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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード20

あの後、翌々日にギルドから連絡があって、可能であればその二日後にギルドに足を運んで欲しいとのことだった。

呼びに来てすぐに来いとかでなかったことに好感を覚えたので、ギルドからの使者には肯定の返事をしておいた。

しばらくはルフィーネに何かあった場合に備えて街中に待機していなければならなかったので、食料品の買い物を中心に街の散策をすることにした。


そして、ギルドマスターに呼ばれた当日、僕は冒険者ギルドの応接室にいた。

好々爺のようで、どこか気の抜けない凄みをたたえていた。

「まずは、来訪の要請に応じてもらい、感謝する。儂が当ギルドのマスターをしているアルフレッドという。元々お主に来てもらったのは、黒の森での冒険者パーティー「英雄の集い」の悪行について聞き取りする程度の話のつもりでおったのだが、その後ギルドの職員に話を聞いたり、アーサー達の犯罪の処理で冒険者パーティー「ダイバー・シティ」に話を聞いているうちに、お主の特殊な技能に興味を持ったのじゃよ。」

蕩々と話を進める目の前の老人に、僕は面食らっていたが、最後の方の技能に興味があるというのは、意味が分からず、また何か面倒ごとに巻き込まれるような予感がして、落ち着かなくなった。

「お主、ダイバー・シティの大けがした冒険者を治癒させておったが、その技術は一体どこで培ったのだ。」

ギルドマスターに尋ねられたが、まだなぜ、そのようなことを聞かれているのかが理解出来ない。

「ふむ。質問を変えようか。お主は今までどこで生活しておったのだ。」

困った。聞いている方は簡単に答えられる質問のつもりでしているだろうが、こことは違う世界から来ましたとはとても答えられない。良くて気が狂っていると、下手すれば危ない人と思われるだけである。どっちに転んでも楽しい未来が想像できない。

「えーと遠い国に住んでいたのですが、ある時気が付いたら山の中に一人いました。」

嘘ではない。大事な部分を全て省略して、別の話に聞こえるようにはなっているが、嘘は言ってない。

出自の説明に困難を来すことは最初に聞かれた時に痛感しているので、そう答えることにしている。

「ところで、胸呼ばれた理由は何です。いろいろと詮索されるのは愉快ではないので、理由もなく取り調べを受けるのであれば失礼しますが。」

僕は警戒半分、怒り半分に不信感を露わにする。

「ああ、すまん。受け取り方によっては、尋問に聞こえるな。気分を害した野であれば、お詫びしよう。そこで本題なのだが、実はお主がダイバー・シティの、それも特に死を待つしかなかったはずのルフィーネの大けがを治療し、その一命を取り留めさせた技法はそこそこ生きているはずの儂も全く知らぬものなのでな。一体どうやってその技術を身につけたのかというのが不思議なのだが、まあその方法はさておくにしても、承知しているであろうが、冒険者というのはクエストと呼ばれる依頼を受け、成功させることで報償を得て生活することを生業としている。当然命がけの仕事で、怪我など仕事の一部だと行っても過言ではない。その治癒方法と言えば、多くの場合、軽傷を治療するポーション、体力を回復するポーション、一部の毒に効く解毒剤と、あとは神の奇跡と呼ばれる治癒魔法もあるが、ポーションで直せる傷よりももう少し深い傷を治すことが出来るが、失った血を回復するなどという奇跡を起こすことは不可能で、しかも治癒魔法を使える者は非常に数が少なく、ほとんどが教会の高位の神官として教会が囲ってしまい、その治療費は魔法一回につき金貨1枚から、となっており、およそ冒険者が利用できる内容ではない、」

目の前の男性は、そこまで言えば分かるだろうという顔つきでこっちを見るが、この会話が一体どこに向かっていこうとしているのか、僕には全く分からない。

「ルフィーネの怪我など、そもそも教会では直せないし、直せたとすれば、その費用は金貨100枚でも利かないくらいになるのが、この世界の常識なのだ。それをお主は、素知らぬ顔で治療を施し、彼らが蒼い顔で思い詰めたように、代金は一生掛かっても払うと言っても、無理しなくていいと逆に返す始末、彼らが面食らっていると同時にお主を神がこの世に降臨したかと話しているのは知っているな。」

・・・知らんがな。

金貨100枚って1000万円?そんなにする分けないじゃん。まあ、もう前世から持ち込んだ麻酔薬が底をついてしまい、縫合糸もスパイダーシルクで代用出来るのは、主要の血管と体表を縫い合わせる分で、血管でもちょっと先端に向かって細くなると厳しい上、神経の縫合は100%不可能である。

これらの物資が底をついたら外科手術など到底出来なくなる。

消毒剤は幸いにして医療魔法なるまるで都合に合わせて創ったかのような魔法の浄化で代用が効くのだが、残存し続けるものというのは全く代用が利かない。

「金貨100枚などぼったくりでしかないでしょ。まあ増血が出来るのは僕にも説明出来ない従魔のプルンの技能で、代用が効かないものですので、プルンが力を貸してくれているので、出来るだけですが。後は傷口や血管を縫い合わせる糸や、特殊な薬が必要ですが、薬自体値段が高い訳ではないですが、同じものはもう手に入らないので、何時までも同じことが出来るかどうかは未定というより今のままだと無理ですね。」

「なん、だと?」目の前の老人は目に見えて動揺し出す。

「いや、本日来てもらったのは、お主のその特異な技能を冒険者のために発揮してもらえないかと頼むためなのだ。お主が5級以上の冒険者なら強制出動という方法も閊えたのだが、何故お主は6級なのだ。シリウスの町の冒険者ギルドにタイラントボアの解体を持ち込んでいるであろうに。あれは危険度3級の魔物じゃぞ。儂の権限で3級に上げてやるから、とりあえず5級昇格の条件である対人戦闘の経験を求められる護衛依頼を受けてみてはどうか。」

