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ドクトルテイマー 続き  作者: モフモフのモブ
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エピソード2

気を失っている間に何が起こっていたのか分からないが、どうも村の入り口で見張りをしていたハンスさん、ハンスさんは僕の看護をしてくれたマリーさんの息子さんで、ギンの背中に乗って運ばれていたのを最初に見つけて保護してくれた人だ、そのハンスさんの人の話によると、2,3日前から村を襲うようになった巨大な猪の魔物が、今日も村を襲ったようだが、昨日までとの違いは、そこにギンとムートが居たということだった。

悲鳴を上げる隙さえ与えることなく、ギンとムートに倒されたのだという。

「「主が療養している村を襲うなんて許せないからね」」わふわふ、きゅーきゅー言いながらギンとムートが話してくれる。

それにしても、ちょっとした山になってしまっていた。この後、僕の申し出を申し訳なさそうにけど嬉しそうに受け入れてくれて、村人総出で猪を解体するらしい。もっとも一番大きな猪、なんでもタイラントボアというらしいが、は村では解体が無理らしく、一番近い町の冒険者ギルドに持って行かなければならないらしい。しかもその運搬の手段もないということで、村人たちはあきらめるしかないとため息をついていた。村が救われたことで十分だとも言っていたが、どこか悲しそうだった。脅威度の高いタイラントボアの皮や牙、そして肉は高く売れるのだそうだ。

それならと、僕が預かっておいて町に案内してもらうときに、その冒険者ギルドというところで売って、そのお金で村の復旧に必要なものを購入するということでどうかと提案してみた。

もともと僕の従魔が倒したものは僕のものになるのだから、そんな厚かましいことはと断られたが、僕だって恩返しくらいはしたい。倒してもらっただけでも十分で、冒険者に依頼するお金もなくて、途方に暮れていたのだからと言われたが、僕にはなぜかこの世界に生まれ変わるにあたって、いきなり大金を持たされているだけでなく、ヴィルさんにもらってしまった金銀財宝、財宝とかよく分からない華美な装飾のついた宝剣とかは面倒なことにしかならならそうなので、しばらく死蔵することが決定しているが、普通に金貨や銀貨などはそのまま仕えそうだし、初日にして人生勝ち組みたいになってしまっているので全く気にしてもらう必要はないのだ。

僕は村の人たちが解体するために、入り口から村の真ん中にある広場に猪を移す。

山積みだったもものが一瞬にして消え、そして広場で取り出されるのをみた村人たちは驚きを隠せないようだった。

「あなた様は収納魔法の持ち主でしたか、非常に珍しいですが、あまり人前で疲労するのは危険でもありますのでご注意くだされ」村長のソンチョさんが話してくれた。何でもそのような特別な能力をもった人間は王族や貴族に召し抱えられることも多いが、同じくらい誘拐され、奴隷として売られるのだという。

奴隷って・・・そんなもんあるのか、この世界

タイラントボアだけは、そもそも刃物が通らないらしいので、そのまま収納魔法異次元ポケットに入れたままにするが、それ以外の猪を広場に出しておく。

歓声を上げながら解体を始めた村人を横目に、僕は先ほど話に出てきた猪の襲撃初日に村の入り口で見張りをしていて、大けがをしたという男性の家を訪ねることにした。

外は村人たちの歓喜の声に包まれていたが、その家の中だけは静まり帰り、母親と娘が部屋の真ん中に横たわる男性の前でじっと男性に寄り添っていた。

僕がソンチョさんに続いて家の中に入ったことも気付かないようで、ソンチョさんが申し訳なさそうに声を掛けてようやく僕たちの存在に気付いた。

「村長さん。」女性の方が消え入るような声でようやく僕らの存在に気がつく。

「あのモンスターが討伐されたと聞きました。主人の敵を討って頂き、ありがとうございます。ですが、主人は、もう・・・もっても今晩と聞いています・・・」

その声に、隣にいた女の子が「パパー」と泣き出した。

その時だった。

それまで苦しそうにうめいていた寝たきりの男性が、突然口から血を吐き、けいれんしだした。

「キャーーーー」「あなたーーー」

恩尚子と女性の声が重なり、家の中に悲鳴が響く。


「っ・・・・!」間に合うか。

異次元ポケットから救急鞄の中に入っている気道確保の器具を取り出すと、プルンに男性が嘔吐した血液の吸引を指示する。体内の出血が気道から肺に達して呼吸困難に陥っている。

