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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード24

そんなときだった。

耳の中に、「シューシュー、キイ」という不自然な音が飛び込んで来た。

音に吊られて反射的にそちらを向くと、すぐ側の木の枝の間を張り巡らせるように蜘蛛の巣があり、そこに小さな小さな蜘蛛が掛かっていたのだった。

「あれ?蜘蛛って自分の巣に自分で引っかかることあるのか?」

まあ実際には、蜘蛛は自分の巣の上を移動するのに、粘着性のない糸を織り交ぜて移動用にしているらしいが。

と、下らないことを考えながら、小さすぎて蜘蛛の麻痺毒採取には向かないなーと先いに進もうとして、はたと気付いた。

(そういえば、麻酔薬だけじゃなくて、縫合糸の細いやつが手に入らないんじゃん。)

目の前でもがく蜘蛛のサイズからすれば、この蜘蛛がもし糸を生成することが出来るなら、神経縫合用の糸が出来るかもしれない。

サイズ的にはハエトリグモみたいに蜘蛛の巣を作らないタイプの蜘蛛かもしれないけどなーという思いも無きにしもあらずだが、このまま目の前の巣の主に食べられちゃったらその辺検証も出来ないので、とりあえず、採取のために手にもっていたメスで、周りの糸を切って、動けなくなった蜘蛛を巣から外した。

ちょうどそのとき、近くの葉の陰から大きな蜘蛛が出てきて、見るからに怒りで興奮した状態で僕たちに向かってきた。僕は、異次元ポケットから昨晩揚げて、この後昼に食べる予定にしていた唐揚げを2個、蜘蛛の巣にくっつけて、「ごめん、巣から外した蜘蛛は君の餌のはずだったよね。僕は、この蜘蛛にちょっと用事があるんだ。代わりに倍のサイズの肉を渡すから、これで勘弁してくれないかな。」と目の前の大きな蜘蛛に伝えた。

言葉が通じるはずもないとは思うが、目の前の蜘蛛はそのまま蜘蛛の巣に貼り付けた唐揚げを食べ出したので、大丈夫だろうと判断し、その場を離れてさらに進むことにした。

助け出した小さな蜘蛛は体中に蜘蛛の巣が絡まっていて動けない状態で藻掻いていたが、糸を外す細かい作業をするには場所が悪いので、「溶かしちゃだめだよー」とプルンに伝え、プルンがいつも入っている肩掛け鞄の中に入れておいた。

プルンには代わりに出てきて頭の上に乗っている。ムートが肩にプルンが頭の上に乗ると、さすがにちょっと重たいが、それも楽しいので全く気にならない。


と、ようやく耳にも水音が聞こえてきたところから、さらに歩くこと10分くらいでようやく滝の前に出たのだった。


滝壺の前の開けた場所に出ると。出来るだけ平らなところを探し、地べたに座る。

収納から、プルン達の皿をとりだし、昨晩の唐揚げを盛りつける。

全く同じメニューでは飽きてしまうので、とりあえずの分を出しておき、昨日作り損ねたマヨネーズを作りたいところだが、先ほど唐揚げと引き替えに救出した小さな蜘蛛が身動きとれない状態のままなので、糸を外すのを優先しないと。

僕は手術用のハサミを取り出し、慎重に、蜘蛛の体を傷つけないように、特に足を切り離さないように、少しずつ巻き付いた糸を切り、フォーセップスで摘んで剥がしていく。

そして作業をしながら、「助けたお礼といってはなんだけど、細い糸が欲しいんだ。」と頼んでみる。

蜘蛛は足と胴をこすりながら、キュイ、シュッ、キュイと言葉なのかただの音なのか分からない反応をする。

これは期待薄かなと思いながら、糸を全部外した。

ところが、小さな蜘蛛は逃げるでもなく、その場で小刻みに揺れた後、体の向きを変えて、僕のほうに頭を向けた。

言葉が通じないので、何をしたいのかがさっぱり分からないけど、お昼時でもあったので、蜘蛛が何を食べるのか分からないが、先ほどは目の前の小さな蜘蛛の代わりに唐揚げ2個を置いてきたから、この蜘蛛も唐揚げ食べるのかな?との考えが浮かぶ。

試しに1個、目の前に置いたところ、飛びついたが、大きすぎて食べにくそうにしていたので、手に持っていたハサミで唐揚げを細かく刻んで置いた。すると今度は勢いよくかじりついていた。

僕は横目でそれを身ながら、食べ終わったらでいいから、細い糸吐きだしてくれないかな、と思いながら収納から、油、卵、酢を取り出す。ボールに卵と油を入れて、医療魔法「攪拌」で一気に乳化させる。龍馬法はこの世界に来るときにアルテミアス様に頂いた特殊技能で、剣と魔法のファンタジーな世界であるこの世界を十分楽しみ、かつちょっぴりお願いも聞いて?と言われて前世ほど医療技術の進歩していないこの世界で、前世の医学知識に基づく医術を補完するために、魔法技術で説明出来る範囲で医療に応用出来る魔法の能力を授かった。

攪拌は薬効成分や点滴用の水溶液を均一化させるために必要な技術で、風属性の上級魔法サイクロンという拘束で旋回する風を生み出す魔法を、出力を専用の容器のサイズに限定し、同時にダウンバーストを生じさせることで、本来のサイクロンが対象物を巻き上げることを目的とした魔法であるのに対し、攪拌は中身が容器から飛び出さないように上から気圧を掛けて押しつける魔法である。すなわち、同時に似方向への力の作用をもって空気の流れをコントロールする精密な魔力操作が要求され、上級魔法とされるサイクロンよりも、操作の難易度は高いのだが、他社を攻撃する魔法など要らないと突っぱねたことで蔵久健斗、つまり僕は「攪拌」の魔法は使えても「サイクロン」は閊えない。

ムートが心肺停止した時に心臓マッサージのための「AED」はメカニズムが「ライトニング」であったとしても、手のひら2つが触れていて、かつその2カ所の間に通電する物質が存在して初めて可動するが、手を離れて空間を移動する、いわゆる放出系の雷属性の魔法として使用することは出来ない。

それでも、端から他人を傷つけることなど望まないので、医療限定魔法で十分である。

実際調理にも応用できるし、攪拌を使うことでマヨネーズだけでなく、カスタードクリームもベシャメールソースもだまになることなく、短時間で完成させることが出来る。

達成感と共に、マヨネーズをボール一杯完成させた僕は、プルン達の空になった皿に、追加のからあげをマヨネーズで和えて盛りつけた。

プルンはいつもなら皿の上に飛び乗って、そのまま体内へ消化していくのに、触手を伸ばしておそるおそるつついており、ギンは鼻を近づけてにおいをかいでいた。ムートは特に嗅覚が優れている訳でもなければ、プルンのように触手もないので、踏ん切り着かずに皿の前に口を近づけたり遠ざけたりしている。

一番最初に食べた野は、プルンだった、つついていたが、少しずつ体内に取り込んだところでプルプル震えると「おいしーい」と叫んで、いつもと同じように皿の上に飛び乗り、揺れながら消化していった。

それを見たギンもムートも意を決したようにかぶりつくと、突然動きが止まり、目が大きく開いたとおもったら「うまいー」と叫んで後はいつもと同じように一心不乱に唐揚げを口の中に流し込んでいった。

棒は「ふふん」と鼻を鳴らしながら、唐揚げのマヨネーズ和えを箸でつまんでかじりつく。味付け濃いめなのでご飯が欲しいところだが、あいにくご飯は炊いてなかった。


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