの「くす玉が割れる」というのも多分ガセじゃないかと睨んでいるのだが。

それはさておき、ダンジョン探検強化月間に突入したことでキャンペーン期間中は、魔物を倒すことで得られる魔石や、その他のの有効利用出来る部位、通称「素材」の買い取り額が2割り増しになるので、多くの冒険者がこぞって参加するようになる。

ダンジョン低階層の魔物は、冒険者としての経験が浅い階級の低い冒険者には大切な稼ぎ口であるから、魔物討伐を生業にしない僕なんかのようななんちゃって冒険者は、他の冒険者の邪魔をしないように、最低限、先に進むだけの邪魔者だけ廃除してその分だけ魔石を入手するにとどめる。

どうやら地上層に居たのは、僕の天敵である緑色のちっちゃいやつだったらしいが、光りの粒子に変わるところすら見ていないのだから、元が何だったかなど知る由もない。まあギンに感謝だ。

今回の目的は地下3階層にあるという毒生物の住処であるらしい沼地である。

地下なのに沼地?と思わなくもないが、考えても答えのでないものは考えない。

そういう思考も大切だ。

僕は地図を見ながら最短距離を進んでいく。

地下3階までの地図はギルドで手に入れた。結構良い値段はするけど、暗い迷路で迷い続けて魔物に襲われ続けたら命の危険も決して少なくないことを考えれば、必需品と言えるだろう。

まっすぐ、次の階層への続く階段を目指して進んでいく。

ギンのおかげもあって、すぐに地下1階にたどり着いた僕は、目の前の光景を唖然として見つめていた。

そこには、広い草原が広がっていたのだ。

(地下だよね?)

まあ、事前の知識で知ってはいた。地下3階が沼地と聞いてすでに、意味不明ではあったのだから、地下1階が草原で何が悪いと言われて返す言葉もない。

ただ、聞いて話半分程度に頭の片隅にとどめておくのと、目の前の光景を目の当たりにするのでは意味が違う。確かに見えているものは情報として脳には届いているらしい。しかしながら、その脳が情報の伝達を拒否している。

地下なのに、広々とした草原が広がり、なんなら殺気までの暗い石造りの遺跡風の景色はどこにいった?

これならミニホも連れてくればよかったかな、と思うくらい、牧歌的な風景がそこに広がっていた。

もっとも、やはりミニホを連れてこなくて良かったと思うのは、すぐに地平線の向こうから、黒いごま粒が動くのを見つけたからである。

ごま粒は次第に大きくなり、その招待が狼の群れだと気付くころには、ギンが駆け出していた。

この世界の狼魔物ってギンの眷属じゃなかったのかな、と思いながらもギンが魔物を瞬殺するのを見ていた。というか見えなかったのだが、今回は見通しがよいこともあってその一部始終が見えた。

すると、魔物のドロップが少し変わっていた。

僕のスキルにある「解剖」は普通の冒険者が魔物の素材回収のために行う解体の斜め上をいく。スキル化しなくても、冒険者が日常的に行う解体は魔物の部位を余すところなく採集するために必需の技術であるが、これがスキル化されると、魔物の部位を解体中に傷つけて失う事がなくなると同時にダンジョンでのドロップにエキストラが加わる。アンタレスのダンジョンでミノタウロスをギンとムートが虐殺したとき、全ての焼き肉の部位が手に入ったのは、この解剖スキルが発動し、「医療に有益」と判断したことによる。

つまり医療に有効な成分を含む部位は全てドロップとして残るようになるのである。

なんというご都合主義、科学的に説明しろといっても無理なので、考えることはあきらめる。

という訳で、目の前にあるのは、魔石の他に狼の毛皮だけでなく、牙と爪と骨と肉である。

通常は肉か皮か牙のどれからしいのだが、牙や爪そして骨は削りだして、人工の歯の材料として、皮はビタミンとミネラルの供給源として、それぞれ医薬部外品扱いになったらしい。

皮は通常ドロップ扱いであり、通常ドロップが牙や肉扱いのときには残らないこともあるので、何匹に一匹の割合で生じる。毎回ドロップとして残る訳ではない。一方狼の骨とか普通に臭そう。スープの出汁を取るのにもあまり使いたいとは思わない。そうすると使い道がよく分からない。ただし、その場に残すと、ダンジョンが再び吸収して魔素の濃度がその分濃くなってしまうので、使い道がなくても一旦は持ち帰る。

ドロップについての考察を終えると、地図をみながら再び草原を進む。遺跡のように遮る壁がなく、どこを進んでいるかも分からなくなるということはないが、出口と入り口の場所を見つけるのも目印がない分大変である。

地図の上階につながる階段と下層につながる階段とを階段の向きからおよその方向を割り出すことで特定し、あとはその辺に向かって進み、頃合いを見て、周囲を慎重に探すしかない。

