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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード7

ハンスさんとマリーさんを見送った後、僕たちは町に引き返す。

「今日から、また僕たちだけだね。」

頭の上のプルン、肩の上には小さくなったムート、隣を歩くギンに話しかける。

プルンとギンはこの世界に突然放る混まれた時から、ムートとはドラゴンさんたちの住処を出発したときからの仲間だけど、この世界に来てからはずっと一緒にいたから、今はもう家族の一員という思いが強い。


「とりあえず今晩から寝る場所を探さないと。」

相談する相手もいないので、一端冒険者ギルドに戻ることにした。

この町でまともに話をした相手は、マリーさんの知り合いのアンナさんと冒険者ギルドの右受付の女性とギルドマスター?さんくらいしかいない。

アンナさんに尋ねるのが無難そうではあるんだけど、マリーさんの知り合いで、自分が服を買ったことで、恩着せがましく寝泊まりを要求していると思われたら、と逆に尋ねにくかった。

ギルドに戻ると、受付の女性が、僕を見つけて呼び止める。

「ケントさんどうしたのですか?殺気の今ではまだ買取の準備は出来ていませんが?」

「あ、いえ、先日まではハンスさんの村でお世話になっていたのですが、今日からこの町に来たので、寝泊まりする場所を探しているのです。もし可能ならこちらでそういう場所をご存じかと思いまして。」

「そうでしたか。冒険者の方は、大半が宿屋で寝泊まりします。ごく一部の上級の冒険者は自分たちの活動の拠点として家を持っていることもありますが、よほど成功した冒険者でないと家を購入するには莫大な資金が必要です。あと、駆け出しの冒険者の人は毎日宿に泊まるだけのお金を稼ぐのが厳しいこともあって、広場など指定場所でテント生活をすることもあります。町の外で野営するのに比べたら、町の中ですので、魔物の襲撃のおそれはありません。もっとも盗難などはご自身で気をつけて頂く必要がありますし、丘の利用者との共同利用のマナーも守って頂く必要がありますが、利用者はそこそこの人数おられます。」

「僕は見てのとおり、従魔がいるのですが、大丈夫な宿もあるのでしょうか?」

「もちろん、従魔を連れた冒険者もそれほど珍しくはないので、従魔の帯同を可とする宿もありますが。」

「では、その宿をご照会願えないでしょうか。」

「分かりました。ギルドおすすめの従魔可の宿をおすすめします。あと、申し遅れましたが、私はリーナと言います。ケント様のような強い従魔を連れた冒険者はギルドにとっても重要な存在ですので、引き続きよろしくお願い致します。」

「あ、こちらこそ、よろしくお願い致します。けど、僕は従魔が強いといわれても戦っているところを見たことないですし、出来れば争いごとは避けてとおりたいので、あまり期待して頂くのはどうかと。」

愛想笑いをして返しておく。

宿に向かう前に解体場に寄っていく。可能であればあの大きな猪のお肉を夕飯にもらえないかと思ったのだが、さすがに殺気の今で作業がそこまで進むはずもなく、皮を剥いでいるところだった。

内蔵が全部取り出されて、いたので、どうするのか尋ねたら、穴を掘って埋めてしまうとのことだったので、引き取ることにした。

この世界の衛生自乗では新鮮な猪の内臓など手に入れる手段がなく、狩りをしたものが狩猟の現場で新鮮あものを焼いて食べるくらいしか食べることはないのだそう。

もったいないけど、変に食中毒になったり、寄生虫の被害に遭うことも考えれば正しいのかもしれないが、レバーもさることながら、腸詰めの原料が廃棄されていくのは忍びない。

それに、僕には王るんという秘密兵器があるしね。

廃棄予定の内臓を引き取ると告げて、訝しげな顔をされたけど、僕はプルンにレバーと、腸、横隔膜だけ表面についた血を除去してもらい、後は全部消化していいと告げる。

桁外れの巨体を持つ草食動物だけあって、腸の長さは異常だった。ソーセージ名子分になるのだろう?

