エピソード91
その日は草原だけで採取していたため、それほどたくさんの薬草の採取は出来なかったが、街から離れたところには、そこそこの薬草が生えていた。
街の近くは、登録したばかりの冒険者が採取を行うのだろう。根こそぎといっていいくらい薬草を見ることはなかった。それで街から離れたところまで採取にきたのだが。
クエストの報酬は全部で銀貨9枚になった。
普通に生活する分には余裕はないが生活出来ない金額でもないが、今は宿だけで一日あたり大銀貨5枚と銀貨1枚掛かっている。朝食と夕食は込みだが、昼食は別途お金がかかるので、いくらお金が有り余るとはいえ、赤字生活は望ましくはない。まあ、つかの間の休暇だと思えば、それはそれで納得出来るのだが。
それでも、この世界のポーションによる治療のシステムには全くなじめない。何よりなぜ、草から出来た薬が傷をふさぐのか全く理解出来ないが、理解できないものはそうだと受け入れることに決めたので、関わることなくそのまま納品する。
まあ、なぜか体力草から作られるらしいHPポーションは点滴で使う栄養剤になるので、理由不明のまま使うけど。
一応、ギルドで、自分が怪我や病気の治療を行う、この世界でいう「治癒師?」らしいのですがと伝えて見る。
この世界では、怪我も病気も毒も麻痺もポーションもしくは魔法で治療する方法がしか存在しないため、物理と化学で治すというのは異質な存在でしかなく、なかなか説明が難しいのだけど。
冒険者カードには、依頼の経歴もあるが、理由なく、職員がその経歴を覗くことはないので、こちらの申告で、職員が確認したところ、ギルドマスター案件となった。
しばらくギルドのロビーで待たされた後、ギルドマスターの部屋に連れて行かれた。
受付嬢がドアをノックすると、中から「入れ」という声が聞こえる。
受付嬢に続いて僕たちも部屋の中に入る。
そう、普段はギルドの建物にすら窮屈で入れないギンもギルドマスターの部屋にまで入ることができている。
この国では、なぜかいろんな建物が大きめのサイズに付くあれているようだ。
「やあ、君がケント君か。」
僕たちの目の前にいたのは、白いたてがみをもつ獅子の獣人であっや。
「私の名はレオナルド、この街の冒険者ギルドのマスターをしている。」
「ケントです。」
「君の名前はギルド間では有名だ。かなり特殊なスキルを持っていて、特にちぎれた上でを元通りにくっつけるというのは、高位の神官でも聞いたことがない。」
「誤解がないようにお伝えしておきますが、ちぎれた腕がどんな場合でも元通りになる訳ではないです。いや、正確には元通りにはならないと考えてもらったほうがいい。最低限動かす程度につなげることが出来る場合もあるかもしれないというのが、正しい表現です。」
「ふむ、条件などは分かっているのか。」
「いえ、やってみなければ分かりません。ただ、ちぎれてから時間が経っているものは無理だということです。人の体の中に流れる血が、行き渡らないと、血の流れない部分が壊死といって、死滅するんです。そうなってしまえば、もう元通りにはなりません。」
「難しいことはよく分からないんだが、大体どれくらいまでなら助けられるんだ。」
「それも決まっている訳ではないので。えーと、何で私はここに呼び出されたんですかね?」
「君が治癒しだと自己申告したからだろ?」
「いえ、確かにしましたけど、僕は出来るだけたくさんの人の怪我や病気を治すよう、ある人と約束してこの世界に居るんです。」
「ん?世界?・・・何のことか分からんが、このギルドでも、ぜひ君の怪我を治す力を借りたいと思ってな。」
「それは別に構いませんよ。こちらとしても、そういう依頼がないか、ギルドに来た訳ですし。」
「それなら話が早い。早速なんだが、このギルドが管理しているダンジョンが会って、その中の魔物を間引きするというのも冒険者の大事な仕事なんだ。ところが、ダンジョンというのはとにかく暗いし、狭くて見通しも悪いところが多く、冒険者にとっては、いろいろな危険がつきまとい安くてな。
それでいて、ダンジョンの不深いところほど強くて危険な魔物が居るんだが、そういうところで大きな怪我をしやすい上に、街まで戻ってくるのが大変なんだ。間に合わずに命を落とす冒険者も多くてな。けど、それで冒険者が安全のために浅いところでしか魔物討伐の依頼を受けなくなると、ダンジョンの魔素の濃度が濃くなり、魔物が増え続けた結果、ダンジョンに収まりきらない魔物が外にあふれ出すのだという。
アンタレスでは実際にあふれ出た訳ではないが、浅い階層にまでダンジョン深部の魔物らしいミノタウロスがあふれていたのは、空気よりも比重の思い魔素が深部から退席し続けて浅いところにまであふれたことで、魔物の質が変化したのだろうという話だった。
まあ、実際にあふれ出るところを見た訳ではないので、「そうですか」としか言い様がないのだが。
「それで、君に尋ねたいのだが、実際アンタレスのギルドからの報告によれば、君の治療法はポーションでもなく、魔法でもなく、初めて見たということなのだが、具体的にはどうするのかな?あまり冒険者の持つ技能については詮索してはいけないのがマナーなのだが、ギルドマスターとして特別依頼を出すことに加えて、冒険者の命を預かる者として、是非知っておきたいのだ。答えられる範囲で構わないから、教えてくれるかね。」