地図上での現在位置が分かるスキルとかもあるらしいが、そんな便利な能力は持ち合わせていない。

まあ、ギンが居ることで、周囲の安全は確保出来ているので、大体の方角と距離だけ分かればさほど苦労はしない。

しばらくして下層へ降りる階段を見つけ、下っていく。

空中を降りる感覚がどうしても慣れないが、地下2階は森林だった。

何故?としか言い様がないが、どこかから日の光まで入ってくるようで、暗闇ではないその仕組みが全く理解できない。

どこか別の場所にいきなり飛ばされたと言われても、既にどこか別の場所に飛ばされた僕としては、素直に信じる。

森の中は鬱蒼としていて、視界がほとんど遮られている。

こういう場所で能力を発揮するのが、タラちゃんだ。

早速先行してもらい、木に登って、木々の間を糸を張りながら、器用に飛び移っていく。

すると、飛び移った木の枝に気配を隠して蛇が待ち伏せしていたらしく。飛び移った先で、いきなり戦闘になってしまった。

蜘蛛と蛇ではどうしても蛇に分がある。

タラちゃんもポイズンタラテクトという蜘蛛の中では上から数えた方が早いくらいに強い種族であるが、同じ大きさの蛇では、傷を負う可能性が出てしまう。

僕は、隙を見せないように、退却するようタラちゃんに指示を出し、ギンにタラちゃんの援護をお願いする。

こういうときに、何も出来ない僕の無力さが恨めしい。まあ、荒事に積極的に関わるつもりはないのだけど。

ギンは、ゆっくりとした動きで僕の前に出ると、いきなり前足を振るった。

次の瞬間、タラちゃんを襲おうとしていた蛇が二つに分かれ、そして光の中に吸い込まれていった。

何が起こったのかは見えなかったけど、なんとなく想像はつく。

やっぱり、理不尽の塊だ。

タラちゃんは僕のところまで戻ってくると、頭の上で一息つく。

下の階層に行くためには、こちらから移動しなければならないので、じっと待ち伏せされると、気配が分からない。

セルパなら熱感知で場所や数など特定できるのだろうか?

とはいえ、セルパは草原蛇、蛇の中でも最も弱い部類に入る。こんなところで偵察に出すのは危険だ。

ここは一つ、リスク承知で、突っ切ってみようか。

僕はタラちゃんを頭の上に乗せたまま、ギンの背中に乗る。

上から降ってくる蛇などの奇襲攻撃は、タラちゃんに糸を吐いてブロックしてもらい、ギンには、そのまま次の階層への階段までまっすぐ進んでもらう。

ギンの全速力は耐えられないので、振り落とされない速度の中で一番早い速度で、階段まで運んでもらう。

ギンは俄然やる気を見せて、僕とタラちゃんを乗せた状態で、森の中を走り出す。

すると雨あられのように蛇が降ってきた。

その光景はちょっとしたホラーでトラウマになりそうだった。

だが、蛇たちはギンの速度の目測を誤り、全て後方に置き去りにされた。

蛇が動き出した瞬間、その気配を察知したギンが、一時的に速度を上げることで、蛇たちの目測を誤らせていたのだった。

しばらくは後続の冒険者も来ないだろうし、魔物を置き去りにしても、周囲の冒険者には迷惑が掛からないので、わざわざ討伐する必要もない。

ちなみに最初にギンにまっぷたつにされた蛇からは、蛇の皮と毒袋がドロップした。

通常ドロップは皮で、毒袋は「解剖」の恩恵によると思われる。

「医療鑑定」によると、毒だと表示された。

沼地だけでなく森の中にも毒蛇が居るのが分かった。特に木の上から降ってくる蛭のようなムーブは多くの冒険者に嫌われるだろう。

折りたたみの傘があると便利かもしれない。

とりあえず片手がふさがってしまうのはデメリットだけど、この森に関しては少なくとも蛇の奇襲を防ぐことのメリットの方がデメリットに優るような気がする。

もちろん、足元への警戒も怠ってはいけないので、足首の露出しないブーツが必需品だろう。

僕たちはこの階層ではほとんど魔物と交戦することなく、次の階層に進んだ。

地下2層は湿地だった。

階層ごとにここまで地形が大きく変わるのは一体何故なのか。なぜ、森の下に別の空間があって、そこが湿地になるのか、上野階層の重さで、崩落しないのはなぜなのか、そして何より空があるのは一体何故なのか。

いくらダンジョンがそういうものだからと言われても、もはや地下2階ではなく、別の空間ごとに飛ばされていると考えるほうが正しいのではないか。

階段は階段のように見えて、実は高度を変更している訳ではないのだろう。

僕たちは、とりあえず、当初の目的であった地下3層の沼地の毒性のある生物、蛙と蛇を探すために、さらに先へと進もうとする。

しかしながら、湿地はギンとの相性が悪かった。

ギンの俊敏聖は、大地をがっしりと掴む爪が、地面にひっかかり、体重移動をロスなく地面をけり込む反動を推進力に変えることによって得られていたものだった。

肝心の踏み込みが効かない湿地では、ギンの俊敏さが失われ、ギンはその感覚にとまどっていた。

そして湿地にも蛙の魔物と蛇の魔物が出没した。

森の中の蛇と異なり、湿地の蛇はとってもカラフルだった。

攻撃的なのは変わらないのだが、前世の有毒生物がそうであるように、有毒であることを示す派手な色をしていた。

湿地はギンの俊敏聖を奪うのだが、もう一つの問題が、ギンが前足を振ることで空気を切り裂き、かまいたち現象を起こして攻撃する手段も、使えなくなったことである。

ギンの素早い前足の振り下ろしは、他の3つの脚で地面をしっかり踏みしめているからこそ、振り上げた前足に力が伝わるので、他の脚が不安定だと力が伝わらなくなるのである。

