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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード42



せっかくの里帰りなので、ムートはヴィル酸と一緒に親子水入らずの時間を過ごしてもらうべく、僕とそのほかの従魔達は野外オペルームを広場に設置して、そこでこんばんは野営することにした。

他のドラゴンから、自分たちの洞窟へと招待があったが、ドラゴンさんの寝返りに舞い込まれたら普通に死ぬかもしれないので、僕たちは僕たちだけで寝ますとやんわりお断りをいれる。


翌朝、一泊二日の里帰りが終わり、竜の郷を離れることになって、僕たちは、元の大きさに戻ったムートの背中に乗ろうとした。

すると、見送りで居たヴィルさんはムートをしばし眺め、「ふむ、ケント殿しばし待たれよ。」といって、ムートに近づくと、腕を伸ばし、その手をムート頭の上に置き、目を閉じる。するとムートの体が突然強い光を発し、僕は目を開けていられなくなる。

しばらくして強く綴じたまぶたの隙間から漏れ入る光が弱くなったことを感じ取り、おそるおそる薄目を開けて見る。

するとそこに居たのは、真っ白な、純白と言ってよいであろうムートの姿があったのだった。

「へっ?一体何が?」

奥は驚き過ぎて頭の中に浮かんだ疑問がそのまま口から出ていたことにも気付かなかったが、僕の独り言を聞いたヴィルさんが、「我等エンシャントドラゴンの中にも何代かに一度、今のムートのように純白のドラゴンが生まれることがあると伝え聞いたことがある。もちろん我も見るのは初めてのことだが。

生まれてから、我の傍に居たときはそのような兆候は全く無かった。おそらくは我等ドラゴンさえも凌駕するケント殿の魔力すら枯渇寸前になるまで、惜しみなく与えて頂いたあの日に、ムートの生まれ持つ魔力のほとんど全てが、アストレアス様、アルテミアス様の両加護を持つケント殿の魔力に置き換わったこと、その後もずっと傍でその魔力を体内に取り込み続けたことで、おそらくは今の様に変わることが出来たのだろう。

これについても、ケント殿には感謝しかない。我が子ムートは我等エンシェントドラゴンの中でも歴代最強と呼んで良い力を手にすることになる。その強大な力をムートが間違った方向に用いないためにも、これからもムートを指導してやってはもらえぬか。」

ヴィルさんはそういって僕に頭を下げる。いやいやドラゴンに頭を下げてもらうほどたいそうな人間じゃないから、僕は。

それを見たムートも嬉しそうに「うん、僕はあるじとずーっと一緒に居る。あるじの魔力は幸せな気持ちになるんだ。」とヴィルさんに胸を張って応じた。

「うむ、息子よ。ケント殿に受けた恩はくれぐれも忘れるでないぞ。時々はケント殿を連れて遊びに来い。」

そして僕たちは竜の郷を離れ、アンタレスの街に戻って来たのだった。


ダンジョン遠征以来、気の休まる日は一度もなかったが、ドラゴンの定期検診から、少しずつ、心にゆとりが持てるようにもなった。ダンジョンで治療した人たちは、ダンジョン前の診療所から、ゆっくり街に運ばれた。

内臓破裂の悲観じゃだけは、動かすのは危険ではあったが、ダンジョンから魔物が溢れる寸前だったこともあって、状態が落ち着いたかどうかをギルドが確認し、危機が去ったと確認できるまでは、ギルドの命令によってダンジョン探索が禁止されたことから、ダンジョン前のギルド支部も一時休業になり、患者だけを放置する訳にはいかなかった。

内臓破裂患者もさることながら、左足を骨折していた女性も移動の馬車が揺れるたびに激痛に襲われていたらしい。

馬車が揺れるのは知っているが、サスペンションはないということなのだろう。もっともサスペンションでもダンプのようなバネ式のサスペンションでは、元々の積載重量に対し、軽装の成人女性一人の重量が増えた場合と重装備の男性4人を搬送しなければならない場合とで、サスペンションの堅さをどちらかに寄せなければならない。その場合もう片方はサスペンションの意味をなさなくなる。重い方に合わせれば、サスペンションが堅すぎて、搭乗人数が少ない場合には道路の段差を細かく拾ってしまい、振動についてはほぼ改善されない。かといって軽い方に合わせてバネを柔らかくすると、普段は静穏が確保出来ても、人数が増えるとバネが縮みきってしまい、道路の段差をそのまま伝えてしまうことになる。

