エピソード6
ギルドの買い取りカウンターの横にある細い通路を奥へと進んでいくと、裏口に出た。
その裏口を抜けたところ、大きな倉庫のような建物の中へと続いていた。
いかにも筋肉質のごっつい男性が先頭を歩いていたギルドマスターに声をかける。
前掛けをしているが、その前掛けを筆頭に、全身血だらけでちょっとしたホラーだ。ボールドヘッドの頭に口周りに生えたひげが決して夜道で出会ったら冷静ではいられない雰囲気をかもし出していた。
冗談はさておき、
「ギルドマスター、そいつらはいったい?」
男の声がかかるよりも早く、ギルドマスターは僕と反すさんのほうに振り向いて、「ではカウンターでは狭くて出せないといったものをここに出してもらおうか?これでも忙しい身なのでな、冗談では済まされないぞ」と威嚇する鋭い目つきでにらんできた。
僕は、黙って、異次元ポケットから大乱とボア?と呼ばれているサイズがちょっとおかしないのししを取り出す。
学校の対区間くらいあった建物の半分をいのししが占めてしまった。天井にも届きそうな勢いで。
「・・・」
ギルドマスターとその後ろにいいたいかついおっさんの両方とも言葉を失っていた。
最初に口を開いたのはギルドマスターだった。
「ま、まさか、お前収納魔法持ちか?それだけでも大騒ぎになるのに、なんだこれ、タイラントボアか?もう何年も見たことがないぞ。」
「えーと、皮と牙は買取で、肉と内臓はこっちに貰えますか?」
あらかじめハンスさんや村の人にも遠慮されてしまい、大きないのししだけは全部僕が受け取ってほしいとんことだった。
ほかの一回り小さないのししだけでも十分すぎるくらいお金になるが、このタイラントボアだけは文字通り桁が違うとのことだった。もともとお金を払ってでも退治してもらうところを、倒してもらってギルドに依頼するお金もなく困っていた村を助けてもらったばかりか、村人の食料にと肉までいただいてしまい、残りの素材になる皮や牙までもらってしまい、加えて一番こうかなタイラントボアまでもらうなど心苦しくてとてもできないといわれてしまった。
僕にはこの世界に飛ばされた時点で多額のお金をある手身明日さんに渡してもらっていたし、ヴィるさんがお礼にとくれたドラゴンの財宝にいたっては金貨と銀貨以外は表に出したら騒動になる予感しかなかった。その存在を説明するわけにもいかないので、黙ってありがたく好意を受け取っておくことにしたのだ。
「肉も売ってもらえないだろうか?」
僕の以来に、ギルドマスターが悲しそうにそう口を開いた。
ハンスさんのほうを向くとハンスさんは黙ってうなづいて「タイラントボアの肉は穂いのししといっても高級品で貴族に喜ばれるんだ。めったに手に入らないし、何より脅威度3級の魔物だしな。倒せる冒険者がすくねえ。」
お金を受け取ってくれないので、肉を渡そうと思ったのだが、体よく断られてしまった。
ギルドマスターが再度懇願するような目つきで「頼む」といってきた。
「は、半分なら。」と言ってしまった。
ギルドマスターは急に笑顔になり「ありがてえ。それじゃ、明日またギルドに来てくれ。清算はそのときに。この場ですぐに清算してやりてえんだが、なんせこの大きさだ。解体も1日かかる。」
僕は預り証をもらってハンスさんとギルドを跡にしようとしたところ、再度ギルドマスターに呼び止められる。
「もうひとつ聞いておきたいんだが、お前今日冒険者登録したばかりの10級で、どうやって3級のタイラントボアなんて倒せるんだ?」
「いえ、倒したのは僕ではないので」僕はそう答えてハンスさんと再び出て行こうとすると、ハンスさんが、「それを倒したのはこいつじゃなくて、こいつの肩に乗っているドラゴンだ。俺が見たときはもうちょっとでかかったがな。それでも俺と同じくらいの背丈だったけどな。それでそのタイラントボアを一撃だぜ。目の前の光景が信じられなかったぜ。」けど、その話はここだけにしておいてくれ。こいつもあまり騒がれるのは望んでいねえ。ドラゴンとふぇんりるを銃間にした新人冒険者なんてトラブルが服を着て歩いているようなものでしかないからな。」
そうなのか?