「特殊なことをしているつもりはないのですが。たとえば、出血するのは、体の中で、血液を運んでいる管が破れるからで、その破れたところから血が外にあふれ出ないように、縫い綴じると、血管は再び体内を巡ることになります。元々人の体には傷ついた自分の体を治そうとする力があるので、その回復が早まるように、環境を整えるくらいですかね。」
「病気の方は、病気の原因となっている物が体内にあるので、それを見つけて取り除くことで、あとは取り除くために傷つけた体が、回復するための環境を整えることですかね。」
「あと、噂では、国境の向こう側にあるプロキオンの街で、死んだ人を生き返らせたという噂があるのだが、これは事実なのかね。」
「いえ、そんな話は初耳です。根拠のないデマでsね。」
「そうか、死者も治す魔法なるものが伝説にはあるのだが、実際にそのような事の出来る人など史実として聞いたことはないのでな。まさかとは思ったのだが、噂に過ぎないと決めつけるには内容が具体的でもあったので、念のために聞いてみたのだ、機を悪くしないで欲しい。」
「気を悪くすることはないのですが、噂が一人歩きして面倒ごとに巻き込まれたくはないので、むしろ根拠のないデマだと周知してもらえますと。」
「うむ、その件についてはあいわかった。それで話は変わるのだが、毒に犯された者の治療はどうじゃ。この街に一番近いダンジョンなんだが、とにかく毒を持つ魔物が多くてな。儂も含めてなんじゃが、この街ひいてはこの国は元々獣人の国だったものを、隣接するエルフの国やドワーフの国と協定を結んで、共和奥にした経緯があってな、今でも獣人の人口が多いのだ。まあエルフやドワーフも国境を廃して自由に往来が可能になったことで、この街でもよく見かけるようになったがな。そして、獣人というのは、生まれつき魔力が少ないこともあって、魔法が使える者があまりおらんのだ。強いて言えば身体強化の魔法ぐらいしか使えない者がほとんどでな。その代わり身体機能は高いので、接近戦を得意とする冒険者が多い。そうするとどうしても、毒のある魔物は苦手な冒険者が多いのだ。現にここ最近の冒険者の死亡原因の最たるものは魔物の毒によるものだ。外傷による出血多量を大きく上回る。薬草で毒の治療をするポーションも存在はするのだが、どうも効果に薄いような気がするのだ。原因なども含めて、この街に有能な治療の担い手が訪れていると知ってな、是非ともと声を掛けさせてもらったのだ。」
「正直、私には薬草によるポーションがなぜ怪我や毒に効くのかということの方が知識不足で、存じ上げないのですが、毒については、いずれにしても大切な研究テーマですので、この街に居る間に少し研究してみたいと思います。」
「おお、お願いできるか。あと、冒険者ギルドに常駐の治療も定期的にお願いしたいのだが。できれば、春から秋まではダンジョンの前に出張所を設けており、そこに診療所もあるので、できれば定期的にそこでの治療をお願いしたい。」
「一つ条件があるのですが、アンタレスの街で、ダンジョン前診療所に派遣するときの条件として、獣人や得るエルフ、ドワーフに対し差別をする冒険者の治療はしないと明言しておりました。こちらでは逆に他の種別、人間を含む、に対する差別的言動に及ぶ冒険者の治療はしません。そのことは周知徹底しておいて下さい。」
「うむ、何故そんなことにこだわるのかは分からないが、治療が受けられるだけで冒険者にとってはありがたいのだから、断られるようなことはしないというのを条件にするのは特に問題はない。」
「それで良ければ、引き受けましょう。」
「まだ報酬の話もしていないのに、即答して良かったのか。まあこちらとsてはありがたい話なのだが。これも噂通り、無欲なのだな。まあ、治療師の相場は承知して居る、1日金か1枚出すので、そのなんとかという、破れた結果wの縫い直すとか、そういう特別な方法を覗いた治療は、その中でやってもらって、なんとかという方法を採る場合には、別途その手技に応じてケント殿の提示する金額は実際にその手技を受ける者に払わせよう。ギルドはその支払いにつき冒険者の保証を行うということでよいか。」
「あ、はい。それで結構です。」
「では、準備が出来たら一度ギルドに立つ寄って欲しい。あと、準備は最低でも1週間以内には完了して、1週間後からは時々診療所に詰めてもらえるようにして頂きたい。他に亡ければ、呼び出した要件は以上だ。」
「分かりました。」
僕はギルドマスターの部屋を後にする。
プルンが、「ご主人ー、ご主人の治療の手助けは、プルンに任せてー」と頭の上でぷるぷる震える。
「くっ、我は主殿の特殊な技能については役立たずだ。自分が不甲斐ない。」ギンが項垂れながらそう呟くので、「何言ってるんだ。ギンとムート、それにタラちゃんが居るから、危険なダンジョンの中や森の中でさえも、怪我人の治療も出来れば、野営も出来るんじゃないか。プルンは治療にはなくてはならない存在だけど、それは井戸さんもセルパもそれぞれの役割があって、ミニホだって、小さい体なのに、馬車を引っ張って僕たちの移動を助けてくれるんだ。僕はみんなに感謝して居るんだよ。」
僕がそういうと、みんなの嬉しいという感情がそれぞれから伝わってきた。
どうやらこの世界では仲間には恵まれたらしい。