救急車も採用する油圧式サスペンションがあると、振動が致命傷になりかねない患者も安全に搬送できるようになる。

どちらにしても、必要であることは間違いないけど、技術的に可能かどうかも自分が作る訳ではないので、聞いてみないと分からないので、一旦妄想はここまでとする。



一方そのころ、とある場所では、

「なんという失態。何のために聖騎士が居ると思うのだ。神官の護衛のためだぞ。その派遣の金も含めてギルドに請求しておきながら、同行させたのは夜伽のための愛人と専属の料理人だと?それで、ダンジョンに魔物が溢れたとの報せに、誰よりも先に逃げ帰ってくるとは、教会の権威は丸つぶれではないか。枢機卿の資格とは、ミドルヒールが閊えることだけではないのだぞ。冒険者ギルドには、来年以降のダンジョン遠征への派遣は見合わせたいとの連絡も来ている。さらには、教会が冒険者に請求する治療費の半額をギルドが保障する制度も見直すとの連絡が入っている。そうでなくても、神官の派遣料を値上げしたことにより、今年からギルドより派遣依頼の人数まで一人に減らされたというのではないか。そもそも何故値段を上げる必要があったのだ。おまえ一人のせいで、教会の損失がどれほどか、理解しているのか。」

窓から入る日の光が逆光になって、もう一人の男の顔は分からない。その口調からして、その男の顔を直視出来ず、俯いて脂汗をしたらセル「暴食」の大罪については完全に有罪であろうデプリは震えながら「お、お許し下さい。私は私腹を肥やそうとしたのではなく、教会のためを思って。何より治癒の出来るものは我等神官より他におらず、冒険者ギルドなど、我等の言葉に従うより他にないはずだったのです。」

「おまえは鏡を見たことがないのか、おまえの私服は十分すぎるほど肥えておるではないか。しかも、その「はず」というのは一体なんだ。希望的観測でしか結果を語れないような杜撰な計画を承認した覚えはない。聞けば、ダンジョンにあふれかえった魔物はたった一人の冒険者に制圧されたというのではないか、その程度の危難に、真っ先に逃げ帰ってくるとは情けない。」

「恐れながら、たった一人とは申しますものの、その男はドラゴンとフェンリルを従えておるのですぞ。スタンピードに派遣される王国兵全てを合わせた戦力より上ではないですか。」

「ふむ、その男の噂は確かにこの私の耳にも届いてはあるが、そもそもドラゴンにフェンリルというのも眉唾ではあるのだぞ。しかも、聞けば、その男は我等が法皇にもなしえない欠損した四肢を復元するというではないか、神官に有らざる物が、神官以上の奇跡を起こし、人臣の心を掌握するなぞ、到底認められん。これは我がアストレアス教の危機と汁がよい。この男はおまえの責任において、教会に仇を成さぬよう善処せよ。」

「善処といいますと、具体的にどうすれば。」

「そんなことはその足りない頭で考えろ。この支部の上納金が減っていることに法皇様はいたくご立腹だ。速やかに対処しろ。まあ、できぬということであれば、是非ともと名乗りを挙げる枢機卿候補も枚挙にいとまはないが・・・」

「いえ、私めが速やかに結果を出してご覧にいれます」デプリはあわてて男の言葉を遮る。

「威勢はいいが、言葉だけにならぬようにな。」

しばらくしても、継がれる言葉はなかったので、おそるおそるデプリが顔を上げると、教会の礼拝堂の奥の小部屋には、デプリ以外の人影はなくなっていた。

「おのれ、何故ワシがこのような屈辱を、全てはあの冒険者が教会に所属もせずに神官のまねごとをするのが元凶であろうに。ふむ、神官のまねごとをするあの男を神への冒涜として処罰し、免罪と引き替えに、教会のために尽くさせてやろう。合わせてドラゴンとフェンリルの力もワシのものにすれば、次の法皇の椅子はワシのものだ。グエッヘッヘ。」

その後しばらく教会の奥に、ガマガエルが車にひかれたような醜いしわがれた笑い声が響いていたという。




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