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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード50

その後、いろいろ検討した結果、蜂蜜だと、その甘い香りに誘われて虫や獣が集まってくるので、移動手段にもつかう馬車には向かないだろうと選択肢から外れ、蜜蝋が最善の選択であるとの結論に至った。


翌日早速草原の入り口でヘラキューズビートルと待ち合わせて、蜜蜂の元に向かった。

草原はすっかり草紅葉となり、冬が間近に迫っていることを告げていた。

草原の所々に灌木が生えていて、デ・カーミッツ・ビーはその木の根本に蟻塚のような巣を作る習性があるそうだ。

見た目にも、土が盛り上がったように見えるので、巣を見つけること自体はそれほど難しくない。

僕たちは出来るだけ蜂たちを刺激しないようにゆっくりと巣に近づいていくが、それでも、30m位手前まで近づくと、蜂たちが警戒の羽音をさせながらホバリングしているのが分かる。

そこで、僕たちはそれ以上接近するのを辞めて、後はビートルと井田さんに任せることにした。

タラちゃんは、デ・カーミッツ・ビーとは被食者捕食者の関係にある。姿が見えるだけで、蜂は話が出来る状態ではなくなるだろうと、タラちゃんは、寂しそうに、草原の手前でお留守番になった。

井田さんは、蜂よりもずっと体が小さいため、蜂にとって全く脅威ではないことから、他聞大丈夫だろうということで、ビートルと蜂の療法への通訳を買ってでてもらっている。

蜂たちの警戒する羽音の中、ビートルと井田さんがさらに歩を進めると、巣の中からひときわ大きな蜂が出てきた。首周りがモフモフしている。女王蜂のようだ。

僕のいる場所からはよく聞こえないが、なにやら話をしているらしい。

しばらくすると、井田さんがちょこちょここちらに歩いてきた・

「シューキュル、キュッキューキュ」(条件があるって。)

「何?」

(シューシュッシュッシュ、キューキュルルッキュルウキュル、シューキュッシュシュー)

(蜜蝋は蜂にとっては巣の材料にするものだ。ご主人に渡すと巣の補修が出来なくなるかも知れない。これからは厳しい冬に向かうことになるから、巣の補修の心配をしなくてよい何か良い方法を考えてくれたら、渡すって。)

「うーん、巣の代わりか、分かったと伝えて。」

(キュッ)

井田さんは振り返って、ちょこちょこ歩いていった。

そのまましばらく何かを言い合ってたかと思うと、ビートルと井田さんが一緒に歩いてきた。

ビートルさんには遠方までご足労頂いたので、桃は亡くなってしまったけど、先日黒の森で収穫したリンゴを渡す。

ビートルさんは蜂蜜も大好きなようだが、さすがにここではその話は禁句らしく、蜂に敵認定されては話が頓挫してしまう。

ビートルさんに御礼をいって別れ、草原の入り口でタラちゃんと合流し、街に戻った。

巣の代わりと言われて、僕に思いつくのは一つしかない。早速工房街の木工職人のところに足を運ぶ。

松葉杖も担架も、冒険者ギルドを通じて国中に広まっているようだが、やはり、実物を見たことがある職人の強みからか、物がないと、自分の町の職人に依頼することもできないらしく、まとまった注文がアンタレスの木工職人のところに寄せられていて、嬉しい悲鳴を上げていた。

そのこともあって、僕の注文は優先してもらえるらしく、荷馬車を製作している途中だったが、さらに急ぎで、大きめの箱を作ってもらい、中に魔法陣と魔石を使って、暖かくなる程度の熱を発するような仕組みを付けてもらった。

要するに、非常に大きな養蜂箱を作ってもらったのだ。しかも前世の地球では蛹のまま巣の中で越冬するはずの蜜蜂が成体のまま越冬するらしいこの世界で、生存率を上げるため、巣の中の温度を上げる仕組みを付けている。気に入ってもらえるだろうか。

大きさはいっぺんが3mくらいのさいころ状で、側面の真ん中らへんに、入り口を付け、さらに庇と軒を入り口に付けている。庇の方を眺めにすることで、スズメバチのような外敵から巣を守りやすくしている。まあこの世界にスズメバチがいるのか、いるとしてデ・カーミッツ・ビーとは敵対関係なのか、が分からないが。あとは前世では熊も蜜蜂の天敵なのだが、果たしてあのキンググリズリーも敵対してしまうのか。

 大きさこそ、そこそこであるが、構造そのものが単純なため、外側を建築ギルドに外注することで、1日で完成させてしまった。

金貨5枚の代金は蜜蝋の値段としては高いが、市場のそれは、蜂を殺して奪い取ることによって入手されたもので、僕はそんなものをありがたがるつもりはなかった。

そんなものに需要があるとなれば、蜜蜂が虐殺されることになる。蜂蜜の入手だって、養蜂によって蜂と共生すればいいのに、蜂の巣を略奪するために皆殺しにするなど、到底容認できない。

たとえ値段が10倍になったところで、一向に構わないと思った。

次に街の外に出る機会は7日後だった。思い立ったら則行動と行きたいところだが、ギルドの指名依頼で、診療所を休むことが出来るのは7日に2日であり、基本は連続して2日、違う日に休む場合は予めギルドに休診日を3日以上前もって掲示しておかなければならなかった。

まあ、冬を越したら、街を出る予定にはしているので、そのときには依頼も終了になる予定だが。

次の診療所の休みの日に僕たちは再び蜂の巣のある草原に向かった。

ビートルに間を取り持ってもらって面識が出来たので、今度は直接話が出来た。こういうところはどこか前世の人間関係に似ている。円滑な関係を築くためには、紹介者が居た方がいい。