僕はプルンに津貫してもらった肝臓と横隔膜と腸に浄化の魔法を念のため掛けた後、収納に入れておく。

ギンとムートはプルンだけ、内臓を食べた斗へそを曲げたが、後でおいしい料理を食べさせてあげるからと伝えると態度が一転して歓声を上げた。


ギルドを後にした僕たちはリーナさんに教えてもらった宿屋にたどり着いた。

大通りから外れた路地に面した宿だったが、静かなところで、雰囲気の良い建物だった。

けど、問題はすぐに判明した。

宿の入り口はギンには小さすぎたのだ。

「クーン」ギンが悲しそうな声で鳴く。

周りに僕たちしかいないところでなければ、人語を話せることは内緒にしておくと決めていたのだ。

宿の女将さんが、「従魔は裏手の厩舎に回っておくれ。」と声を掛けてきた。

「えーと、こう見えてもうちの従魔はおとなしいのですが、他に一緒に部屋に泊まれる宿とかってご存じないですか?」

僕はおそるおそる聞いてみる。

「そんんあ宿はこの町にはないよ。王都の高級宿なら知らないけどね。そんな大きな部屋のある宿なんざこの町にはないさね。いやなら別に泊まってもらわなくてもいいんだよ。」

女将さんがいらっとした感じで答える。

「あ、いえ気分を害したのであれば申し訳ありません。先日までここから東にある村でお世話になっていて町に来たのは初めてなもので、世間知らずなだけです。」

あわててそう答えると、僕たちは一端宿の外に出る。

「どうしよう?」

ギンは馬とおなじくらいのサイズで、背丈だけは馬より少し高いので、馬小屋併設の宿が従魔同伴を許容しているだけのような宿にしか泊まれないのだろう。

ギンは僕たちと一緒に寝られないことを嫌がった。

ムートとプルンがギンを説得しようとするが、ギンは駄々をこねる。

「さっきの女将さんの言葉だと、この町でギンも同じ部屋に寝泊まりする宿を見つけるのは無理だろう。今晩は仕方ないので、ギンに我慢してもらい、明日はさっきのリーナさんの言葉にあった広場でテントという選択にしよう。まだ家を買うつもりはないし、この町は僕がこの世界に来て事実上一番最初に生活を始める場所だから、この町に落ち着くなんて決断はできないし。」

僕がそう締めくくったことで、ギンはがっくりと項垂れてしまったが、渋々承知した。

ギンに限らず、従魔にとって切実な問題になるのは、僕が寝ている間に僕の魔力をエネルギーとして供給していることで、いわゆる食事は、エネルギーの補給としてというより、一緒に同じことをして過ごすことが嬉しいということに意味があるんだそうだ。だから、毎日一緒に寝なくても一けど、自分だけ離れた場所というのは寂しいということのほかに、体力回復にも支障を来しかねないという切実な問題になるんだそうだ。

そう聞いてしまうと、今晩は我慢してといってしまったことに罪悪感を感じてしまい、ちょっと落ち込んだ。

僕が俯いたので、ギンはあわてて近寄って頭を僕の頬にこすりつけ、そのままぺろりと舐める。

なぐさめてくれたんだろう。

宿は、1泊夕食付きと片泊まり(朝食のみ)と素泊まりの3種類あって、それぞれ銀貨5階、銀貨3枚大銅貨5枚、銀貨3枚だった。

僕たちはせめて食事くらいはギンと支所にするため、素泊まりを選択し、部屋番号だけ聞いて、再び町に食事に出ることにした。

日没までまもなくだったことから僕たちはリーナさんに聞いていたテント村のある広場までの散策名目で、明日以後テント泊にした場合の住環境を確認しにいった。

夕飯はテント村の周りに集まっていた屋台村で串焼きを一人3本ずつ食べることにした。

そのとき初めてしったのだが、この世界には何十年かに一回、僕みたいな異世界の人が呼び寄せられるらしく、連れてこられた人が伝えた食文化として、お米も醤油も味噌もポテトチップもピザも唐揚げもマヨネーズも存在していた。

