表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
82/96

エピソード81


町中の衛兵が少しあわただしかったことや、「この街に王女が立ち寄ったらしいぞ。」「先触れはなかったよな。」「お忍びってやつか。」「聞いてないのに、何かあったら、俺らの責任とかたまらんぞ。」というひそひそ声が聞こえたのだが、前後の文脈が分からないので、意味がさっぱり通じない。まあ通じる必要もないはずだ。

僕たちは、前に通った街道を再び進む。

途中にあるデ・カーミッツ・ビーの巣にも立ち寄る。

暖房機能付きの巣箱をプレゼントしたことで、越冬の生存率が高くなったことから、コロニーは大所帯になっていた。昨年女王だった蜂は今年も健在で、僕のことも覚えていてくれて、出来れば増えた仲間のために、もう一つ同じ巣箱が欲しいと強請られ江しまった。

「うーん、アンタレスの街に引き返して、巣箱の注文をするのは時間がかかるんだよね。もし、可能なら、ここから南に行ったところに、今僕たちが居る町があるから、その近くに一部引っ越すのはどう?

僕たちがその町に戻ったら、巣箱の注文を出しておくので、そうだなあと昼と夜が10回変わったら、街の外の街道脇に草原があるから、そこで待ち合わせして、巣箱を渡すから、それまでに、巣箱を設置する場所を決めておいてよ。」

タラちゃんを通じて、そう伝えると「わかった。」という返答があった。

未知の場所に新しいコロニーが移動するのはデ・カーミッツ・ビーにとっては本能的に当然の出来事らしい。あまりに巣箱が快適だったため、その本能を忘れそうになっていただけで、僕の提案はもともと巣箱がなければ当たり前の話だったらしい。

僕は収納にあるビートルのために買い貯めていた果物を渡して、蜂蜜と蜜蝋をもらう。

点滴用にローヤルゼリーも欲しいところだが、急遽決まったコロニーののれん分けのため、新しいコロニー用の女王のためにローヤルゼリーはもらえなかった。新しい女王が町の近くに住むようになったら、そのときそっちで渡すと約束してくれた。

デ・カーミッツ・ビーとは良好な関係が出来た。重要な取引先でもある。

蜜蝋は、油圧式サスペンションの部材であること以外にも石けんの材料として利用できる。プロキオンの町の公衆浴場は人気過ぎて、コイン式にして使用制限を掛けている石けんも、あっという間に減っていくのである。もっとも石けんの領が減るのに比例してお金が増えていくのだが。

そのお金が果物に化けて、それが蜜蝋に化けるサイクルを町の近くで確立しないと早晩に石けんは供給がなくなってしまうので、今回のビーの直面した問題とその解決は渡りに船であった。


僕たちはビーに別れを告げ、プロキオンへの街道をミニホに牽いてもらう馬車での旅にした。

急ごうと思えば急ぐことも出来るが、プロキオンの町に戻っても診療依頼が待ちかまえているだけなので、たまにはこういうのどかな旅も悪くない。

ミニホは久しぶりに自分が必要とされていると実感出来る馬車牽きに喜びを隠せないでいた。

ギンが馬車の警護で、後ろをついたり、横を併走し、ムートは馬車の屋根の上でひなたぼっこしながら、一応周囲を警戒している。

その他のちっちゃな従魔は馬車の中で銘々におとなしくしていた。

そして、僕はというと、馭者台ではなく、馬車の中の患者用ベッドで寝ていた。

なんといっても従来の馬車とは違いすぎる、揺れのない室内空間、やはりペスト感染時の長時間継続しなければならない緊張感から、ここ数日でようやく解放されたことで一気に疲れが押し寄せてきたらしい。

従魔達にお腹がすいた、と申し訳なさそうに起こされるまで、記憶がなかった。

死んだように寝ることが出来た。深い睡眠を取ることが出来た、それだけで僕の体調は元通りに回復していた。

伊達にブラックな職場に居たわけではない。

その日の晩は夜の見張り番を僕とプルンとタラちゃんとセルパで担当した。

ムートとギンは日中馬車の周りを警戒していてくれたし、ミニホに至っては、一日中馬車を牽いてくれた。

ミニホにとっては、全然軽い馬車らしいのだが、そうはいっても自分の胸くらいまでしか背丈のないミニホに普通の馬車の1.5倍のサイズを牽かせるのは端から見ていると虐待以外の何物にも見えない。

ミニホは臆病で荒事が苦手なので、夜間は馬車の後部座席を倒し、折りたたみの仕切りを起こすことで早変わりする厩舎でギンと一緒にゆっくり休んでもらう。

サイズは3倍以上違うけど、互いにもたれ合って仲良く眠る姿は可愛い。

もっともギンは寝ている間でも周囲に気を張り巡らせることが出来るらしく、見張りをしている誰よりも早く異変に気付いてしまう。

その日の晩は何もなく、朝になったらまたプロキオンの町に向けて出発することになった。


前回、野盗に襲われた場所が理科付いてきた。

なんとなくだけど、直前の野営場を出てから進む距離で、前回のことを思い出し、少し緊張する。

このメンバーで命の危険が、とかはまり感じたことはないが、襲ってくる相手に手加減がそうそう出来るものではないし、普通に命を奪ってもおとがめなしのこの世界でも、やはり人の命を奪うのは好きになれない。