「あーそれもそうだな。」ギルドマスターが驚いて目を見開きながらも「そ、そうか、ドラゴンか・・・」とぶつぶつつぶやいている。
今度こそ用事が終わったようなので、僕はマリーおばさんと合流するべくハンスさんとギルドを後にする。
マリーさんはハンスさんが換金したいのしし素材のお金も加えて村に持ち帰る品物の買出しに一足先に市場に足を運んでいた。
シリウスの町には何度も足を運んでいるらしく、市場の商人とも顔見知りで、ハンスさんがお金をもって合流するのをまっているだろうとのことだった。
僕は、マリーおばさんが買うことになっている服の生地のことを聞いて、替えの福と何より糸を購入したいので、案内してほしいと頼んでいた。
この世界に来てお金を出して物を買うという経験をしたことがないのと、そもそもどこに行ったら何が買えるのかということがまったくわからない。
糸については、銀の治療とトニーさんの治療で縫合用の糸がそこをついてしまったのだ。もともと救急用に準備している縫合用の糸などそれほど多くストックしているはずもない。
それでも4,5人の治療くらいは間に合うはずなのだが、トニーさんは本来なら救急治療で対応するような怪我じゃなく、がっつり手術になってしまったし、何よりギンの手術は、人とは比べ物にならない広範囲で縫合を要したため、糸がなくなってしまったのだ。
手術の縫合用の糸はその辺のものを使えばいいということにはならないし、話を聞く限り、こちらの世界に専用の縫合糸が販売されているようには思えない。できれば転用ができる絹糸、皮膚だけを縫うなら最悪麻糸でもと考えていた。
市場の端で待っていたマリーさんと合流する。マリーさんはハンスさんにどこで何を購入したかを説明し、代金を支払うように支持していく。
買ったものは、町の門の近くに荷馬車を留めてあるので、そこkまでは僕が運ぶことになっている。異次元ポケットがあるし、マリーおばさんに糸を打っているお店、仕立て屋さん二案兄してもらう御礼としてもその程度のことは何の問題もない。
マリーさんとハンスさんの後をついて市場の露天を回り、購入した品物を次々と収納していく。
塩や故障なごが目立つ。あとは、農機具なんかも購入していた。いのししの素材の売却代金は村にとっても予期せぬ収入だったので、普段であれば買えないものも購入できてありがたいと、いちいちお礼を言われてしまった。
かさばらない食料品などを買い込んだ後は、服生地を買いにいくことになった。
この世界では量販の服などは当然存在しておらず、一つ一つが手作業なので、お金を持っている人はしたてあがりの服をそうでない人は生地を買って各家庭で縫製をするとのことだった。
なので、服生地を村の人のために結構な量購入することになっていた。
僕としても縫合用の糸を補充しないとこの先同じように怪我をした人がいても治療ができなくなる。
マリーさんは町の大通りから外れた狭い路地を迷うことなく歩いていき、一軒のお店の前で立ち止まる。
「ここがお勧めの店だよ。」にかりと笑って僕の肩を叩く。ちょっといたいのもお約束だ。
「ここの店主は村から嫁いでこの町に引越してきたのさ。村にいたころから裁縫の腕はぴか一でね。値段も良心的だよ。」」
マリーさんは店の中に入っていくドアの呼び鈴が心地よい音色を奏で、僕たちを迎えてくれた。
お店にはマリーさんと同じ位の年齢の女性がいたが、マリーおばさんとは異なり、上品なワンピースを着ていた。いわく、服を売る店の店主が、みすぼらしい服装をするわけにはいかないとことで、マリーおばさんが外見より機能性を重視した動きやすい格好をしていることと同じようなものだそうだ。
「アンナ、久しぶりね。お店の調子はどう?」と店員に声をかけた。