いきなり、僕たちは地下2階で窮地に立たされてしまったかのように思われた。

そんなときに救世主となったのがタラちゃんだった。持ち前の体重の軽さは、湿地帯では武器になる。

湿地のところどころに生える草の上を器用に飛び跳ねながら移動し、蛇も蛙も糸で絡め取って、蛇は毒牙を突き刺し、蛙はそのまま、糸の端をギンがたぐり寄せて、僕が糸の合間からヴィルさんにもらった剣を突き刺す。

蛙は体表に毒がしみ出してくるので、タラちゃんが噛みついて毒を注入するのは危険だった。

一方蛇は口の先端にある二本の牙が噛みつくときだけ、持ち上がり、その先端が空洞になっていて、そこから毒が獲物の体内に注ぎ込まれる構造になっているので、タラちゃんが噛みつく箇所から、逆にタラちゃんが毒に晒されることはない。

そして、医療解剖のおかげで、ドロップは、蛙については瓶詰めの毒と皮が、蛇は瓶詰めの毒と皮の他に試験管に入った血液がそれぞれドロップした。

なぜ、瓶とか試験管とかに入った状態でドロップするのか、意味が分からないが、きっとこの世界ではそういうものも、そんなものだと受け入れられているのだろう。

肉がドロップしないのはおそらく食用不可だからだろう。蛙は少なくとも普通なら食用にできるはずだが、毒蛙は体表に毒がしみ出す過程で、身にも毒が回りやすいのではないか。自身が毒を持つことで、捕食者からの危険から身を守るのだろう。

ところが、その毒を持つ蛙すら捕食してしまう蛇が、同じ階層に住むことで、蛙が増えすぎることもないようにはなっているらしい。ただ、この理屈だとどこかに蛇を補食する食物連鎖上位の存在がいるのだろう。

その存在が蛇の毒にも耐えられる手段を盛っているのかどうかは分からない。

いずれにしても、試験用に、もう少し量が欲しい。

ギンとの相性も考えて、タラちゃんを遊撃に、ギンは威圧することで、自身に敵意を向けさせて、タラちゃんの遊撃を補佐する役割に、この階層では回ってもらう。

こうしてタラちゃんの活躍もあって、蛇のドロップも買えるのドロップも5個ずつ手に入った。

当面の検査はこれで十分だろう。

僕たちは引き上げることにした。当初の目的の第三層には届かなかったけど、蛇と蛙の存在は見つけることが出来たし、冒険者にとっての関門であるそれぞれの毒についても入手出来た。

問題はここから血清を含めて解毒剤が生成できるかどうかであるが、この場にとどまり調べるのは得策ではない。

ダンジョンからの帰りもまた、来た道を戻っていく必要があった。

ギルドのダンジョンマニュアルには、何層かごとにげえときいぱあと呼ばれるちょっと強めの魔物が部屋の中で待ちかまえているらしく、そのげえときいぱあを倒せば、その階層からダンジョン入り口まで瞬時に戻ることの出来る魔法陣というものが倒した冒険者おパーティーに解放されるらしく。以後そこを起点にしてダンジョンに再度挑戦することが出来るのだそうだ、が地下2階程度の浅瀬なら、来た道戻れや、対して進んでもいないやろ、ということらしく、このダンジョンはギルドによれば、地下10階、15階、20階、22階にそういう魔法陣?が設置されているらしい。

最高到達点は22階のため、それ以上はどうなっているのかギルドも知らないというのが正直なところらしい。

僕たちは基本的に地下2階から戻る階段の近くでしか、蛇と蛙を集めていなかったので、引き返すとなると、すぐに地下1階に戻ることが出来た。

そして、地下1階では、ギンが活躍出来なかった地下2階での鬱憤を晴らすかのように、森の中に出てくる魔物、が何なのか分からないくらいに瞬殺するので、ただただ大小様々な魔石を拾い集めていたのだが、そのほかのドロップとして、蛇だけではなく、狼、猪なんかもあったので、きっとそんな魔物も居たのだろう。

医療解剖は、僕が魔物の存在を認識していないと発動しないらしいので、ギンが倒した魔物を帰り道に拾っていくときには、皮や爪や牙と肉という普通のドロップしかなかった。

そして地下1階と地上階は、魔物と遭遇するのも面倒なので、ギンの背中にのって、魔物を相手にすることなく入り口まで戻ってきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