前回のことを思い起こしながら、遠くを見ていたら、横を併走していたギンが「ふむ、」と突然声を上げた。

僕は馭者台に居たので、横を向いて、ギンにどうしたのか尋ねる。

馭者台に乗っている僕とギンの顔の高さが同じなのは、話をするときに首が疲れないのでちょっと嬉しい。

ギンは「以前野盗共が襲ってきた場所で、人間同士が戦っておるぞ。」と話す。

「え?襲われているとかじゃなくて、戦っているの?」

「どちらかが襲ってきたのかもしれんが、ここからでは分からんな。で、どうする主殿?」

ギンは加勢に入るのかと聞いてくる。

「うーん、このままいけば否応にも関わるのだろうけど・・・」僕はため息しか出なかった。棒が前世で何をしたっていうんだ、あ、医者だった。今世も同じだな。

「ギン、とりあえず、直接見えるところまで行って、状況次第で介入するよ。荒事班はギンに乗って先にいくよ。、ミニホはゆっくり馬車を牽いて後から来てね。」

僕とギンとムートとタラちゃんがすぐに駆けつけることにした。

プルンと井田さんとセルパは戦い向きではない。そういう意味では僕も戦いには全く向いていないし、関わりたくもないけど、僕が行かないと、ギン達に何をするのか指示が出せない。

馭者台からギンに乗り移り、格好良く飛び移りって言えない感じのおそるおそるのっそりって感じで、全員ギンの背中に移ると、ギンが全速力で前方に向かって走り出す。

本来なら風速だけで上に居る僕たちは後方へ吹き飛ばされるのだろうが、ギンの背中には何故か風圧が掛からないようになっていた。意味が分からなくてギンに尋ねても「そういものだ。」としか言わないので、「そういうものか。」と思考を放棄することにした。

非科学的であることは言うまでもない。

あっという間に前方に見えてきたのは馬車が脱輪して街道脇に停車し、その馬車を守るように銀色の鎧に身を包んだ人たちが外を向いて前に立ち、その人達を外から攻撃する顔を黒いヴェールで隠したいかにも怪しげな人たち、これはもう一目瞭然だね。古今東西、顔を隠して人を攻撃する人に善人は居ない。

ということで僕はギンとムートに先に行って馬車側の人たちに加勢するように、黒ずくめの怪しげな人たちは出来れば殺さないように無力化して欲しいと指示を出す。

念のためギンとムートには町中で付ける従魔の目印を付けてもらう。

魔物に襲われたと勘違いして、まあ勘違いは避けられないだろうけど、それでも、出来るだけ危険は避けたい。

と思っていたら、馬車を守っていた人がどんどん少なくなっていき、外に居た男性が、馬車の扉を開けると中から三人の人が出てきた。一人は外の人たちと同じように銀色ずくめで顔にも兜をかぶっていたが、続く一人はドレス姿で、いかにも守られる側ですという雰囲気の若い女性だった。偉い人が一番最後かと思いきや、最後に馬車の中から出てきたのは、タキシード姿の初老の男性だった。

多分、執事なのだろう。となればきっと名前はセバスチャンというに違いない。

それはさておき、馬車を巡る攻防戦が劣勢になったことで、中にいては袋のネズミとなるので、機を見て、馬車から脱出しようとしたのだろう。

だが、完全に想定外の出来事なのだろう、お偉いさんらしい女性とセバスチャン(仮)は、砂利道の街道を歩くには不便すぎる上品な、絨毯の上を歩くためだけに存在するようなドレスシューズのため、もう一人の全身金属の人、どうやら女騎士らしく、アナスタシア嬢にくっついていた高飛車な女騎士を彷彿とさせる、のブーツとは歩くペースが違いすぎた。

砂利道に足を取られてどこぞのご令嬢がバランスを崩したとき、ご令嬢の顔が射線上にさらされてしまった。

その瞬間を狙っていたかのように近くの高台から、一閃の光がご令嬢を貫き、次の瞬間、その女性は時が止まったかのようにゆっくりと地面に崩れ落ちていった。

僕はギンに「先に行って。」と送り出す。

ギンとムートは、いつもの調子で黒ずくめの男達を吹き飛ばし、意識を刈り取っていったのだが、その男達が意識を失って地面に倒れた後、なぜか突然口から泡を吹いて、その場で跳ね上がったかと思うと、再び動かなくなった。

ここから見る限り、何らかの引きつけを起こしたように見えるが、何かの毒物を服用したように見える。

ギンとムートはすぐに戻ってきて。「我等は主殿のいつもの指示のとおり、殺さないように気絶させたんじゃが、一人高いところにおった人間の魔力が、あの男らにぶつけられた後、奴等は死んでしまったようだ。」

と教えてくれた、が、今はそれどころえはない。

僕はギンに、先ほど突然崩れた女性のところに乗せてもらい、すぐに向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