「マリー、久しぶり、今日はどうしたの?」女性が答えた。」
マリーさんは村が魔物に襲われたこと、僕が連れている従魔がその魔物をやっつけてくれたこと、それだけでなく、その魔物のせいで困窮していた村に、お肉を分けてくれたばかりか、その素材まで村の再興のためにって譲ってくれたんだ。今日はそのお金で村のための買出しに来たんだよ。
アンナのところでいつも買っている服生地もいつもより多く買えるのもこの人のおかげだと伝える。
アンナさんと呼ばれた人は、マリーさんの話を聞きながら、村が襲われたという話のところで顔をゆがめ、魔物を従魔が倒したときいてほっと胸をなでおろし,目に涙を浮かべながら僕にお礼を言ってきた。
「僕じゃなくて、ギンとムーとがしたことですし。」と困惑しながら伝える。僕はそのときおなかをすかせて目を回していただけだしね。あんな巨大ないのししに向かっていく勇気はない。
跡でムーとが自分の体格の何十倍もあるあのいのししを一撃だったとか、聞かされても信じるのは無理だ。
マリーさんはしめっぽぴ話が苦手だからと、さっそくアンナさんに生地の注文をする。
ほとんどがアンナさんのところで出た端切れで、新品の生地はほとんどなく、会っても一番価格の低い麻の生地だった。
この世界では、どうしても植物を原料とするほうが安上がりになる。採取に危険が伴わないから、そのコストも低くて済む。僕も吹くにはまったくこだわりがないが、自分で裁縫などできないので、既製の服と下着をまとめ買いする。
マリーさんの幼馴染であるアンナさんのところでたくさん服を買ってもらおうと紹介したということだし、どうせどこかで買わなければならないものなので、僕にもまったく異論はない。
あと、もうひとつ大切な用事であった、糸についてアンナさんに聞いてみる。
こればかりは、植物由来というわけにはいかない。
体内に長時間残ると異物と認識され、炎症を起こす原因になってしまうからだ。
この世界にも絹はあるらしく、シルクモスという大きな羽を持った虫の魔物の幼虫が作る殻から採取するらしい。まんま蚕だけど、おかしいのはそのサイズで、成人男性くらいのサイズなんだそうだ。
他国から輸入するしかなく、生地は超がつく高級品で、その糸も当然高級品だそうだ。
もうひとつ、クモの糸で作る生地もあるそうで、こちらは絹ほど多角ないのは、近くの森にも生息しているとのことである。
ただ、毒をもつ種類もおおく、巨大な上に毒性の強いものは、採取も命がけであり、その分価格が極めて高いとのことであった。
アンナさんの店にも、5m一巻分しかなく、それでも金貨1枚するとのことだった。
シルクモスの糸はこの町にはまず入ってこないとも言われた。
あまりにも高い値段だったが、そうはいってもないと救えない命もあるので、背に原は変えられない。まあお金には当面困っていないし、ということで、僕はクモの糸を購入することにした。
残念なのは、糸が太すぎて、人ギンのような大きさの動物なら、血管縫合にも使えるが、人間だと血管の縫合には太すぎること、リンパや神経縫合にはおよそ太すぎて使えないことであった。
なんとか、より細い糸を捜さないと早晩手術ができなくなりそうだった。
アンナさんの店での買い物が終わると、マリーさんはに馬車で待つハンスさんに合流する。僕はシリウスの町からさらにこの世界で自分が持つ医療の知識と技術を役立てて、たくさんの命を救うという使命があるので、ここでマリーさんとハンスさんともお別れになる。
いつかまた村に立ち寄って顔を店に来ておくれと笑顔でマリーさんとハンスさんが村に帰っていくのを待ちの入り口で見送って。僕は町ノン赤に引き返した。
、