僕は少なくとも食文化の違いに寂しい思いをすることはないかと、ちょっとだけ喜んで、焼き鳥と唐揚げの串をそれぞれの分買って、ポテトチップはみんなで食べるように、大きな麻袋1杯分買った。

僕たちは噴水の前で夕日を見ながら夕飯を食べた。

再び知り合いと呼べるだけの人がういなくなったこの世界でうまく暮らしていけるか不安は尽きないけど、今のところお金に困ることはなさそうだし、食事もそれほど苦労しなくて済みそうだし、ギンとムートはそこそこ強いので、ある程度安全だし、と頭の中でそんなことを考えていたら、プルンが頭の上で「僕もいるよー。」とプルプル震えだした。

「ごめん、もちろんプルンもね。」と謝りながらプルンをなでたら、「分かればよし。」と再び震え手串焼きを体の中に取り込んでいった。

「頼むから頭の上で語ボサ内でくれよ?」と思いながら、僕も唐揚げを口に入れ、その後、ムートとギンをなでて回った。

ギンもムートもはてな?という顔をしながらも、なでられて気持ちよさそうに体を伸ばした。

この町で新しい生活が始まる。明日は今日買われなかった生活必需品とテント村での生活に必要な物を買って、その後冒険者ギルドにも顔を出さないと。



西日が差す部屋で窓辺に立つ体格の良い男性が初老の男性から話を聞いていた。

「クリフォード様、冒険者ギルドにタイラントボアを持ち込んだ冒険者は何でもフェンリルとドラゴンを連れていたそうです。

「なんだと?伝承でしか聞いたことのない魔物だぞ、どちらも。実在しているところを見た物など、聞いたこともない。王都で密かに聖女召還の儀が行われたという噂もまことしやかに伝わっておるが、もしや魔王復活が近いのか?その冒険者はもしや伝説の勇者なのでは?」

「父上、いずれにしてもその者がこの地を訪れているというのは重畳にございます。すぐに遣いをやって、協力関係を築きましょう。」

「手ぬるいですぞ、兄上。冒険者など所詮は平民、我ら貴族に従うのは必定、協力関係などという曖昧なものではなく、我が家に従事させればよいのです。この件は私に任せて頂きたい。必ずその者を従えてこの辺境伯家の地位を高めて見せましょう。」

「ペイン、はやまるでない。フェンリルもドラゴンもいずれも一体で国一つを滅ぼすと言われた伝説級の魔物だぞ。一体ですら脅威でしかないのに、その両方を従える冒険者など、逆鱗にふれでもすれば辺境伯領が焦土となるかもしれんのだぞ。まずは、その冒険者の期限を損ねないように客人として屋敷に招くこととしよう。」

「父上の意見に賛成です。その者の力量も分からないのに、権力を振りかざそうとするのは危険です。」

「父上も兄上も手ぬるい。そんな態度で、その冒険者が増長でもしたら、意のままに従わせることなど出来ません。」

「セバス、その者の情報を早急に集めよ。冒険者のランクや素性、可能であれば女神より賜る技能についてもだ。」

「かしこまりました旦那様。ただ、冒険者ランクは10級です。ギルドよりタイラントボアの連絡を受けた折、その冒険者が本日冒険者登録した者であることを伺っております。最下級のランクの冒険者であることはギルドでも驚きをもって受け止められております。」

「なん・・・だと?」

「廷ランク冒険者であればなおさら、甘い顔をしてつけあがる前に、貴族と平民の立場の違いをたたき込んでおくべきでしょう。その者は私の私兵において、フェンリルとドラゴンは私の従魔とするよう差し出させます。まあ、最悪金貨でも渡せば喜んで差し出すでしょう。」

「馬鹿な。タイラントボアの買取だけで金貨100枚は下らないというのに。そんな金の卵を手放すはずもなかろう。」

「兄上、渡さなければ殺してでも奪い取ればいいのです。では、これにて。」

「待て、早まったまねをするな。」






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