早急に呼吸を確保しなければ、そのまま死んでしまう。

絶叫を上げ取り乱してしまった母娘の前で、一秒を争う僕は、プルンに吐血を処理してもらった後、気道を確保し、一方で気胸になっている肺が空気を取り込めるよう、注射器を心臓を傷つけないように垂直にさして、胸腔内の空気を排出すると共に、手動ポンプで肺に空気を送り込む。

男性の呼吸が楽になったのを見て、取り乱していた女性が少し落ち着くが、一秒を争う状態であることになんら変わりない。

既に出血多量であり、間違いなく外部からの強い衝撃で臓器が破裂、内出血の痣の箇所からみておそらくは肝臓を損傷しているはずだ。

プルンが、吐血を全て吸引したところで、急遽開腹手術を行う。

開口部にメスを入れると同時に、血液が勢いよく噴出するはずなので、あらかじめプルンには開口部付近に待機してもらい、血の一滴も無駄にならないように、そのまま吸引してもらう。

果たして、肝臓が3分の1くらいのところで亀裂を生じていた。下手に動かせばそのまま傷に沿って患部が広がり、大出血を引き起こし、そのままショック死すると思われる。

とりあえず、損傷していた血管は縫合しておくが、肝心の肝臓の亀裂はそのまま縫い合わせるという訳にはいかない。肝臓は血管と違って外壁がなく縫合糸に絶えられず切り裂けてしまうのだ。ちゃんとした医療施設なら、無菌状態を確保しながら回復したままガーゼパッキングによる止血処理を行うが、ガーゼなど当然存在しない。患者体内の皮下脂肪を使う方法もあるが、この世界の寒村における食事十条ではおよそ皮下脂肪などつかない。

あ、そうだ。

好ましくはないが、背に腹は代えられない。表で解体されている猪の背脂を使おう。猪野氏押しに背脂があるのかどうかは知らないが、ブタに背脂があるのだから、猪にも背脂はあるだろう。

とある医療系漫画でガーゼパッキングの代わりに脂肪を巻いてそのまま止血する方法を見たことがある。漫画がソースというのは今ひとつ不安を禁じ得ないが、選択の余地もない。このまま手をこまねいたら死ぬしかないのだから、可能性があるかぎりやらないよりやる方が良い。

僕はソンチョさんに、猪の背中側の固まりを持ってきてもらうように伝える。併せて猪の後ろ足の膝から下も切り取って持ってきてもらうように伝える。

脂肪は、肝臓に巻き付けて止血するためだが、後ろ足は腱の部分を巻き付けた脂肪の固定のために使用する。体内に吸収される縫合糸はもうストックがないのだ。

ソンチョさんは僕がなぜそんなものを要求するのかさっぱり分からないようだったが、僕のせっぱ詰まった言い方に疑問を横に置いてでもとすぐに対応してくれた。

幸い、猪の解体は普段からなれている村人たちの作業のペースは速く、皮の下にあった脂肪のかたまりごと、大きなブロックで持ってきてくれた。

後ろ足の膝下は、普段ならわざわざ解体する部位ではなかったものの、僕が要求したという話を聞いて疑問も持たずにすぐに切り取って持ってきてくれた。おかげでタイムロスはほとんどなく手術を続けられる。