そう、僕が6級から昇格しない理由、それはまあ、その時間がなかったということもあるが、最大の理由は依頼の受任義務を課されることと何より対人の戦闘を要求されることにあった。

僕は医師として人の命を尊重する職務上の義務を負っている。他人の命を軽んじ、その命を奪うことを条件とされる職務など受けるはずがない。

それはたとえ、この世界において人の命が軽く扱われようと、殺さないとコロされるという環境が語句身近に存在していようとである。

もちろんだからといって、みすみす殺されようとは思わないし、いざそういう場面になったら。ギンやムートに迎撃をお願いするだろうけど。僕自身には返り討ちにするだけの技術も心構えもない。

「そういうのは一切お断りです。私は他人の命を大切にすることを職務上課された者です。そういうのを強要されるのであれば、他所に行くだけです。」

「亜^ちょっと待った。冗談だ。意に沿わないことを強要するつもりはない。頼むから落ち着いて、せめて協力できるときにその技能を提供して欲しい。だが、物資が足りないとなると一大事だ。では、こうしよう。薬師ギルドに紹介状を書くので、お主の目に適う薬が入手できるかは、そっちで相談してもらえないか。あと、最後になるが、このたびのうちの元副支部長が迷惑を掛けたことならびに、「英雄の集い」の犯行による慰謝料として、金貨10枚を凍結した彼らの資産から支払う。帰りに受付によって、薬師ギルドへの紹介状共々受け取ってくれ。話は以上だ。」

結局面倒ごとに巻き込まれた気がするが、薬師ギルドなるものがあることと紹介してもらえるのは重畳だった。元の世界では医薬分業、それなりに医学を修めたものとして、薬学の知識もあるが、専門的なところは医学部ではなく薬学部の領域、専門家がいるのであれば協業するのがあるべき姿である。今から会って話を聞くのが楽しみで仕方ない。

僕は応接室に入れないギンとギルドのロビーで合流し、クエストの張り出してあるボードを長めながら紹介状ができあがるのを待つ。

金貨10枚は、ギルドに預け、カードにその残高を記載し、カード決済することが出来るそうなので、異次元ポケットを買い物の都度疲労しなくて済むならとアドバイスに飛びついた。クエストを受けることなく、紹介状をもらってギルドの外に出る。

ギンが常時牽制していることで、ギルド内で僕に話しかけてくる者はいない。

特殊な治療技術を持っていることは伝わっていて、自分のパーティーへ勧誘したいらしくこちらを伺っていることはうんざりするほど伝わるのだが、そもそも魔物だからとその命を散らしに行こうとするのが自分の信条に反している以上、僕には冒険者パーティーを組むという動機が存在しないのだ。

確認している依頼も、薬草を始めとする薬の原料の採取依頼で、どういうものが薬の原材料になるのかを知る便利な方法だからと同時に命を粗末に奪いたくない僕にとってまさに願ってもない依頼だからである。


僕たちは遠巻きにこちらを伺う冒険者たちをため息混じりで横目に身ながらギルドを後にした。


僕たちは冒険者ギルドを出たその足で、薬師ギルドに向かった。

薬師ギルドは冒険者ギルドよりも奥まったところにあるが、正門唐津尽く大通り沿いにある商業ギルドの建物の中にあった。

商業ギルドは商人、鍛冶、木工、裁縫など、内部で職人ごとに分化し、商業取引全般に関わるギルドの集合体で、薬師もその中の一つだった。

商業ギルドと冒険者ギルドは互いに協力関係にあり、たとえば街から街へと仕入れと販売を繰り返す行商人の護衛や鉱山に採掘に向かう坑夫の護衛、あるいは冒険者自身が採掘を行ったり、様々な原材料の採取を行い、冒険者ギルドを通じて商業ギルドに納品するなど。この世界の品物の流通はほとんど冒険者ギルドか商業ギルドの関与を経て行われていると言って過言ではない。

商業ギルドの建物は外装も冒険者ギルドに比べて華美であった。シリウスの町では冒険者ギルドにもほとんど足を運ぶことなく、追い立てられるように町を後にしたため、こうしてどっちがどうなどと眺める余裕はなかった。

ただ、ギルドの入り口は冒険者ギルドと異なり、ギンが入れるほど大きくないので、ギンには表で待っていてもらうことにした。

街中なので、危害を加えられることはないと思うし、ギンに敵意をもって近づくのは危険であることは、見たら分かるくらいにはギンの存在感は圧倒的である。

ギンは商業ギルド内での警護をムートに任せると伝え、ムートがこれを快諾すると、出入りする人と表通りを通行する人のじゃまにならないよう少し離れたところで寝そべった。

ギルドの中は冒険者ギルドと異なり、むしろ病院に近い構造だった。入ってすぐのところに総合受付があり、来訪者の要件ごとにフロアの案内を案内していた。

薬師ギルドは取引高が木工より多いものの、鍛冶や服飾よりも少なく、またそもそもメインである商人ギルドが1階と2階を占拠してしまっており、木工と並んで4階にその受付があった。

エレベーターなどという気の利いたものは存在しないので、階段を昇るしかなかった。前世では階段で4階まで上がれと言われたら、その場にへたり込んでしまう自信があったが、なぜかこっちに来てから身体能力が上昇しており、階段で4階まで上がることが苦にならなかった。

4階にあがった薬師ギルドの部屋に入ったところにいた受付に紹介状を渡す。

受付は「少々お待ち下さいと奥に引っ込んだ後、「ギルド長がお会いするそうです。着いてきて下さい。」と奥へ案内してくれた。


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