タラちゃんともいつか仲良くなれる日が来ればいいとは思うのだが、それは追々様子をみてからのことだろう。再度草原入り口でお留守番となったタラちゃんを置いて、僕たちはさらに巣に近づいていく。

万一蜂に襲われることになれば、ギンよりも空を飛べ、サイズも小さくなって小回りの利くムートのほうが蜂との相性が良いだろうとの判断もあって、プルンとギンはタラちゃんに付き添わせ、ムートと井田さんを連れて行く。たが、僕はくれぐれも蜂に危害を与えないように、何かあったら逃げると伝えた。

ムートは「あるじらしいね。僕たちがいれば、傷一つ負わせることはないけどね。」とため息をつきながら呟いた。

「怪我をすることよりも怪我をさせることを恐れているんだよ。」

草原は夏の最盛期には辺り一面に花が咲き乱れ、蜂たちが所狭しと飛ぶお花畑らしいのだが、秋も深まり、気温も下がりつつある今の季節は、夏の間に巣の中に貯めた蜜を少しずつ消費しながら、越冬の準備を迎える季節である。

僕たちは、刺激しないようにゆっくり、草原の背丈の低い木の下に蟻塚のように盛り上がっていた塊に向かって歩き出した。

やはり30mくらいまで近づくと、巣の周りを蜂が警戒しながら飛び回りだすが、先日の同じ相手と分かったらしく、どことなく警戒も薄めである。

僕たちは蜂と知り合いのビートルが今日はいないので、少しずつ慎重に慎重に近づいていく。

耳元に羽音が直接入ってくるくらいの距離になり、スズメバチに襲われた幼少時代のちょっとしたトラウマがよみがえってくるころ、巣の中から女王蜂が出てきた。

口の中に酸っぱい何かが逆流したのは内緒だ。

井田さんに、通訳を依頼し、収納の中から作ったばかりの養蜂箱を取り出す。

ただの立方体ではなく、箱の中にも、足場になるように梁を通しており、いくつかの階層に分けて、居住区域や幼虫の寝室などを配置できるようにしてある。

僕は地面に平起きすると、蜂たちに、確認するよう提案する。井田さんが何か足をこすりながら出している音はきっと蜂たちへの説明だろう。

「シューシュシュキュキュ」(分かった。安全だろうなって)

「信じてもらうしかないけどね。」

井田さんが僕の言葉を説明したのだろう。いきなり女王蜂ではなく、まず先ほど巣の周りを警戒しながら飛んでいたうちの一匹が、入り口から中に入っていく。

他の蜂はおそるおそるのぞき込んでいるが、しばらくすると、興奮したように出てきて、その後、女王蜂が入ると、他の蜂たちも我先にと入っていった。

そのままいつまで経ってもうんともすんとも言わなくなってしまったので、さすがに僕は焦って、箱をノックした。

すると、最初に見張り担当の蜂が何匹か出てきて、そのうち一匹が中に入って、その後女王蜂が出てきたと思ったら、食い気味に、こちらに飛んできた。

(ありがとう、ありがとう、約束は守ろう。今から私たちは、こちらに引っ越す。古い蜂の巣は君たちの物だ。あと、巣を引っ越すにあたり、蜜も少し残しておこう。好きに使ってくれたまえ。もらったあの巣は中が暖かいぞ。冬を越すのに、大量の蜜がなくても、暖かさが続くなら十分だ。ところであの暖かさはすぐに終わる訳ではないだろうな。って言ってる。)

すごい勢いで羽の音がブンブンブンブンしていたので、ちょっと怖かったけど、井田さんに一生懸命話をしていたらしい。

中の熱は魔石に込められた魔力で発しているから、熱が下がったり無くなったら新しい魔石を使って。とりあえず、今つかっているのはミノタウロスの魔石だから、半年くらいは持つけど、その先は自分で調達して。僕らはもう近くにはいなくなると思うから。」

井田さんを通じてそう伝える。僕たちは次の夏前には居なくなるという説明のところで、ちょっとがっかりしたようだったが、魔石の調達については、魔物同士の戦いで放置される魔石や、襲ってくる別の蜂を返り討ちにしたときに手に入るらしい。まあミノタウロスほどの魔力はないので、次の冬に向けてはいくつか用意しないといけないらしいが。

まあ、最悪魔石がなくても、今より条件が悪くなるわけでもなく、元通りになるだけなので、魔石があれば安心して冬を越せる暖房機能付きの巣が手に入っただけでもありがたいとのことだった。

僕たちは、灌木の巣と反対側に穴を掘って、側面の入り口付近が地面近くに来るように箱の半分くらいを埋め、巣箱を設置した。

巣の中にいた蜂全員が、蛹となった蜂の子を新しい巣箱に移し、続いて蜜を球状にして新しい巣箱に運んでいた。蜜蝋も一旦溶かして、球状にして運び出し、新しい巣箱の中で部屋の壁や足場などを作っているらしい。一連の作業は昼過ぎくらいまで掛かっていた。

僕らは作業の邪魔をしないように一旦草原の端まで戻ってタラちゃんたちと合流し、ピクニックを楽しんでいた。

終わったら呼びに来てくれるらしい。

お昼ご飯を食べ終わり、みんなで草原に転がってお昼寝していたところに、一匹の蜂が呼びに来て作業が終わったことを教えてくれる。

こうして僕は油圧式サスペンションの緩衝材を手に入れることが出来た。


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