僕は、まず、後ろ足の腱を切り取り。コラーゲンの固まりで、ゼラチン質を多く含む。脂肪よりも吸収に時間がかかるので、肝臓が自己修復されるまでは、肝臓に巻き付ける脂肪が勝手にほどけてしまうことはないだろう。次に運び駒得たブロックの外側の脂肪部分を余裕をもって厚めに大きめにそぎ取り、シート嬢にしたものを、肝臓に巻き付け、外側から腱できつめに圧迫して腱を縫い止める。術野が狭く、助手がいないので、手術は至難を極めるものだった。受傷からまる1日何もしていなかったことも悪化させる要員ではあったが、プルンというチートのおかげで、事故輸血だけでなく、失った血液を再生出来ることもあって、プルンが輸血を担当した後は、急速に体調も改善し、なんとか長時間の手術に絶えられる体力を回復していた。

最後に開口したお腹を閉じる頃には、患者の呼吸も安定しており、最悪の事態は免れただろううと考えられる状況ではあった。

さすがにこの先警護の仕事に就くことは出来ないだろうが、奥さんと娘さんに悲しい思いをさせる最悪の状況だけは脱したと言っていいのではないか。

僕はまだ油断はできないけどと前置きしながらも、術後の報告をすると、奥さんは僕の手を取り、鳴きながら何度もお礼を言ってくれた。小さな女の子も母さんと一緒に「ありあとーござました。」とお礼を言ってくれた。

間に合ってよかった。心からほっとした。

手術が終わるのを見届けてソンチョさんが、僕を広場に案内しようとしてくれた。従魔と一緒に村の救世主である僕たちがいないと宴が始まらないとのことだった。

え?もう外は真っ暗なんですが?手術も普通に5時間はかかる内容で、助手なしだったので、多分8時間くらい掛かっているはずですが。

解体が終わっても、僕たちなしでは始められない、また僕が何をしているかを知って、固唾をのんでずっと待っていたとのこと、手術が何かというのは知らないようだったが、仲間が一命を取り留めたことを知って、二重の意味でお祭り騒ぎになっているとのことだった。

僕が言え乃外に出ると、村人たちは再び歓声を上げた。

すぐに木で出来た器が渡され、中にはワインが入っていた。

ソンチョさんが「神様が、私たちのためにここにいるケント様を遣わした。彼の従魔はこの村にとって災厄であった魔物を倒し、その主であるケント様は神の御技をもってルードを生き返らせた。」

アー、あの人ルードさんて言うのか。いろいろつっこみたいところはあるけど、まあいいや。

僕はその場に経っていられないほどの疲労に襲われていた。まあ考えてみれば空腹と疲労で気を失って、目覚めたら一杯のスープを飲んだだけで再び長時間の手術をしたらそうなるよな。

それにしても、この世界の料理の半半分はスープで出来ているんだろうか?味付けも塩だけみたいだし、せっかく猪の骨があるんだから、獣臭さはある程度我慢して、豚骨スープ作ればいいのに。

そんなことを漠然と考えながら、とりあえず空腹が最大の調味料かとスープと焼いた猪の肉を食べる。うん、肉はおいしい。ワインは今の状態で飲むものはないので、水に変えてもらう。

その後何人もの村人たちが僕のところに来て口々にお礼をいっていった。愛想笑いしながら返事を返していただ、まぶたを開け続けるのもしんどくなったので、マリーさんにこの村に宿やがないか尋ねると、「村の恩人にそんなまねさせられるかね、うちに泊まってもらっていいよ、いや、是非泊まっておくれ。」と言われた。

普段なら厚かましいと遠慮させていただくところだが、さすがに疲れ過ぎていてその気力もない。素直に好意に甘えることにして、早々に寝ることにした。

マリーさんはあわててお客様用の布団とかなくて猛雨仕分けナインだけど、と言い出したので、ギンにくるまって寝るのでと、辞退して、マリーさんの家の一部屋を借りて、ギンとムートとプルンとで固まって寝ることにした。

ムートとギンに抱きつくようにして横になると僕はすぐに寝てしまった。ギンもムートも昨晩は村の外で夜を過ごしたのがちょっと寂しかったようで、みんなで固まって寝る今がとても嬉しいとのことあった。

嬉しいこと言ってくれる。



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