エピソード82
私はシャルロッテ、この国の第一王女です。最近兄たちの様子がおかしいのです。
父は兄たちに国の舵取りを任せるのが不安そう。
一番上の兄、つまり第一王子ね、は教会の後ろ盾を良いことに、自分が国王に戴冠した暁には、自分の側近を重用し、王家に権力を集中させようという野心を隠そうともしない。
父さまが、そんな息子を憂い、長兄にも苦言を呈することのできる側近を王命で就けてはいるけど、露骨に遠ざけてしまい、自分が国王になるまでの我慢だと、自分に迎合しない者への敵意を隠そうともしなくなったわ。
それに子供の頃は中がよかったはずの第二王子との関係も今ではすっかり不倶戴天、これまでにも何度か互いに暗殺を試みたなんて話しも出るくらい、仲が悪くなってしまったの。
特荷第一兄様が王太子に立太子されてからは特に。
私は父様の3番目の子供だから、第3位の王位継承権を持っているけど、第一兄様が立太子したので、婚約者を早急に確定して、嫁ぐことになるわ。
普通、王族とか貴族はもっと小さい頃から婚約者が決まるものなのだけど、この国では何代か前に、男児が生まれなくて、王位継承を男児に限定していた決まりのため、王家の血筋が途絶えそうになったことがあるの。そのときに女児でも王位継承出来ることにして、その窮地をしのいだのね。
だから、私も王位継承権を持つことになったのだけど、第3順位なんていう継承権の高さから、兄さま達に何かあったらということで、立太子が出るまで、私が他家に嫁ぐという選択肢一本に決められずにいたのね。
けど、このまま第一兄様が国王になるのは、この国の民のことを考えると、素直に歓迎できないわ。第一兄様には教会が後ろ盾にといいましたが、教会は自らの勢力の拡大と金にしか興味がないの。民の救済こそ、第一の関心事項であるべきだわ。この国の王家に生まれたものとして、このままでは民が苦しむことになるのを見捨てる訳にはいかないの。
私に賛同して、一番の理解者で居てくれるのは、王都から遠くにある辺境の貴族、とりわけ父様の弟であるパピー公爵様なの。だから、その次女が最近大きな病でもうダメだって思われてたのが、どこからともなく現れた人が奇跡を起こして、治してくれたって、まるで物語ね、でその快気祝いを口実にこれからのことをおじさまと話をしにいくの。
最近の王城はそれでなくても息苦しかったから、こうして外に出られるのは嬉しいわ。
けど、思えば兄様の陰謀は私にも向けられていたのね。お忍びだからと近衛騎士の騎士団長を筆頭に精鋭だけで構成された護衛団だけど、それでも王族の護衛としては少なめね。
専従騎士のソフィアはずっと一緒だけど、爺が一緒に来るのはなぜかしら、第一兄様の差し金?普段は同行しないだけに気になるわ。
もうすぐおじさまの領都プロキオンに着くわね。そう思ったたときなの、馬車が急に方向を変えて、大きな衝撃と共に馬車が止まったの、ソフィアはすぐに何かに襲われたことに気付いて、馬車の中で伏せて隠れるように私に告げたの、王族として、襲撃時の訓練は受けていたから、馬車の中でも、外部からの魔法攻撃にも物理攻撃にも一番高い防御を誇る王族専用の避難場所があって、そこに身を伏せたわ。
ソフィアは伝令用の小窓から、警護責任者の騎士団長とつど話をしていたけど、私には外で何が起こったのか分からなかったの。
どれぐらい時間が経ったか分からなかったけど、ソフィアが、「姫様、このままでは外の騎士たちが全員やられて、身動きとれなくなります。危険ですが、馬車から逃げるしかありません、ご準備を。」
私は王族専用の隠れ場所からはい出て、ソフィアの合図に従い、馬車を降りたわ。
ソフィアと爺が周囲から隠れるように私を庇いながら、馬車の陰に移動しようとしたのだけれど、ダメね、躓いちゃった、と思った瞬間、いきなり大きな衝撃を受けたの、これって何?あ、わたし魔法を撃たれたのね、ごめんなさい、父様、この国のために何も出来なかった、親不孝な娘で・・・
「と、父様、ご、ごめんなさい・・・」それが私の最後の言葉だった。
「姫様?姫様!、あ、あああああああああああ」
私はソフィア、近衛騎士団の団員であると同時にこの国の第一王女シャルロッテ様お付きの騎士だ。私の家は代々騎士の家系で、私も子供の頃から騎士になることを夢見て来た。
幸い、私も5歳の技能授与の儀式で剣技の技能を授かることが出来た。そのまま騎士学校を優秀な成績で卒業した私は近衛騎士団に配属になり、同じ歳の女騎士で、成績優秀だったこともあって、王女様お付きの騎士となった。
姫様への生涯の中世を騎士としてこの剣に誓ったのだ、この命に代えても姫様は守る!
そう思ってた時期が私にもありました。
「姫様?姫様!ああああああああああああ」
目の前で起こった出来事が信じられなかった。姫様を攻撃の射線から庇いきれなかった私の責任だ。
国王より拝命した王女殿下警護の命に背き、私は姫様をお守りすることが出来なかった。
家族の信頼も裏切ってしまい、今更どの顔で王都に戻ることが出来よう。
この上は死んでお詫びするしかない。
私はセバスチャン、この名前は王侯貴族に使える家宰に与えられる名誉な名前であり、私もその名前に誇りを持っている。
しかも私は、およそ家宰が望めるその地位の最上位である王族に仕える家宰である。
姫様は、幼少の頃から「爺、爺」と私に懐いてくれていた。そんな姫様もすっかり大人の女性になり、もうすぐ王家に生まれた女子の指名として、王家との強いつながりを求めるどこかの高位貴族に嫁ぐことになるのだろう。こうして爺が奉公できるのも後わずか。
そんな感慨にふけっているとき、第一王子の部屋から、高笑いが聞こえてきたのだ。その部屋は第一王子の執務室、今日は来客の予定もなかったはずなのに。
王家の家宰であると同時に王城で執事としても勤務する私は、第一王子に予定のない来客があるのは見過ごせない、来客を確認すべく、お茶などの手配を尋ねるフリをして入室しようとドアノブに手をかけようとしたそのとき
「間違いなく王女は事故に『遭う』のだな。」
今なんと?
まさかそんな、第一王子には常に黒い噂がつきまとっていた。王子らしからぬ素性の怪しい者とのつきあいがあるという噂も。
また、その地位にまつわり、第二王子と犬猿の仲であることは自身隠しもしない発言でもはや王城に知らぬ者なしとまで言える。
王女は第三順位の継承権保持者であるから、その地位を疎ましく思うのは若rなあいでもない。けど、自分の血縁である、兄妹である王女の命を狙うなど、そんなこと、今の話は何かの聞き間違いであろう、そう思いたかった。
それでも今部屋に踏み込んで引き留める訳にもいかない。王太子が自分の妹の暗殺を計画していたなんて証拠もないのに王族を糾弾するなど、出来ようはずもない。
この上は、我が身を挺してでも姫様のお命を守るのが、この身を王家に捧げた私の努め、姫様、爺が必ずお守りします。
そう思ってた時期が私にもありました。
「ひ、姫様?姫様、以下ry)」




