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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード23

翌朝、山の端から昇る朝日を浴びながら僕たちは草原を黒の森に向けて駆けていた。

位うちにテント村を抜け出し、夜明けと共に開く街の門を出ると、そのままギンに乗って一直線に森に向かう。

昨晩は、共同炊事場で作っていた料理を買い取ろうと、何人もの冒険者がオペルームの前で待機していたらしいが、防音完璧の室内では全く気にすることもなく、爆睡することが出来た。

ギンとムートは外の気配に気付いていたようだが、外部からの侵入は不可能に等しい結界のおかげ気にする必要もなかった。

もちろん僕は一切気が付かなかった。

途中の草原にも薬草は生えているが、稀少な植物が自生している森の中での採取時間を最大限確保するために、草原の草木には見向きもしない。

その甲斐もあって、日の出と呼んで差し支えない時間に森の入り口についた。

森の浅いところでは、「ダイバー・シティ」の人たちが受けていたクエストの対象のフォレストボアや森狼などが棲息していることになっている。

だが、これらの野生生物は、常時弱肉強食の環境に生き、自分よりも強者であるものの存在には敏感である。

つまり、ギンとムートの気配を察知して、滅多なことで近づいてこないので、僕はじゃまが入ることなく採取に専念することが出来た。

おおよその植生条件をギルドで教えてもらったので、周囲の地形から、分布が予測される場所に当たりを付けて念入りに調べる。

蜘蛛や蜂や蛇は、正直行き当たりばったりで遭遇するしかない。

ドラゴンの棲んでいた山のように標高の高いところであれば、気温も低く、植生も変わってくるが、まだ夏の真っ盛りで、キノコの季節には早いかも知れない。

標高のない黒の森では、日光が当たらず、日陰になりやすいところや、洞窟など年間を通じて気温が上がりにくい場所などがキノコのような菌類の好む場所となる。

もちろん、湿度の高いところを菌類は好むので、地形や周辺に皮や沼、湖などがあるかどうかということも広い森を効率よく探索するときに要求される前知識である。

僕たちはまっすぐ森の奥を目指した。

浅いところはともかく、森の奥深くまで行くと、踏み跡もなく、迷いやすくなる。

日光が入るところなら、太陽の位置である程度森の入り口だった草原の方向は分かるが、ギンとムートが、帰り道は把握出来ているので心配ないと伝えてくるので、僕は何より麻酔の原料となる成分を持っていそうな植物を探す。

ギルドの採取依頼の定番である、体力草、魔力草、傷なお草、毒け草は草原よりも背丈の高いもの、葉の色が濃く、枚数も多いものが多かった。

品質が上なのかな?なんとなく良いものそうだということは感じても、草原の採取依頼と森の中の採取依頼の区別がないので、違いが分からない。

僕は薬草の採取にも使うメスを取り出して、地上から指一本分の高さで茎を切り取る。

根は薬効成分が含まれていないようなので、無駄に根まで掘り起こさず、すぐにまた生え揃うことを願う。同じ理由で一つの群生につき半分程度は葉も残しておき、生え替わりを促進するように配慮する。

 けれど、目的の麻酔の原料となりそうな植物はなかなか見つからなかった。

まあ、こういうのは、欲を出せば出すほど見つからないのがお約束なので、まずは、この世界に来てから何かとあわただしかった毎日がようやく落ち着いて来たことに緊張感を解いて、今のこの時間を楽しむことが出来たらいいんじゃないか、 と気持ちを切り替えることにした。

転機が訪れたのは、倒木の日光に当たらないほう、つまり木陰に待望の毒々しい赤色のキノコを見つけたことだった。

前世のベニテングタケに似た、いかにも「毒キノコです」と自己主張しているそのキノコは薬師ギルドで教えてもらった幻覚作用のある毒キノコで、今日の目標の一つでもあった。

生えていたのはたった一本だったが、僕が飛び上がって喜んでいたら、「主殿、そのキノコは毒があって食べられないのに、なぜそんなに喜んでいるのだ。」とギンが不思議そうに尋ねてきたので、これを探しに来たと説明したところ、ギンは顔を近づけて、僕の手の中にあったそのキノコに鼻を近づけると、「ふむ、特徴のある臭いだな。」と呟くと、当たりを見回したと思ったら「主殿こちらだ」と言って走り出し、近くの藪をかき分けて進んだと思ったらすぐに立ち止まり、その場で僕の方を向いて、「我の足元を注意して見てくれ」と言ってきたので、後に続くと、そこには先ほど同じ赤いキノコがあった、

そこからはギンの一人舞台である。次々と赤いキノコの生えている場所に誘導してもらった。

そして、何本目かの赤キノコの採取のとき、そのすぐ近くに、「白い死の天使」と呼ばれるキノコも生えているのを見つけた。

毒性が赤いキノコよりも皿につよく、猛毒とまで言われるキノコであるが、その毒の成分は赤いキノコと同じであり、毒性が皿に強いため、少量で致死量となるというものである。

これも、麻酔薬の候補であった。

結局赤いキノコを12本、白いキノコはそのときだけしか見つからなかったので1本だけを採取し、体力草や魔力草、傷なお草や毒け草は見つけるたびに採取して異次元ポケットに放り込んでいたので、ギルドに戻って提出するときに取り出して数えればいいと思っていたので、大量にあるということ以外は分からなかったが、1日目前半の成果としては十分過ぎた。

そこで僕らはお昼ご飯を食べるために、良さそうな場所を探すことにした。

するとここでも、ギンが、「向こうに滝の音が聞こえる。そこで蛭ご飯を食べたい」と言ってきた。

全く異論はない上、日も高く昇るにつれて気温も上がってきたので、暑い時間帯は滝壺で水遊びするのもいいなと思ったのだ。

麻酔薬が無くなってしまったことに焦る気持ちがないと言えば嘘にはなるが、結局前世の薬など無尽蔵にあるものではない。いつかは無くなるのだから、どうにかしないといけないのは間違いないのだ。

言っても、忠誠の時代に逆戻りしたかのようなこの世界の医学では、最悪麻酔なしでの手術も覚悟しないといけない。場合によっては手術台に手足をくくりつけて動けなくする枷を付けることも検討せねば。

いかんなー、弱気になって思考が現実逃避を始めている。

僕たちはギンが示す滝の方向に向かって歩き出した。

ギンの口ぶりでは、近くにあるような感じだったものの、実際に歩いてみると一向に目的地につく様子がなく、30分くらい歩いたところで、「ギン、本当にこっちであっているのか?」と聞いてみた。

「うむ。もう少しで着くぞ。我の背中に乗ったらもっと早くに着いたのだが。」と答えが返ってきた。

ぎんの背中だと貴重な植物を見逃すかもしれないので、時間が掛かっても森の中は歩いた方がよいと思っている。


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