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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード83


僕は唖然として目の前の光景を見ていた。ギンはいつものように襲撃者を蹴飛ばしただけで、口から泡を吹いて倒れるのは、別の理由によるものだ、兆候からして毒だろう。

敵の手に落ちるなら死ねとかいうやつなのか、思ったより目の前の出来事は根が深いのかもしれない。

戻ってきたギンに、乗せてもらってすぐに馬車の下に駆けつける。

周りにいた、全身鎧の兵士さんたちは、見るからに危険で、死にかけていた。僕はプルンに指示して、「分裂」し、それぞれの兵士たちの「止血」と流失した血の「回収」と「増血」を、僕自身は、どうやら死んじゃったらしい地面に倒れている女性の蘇生措置を試みる。

ここからの治療にギンの活躍の場はないので、ムートだけ念のため警備に残してギンは戦闘力のないミニホ達を迎えにいってもらった。

どうやら仕組みはよく分からないけど、落雷にあって心臓停止した患者と同じ状態である。

横で放心している女騎士と高齢の男性のうち、使えそうな女騎士に声を掛ける。

「ちょっと手伝ってくれるか。」

僕が声を掛けると、女騎士は我に返り、びくっとした後、僕を見て「おまえは何者だ、奴等の仲間だろう。よくも姫様を。」

そういって剣を抜こうとしたため、ムートが殺気立つ。

「ちょっと待て。僕は通りかかって、助勢した者だ。そこに倒れている黒ずくめの男達を気絶させたのはうちの従魔たちだぞ。もっとも気絶させただけなんだけど、その後なんか毒物を遣われたらしく、口から泡吹いて死んでるけどね。」

「答えになっていない。姫様をどうするつもりだ。」女騎士の警戒は止みそうにない。

「どうするって、心臓止まっちゃってるから、なんとか動かないかなと思って?」

「おまえは一体何を言っているのだ。姫様は卑怯な不意打ちでお亡くなりになったんだぞ。」

「あー、ああ、ちょっと離れたところでその光景は見たよ。もう少し早く通りがかれば間に合ったかもしれないんだけど、なんかごめんね?」

女騎士は少し警戒を解いたものの、まだ僕を胡散臭い存在として認識しているのは間違いない。

もういいや、説明していると助かる者も助からない。

僕は急いで、倒れている女性、「姫様」って呼ばれているけど、比喩だよね?、の口腔に人工呼吸用の手動ポンプに繋ぐ管を挿管する。

外側の開口部には、手動ポンプを装着したままで、首を後ろにずらして、のど元の気管が圧迫から解放されるようにして、なんどかポンプで空気を肺に送り込む。

空気の注入に合わせて胸がゆっくり持ち上がるので、肺にまで空気は達しているはずだ。

この後、心臓マッサージをするのだが、まあこればかりは説明しないとろくな事にならないような気がするけど。

「で、そこの貴女、約束は出来ないけど、僕は今からこの女性が行きを吹き返すように努力するから手伝ってくれるか。このポンプを、いーーっかい、にーーかいとこれくらいの感覚で押して、空気を入れて、出してを繰り返していてもらえるか。」

「何を言っているのだ、姫様のご遺体にいたずらすることは許さんぞ。」

「いいからやれ!」

僕は怒鳴りつけた。救急救命の現場では一秒一秒がが命をつなぎ止めるための大切な時間だ、その時間をこんな下らない言い争いで無駄にすることなどできるか。

僕の剣幕に驚いた、女騎士は、呆然としながらも、言われたことを始めた。

僕は立ち上がって、少し離れた平らな場所に、野外用オペルームを取り出す。

女騎士は驚いたようだが、相手にしているヒマはない。

僕は倒れている女性の元に戻り、両足を持ち、女騎士に「貴女がこの女性の脇をもって、持ち上げろ。今出した部屋の中に、この女性を運び、中のベッドの上に乗せる。その後は、そのポンプをさっきと同じように押し続けろ。」

もはやいちいち、何故を説明している余裕はない。命令口調でやることだけを端的に伝える。

女騎士は半信半疑であることはその挙動から十分伝わるものの、僕が目的をもって動いていることは理解できたようで、とりあえず指示に従うことにはしたらしい。もう何でもいいので、そうしてくれると助かる。

オペルームの手術台に乗せると、僕はまず、医療魔法の「ライト」を使い、女性の瞳孔反射を確認する。呼吸なし、脈なし、瞳孔反射なし、いわゆる死亡認定の三要件全て満たした状態である。

まあ分かってたけど。

僕は唖然として見ている女騎士に手が止まってるぞと指摘し、女騎士のポンプを押す動きに合わせて、心臓マッサージを開始する。

目の前で女性が倒れてから、そろそろ3分、ここから先は仮に心肺蘇生に成功しても脳に後遺障害が出てもおかしくない状況になる。

僕は、脳への損傷が進まないよう、医療魔法の「冷却」で脳を冷やす。

引き続き、心臓マッサージを繰り返すが、反応しない。

間に合わなかったか。

僕は最後の望みを、医療魔法の「電気ショック」に託す。いわゆるAEDだ。

電気を伝えるパネルは自分の手のひらになるので、傍目には誤解を招きやすい状況だが、そんなこと言っている場合ではない。

僕は女性の服をまくり上げ、お腹の上、乳房が露出しないところまで露わにする。

女騎士は一瞬唖然としたが、すぐに怒りをぶつけてくる「貴様、姫様のご遺体を辱めようというのか。その無礼は我慢ならん。この場で切り刻んでくれる!」

まあこうなるだろうなとは思ったけどね。

「うるさい、黙ってろ。そんな趣味があって、このせっぱ詰まった状況でそんなことをしているように見えるのか!」僕は怒鳴り返し、「ポンプから手を離せ。」と女騎士に命じる。

患者に触れた状態で電気パネルの出力を解放すると、接触部分を通じて、周りの人にも感電し、正常な人の心臓が停止してしまうからである。

女騎士が僕の言葉ではなく剣幕に驚いて手を離した瞬間、僕は放電する。

びくんと大きく体がのけぞり、そして手術台の上にくずれ落ちた。

そこからまた心臓マッサージを繰り返し、頸動脈に指を充てるも、心拍は回復していなかった。

そこで、今度はさらに出力を上げて、再び、ショックを与える。

そして心臓マッサージの繰り返し

「戻ってこい!まだ死ぬのは早いぞ。あんたの人生これからだ!」

僕の鬼気迫る様子に、女騎士は怯えてしばらく絶句していたが、気を取り直すと「貴様、それ以上姫様に対する暴挙は許さん。死して詫びろ。」そういって抜刀したときだった。

手術台の上の女性の肩が震え、その後に体が波打った。

僕は急いで人工呼吸器を挿管ごと外し、様子を見ようとするが、外した瞬間に女性は大きくむせ込んだ。」

「良かった。間に合った。」

僕はまくり上げた服を元に戻し、その場にへたり込んだ。



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