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 イジメヨクナイ。を書きたくて始めたのですが?

 イジメって立ち向かえ。って言われますが、逃げても良いんだ。って知ってました?

 私が子供の時にも教えて欲しかったなぁ。学生って狭い世界を飛び出したら広い世界があるのですよ。

 そこを泳ぎ抜く事の方が重要なのに、教えてくれる先生って少ないのですよね。

 やっと義務教育が終わって、自分の能力に応じた学校に通えるので、私はホッとしています。小学校はなんとなく過ごせたけど、中学校はキツかった。自慢じゃないけど、眉目秀麗な見た目に文武両道の能力を持っていたから、出過ぎない。目立たない。卑屈にならない。の三ないを心に秘めて同級生の目を躱し続けた3年間でした。だって、両親は極めて普通な社会人で、一億総中流を体現している様な家だから、先生を味方につけるなんて裏技は使えなかったんだもの。打たれない様に杭は隠さなきゃ生活出来なかったのです。


 理不尽なイジメのボスは、急成長して来た会社の社長令嬢で、所謂成金。『常識⁉︎何?それ美味しいの?私がルールでしょう。私に意見するなんて、何様のつもり⁉︎』なんていう感覚の野獣でした。本人の能力は並より下の癖に、親の威光の使い方がダントツに上手く、先生を含めた周囲の大人まで顎で使って…彼女の人生ってさぞかし楽しいだろうな。と100人いたら、100人が思うような下衆でした。


 高校に宗教系のスクールを選んだのは、神の身許にイジメは無いだろう。という期待と、レベルが高いので、彼女では受験すら叶わなかったからですが、さて、どんな青春を過ごせるでしょうか?自分を隠す事なく、穏やかな学校生活をしたいですね。


 期待を胸に登校すると、入学式の行われる礼拝堂に向かいます。周囲には私と同じ様な?思いを胸に抱いているだろう、同い年の少女の群れに囲まれました。キラキラした笑顔が良いですね。和やかな雰囲気に包まれて座っていると、一瞬、光に閉じ込められた?という位の眩しさに、思わず目を瞑ってしまったのです。



 目を開けると。其処は薄暗い部屋で、周囲を背の高い人に囲まれて、床に描かれた模様の中心と思われる場所に、私はうずくまっていました。学校にこんな部屋があるのでしょうか?というより、どうやって私はここに連れて来られたのでしょうか?気を失った感覚は無かったのですが。


 「入学式に新入生にドッキリを仕掛ける様な学校でしたでしょうか?そんな話は事前には聞いてなかったのですが?」


 と呟きながら周囲を見ると、人垣が割れて白髪?の老人が出て来ました。学長先生でしょうか?


 「良く来て下さいました、聖女様。無事に召喚が成功してホッとしております。」


 周囲の騒めきがやっと耳に入って来ました。ご老人の説明が続いてます。要約すると、この国、ルモウルフは魔王を倒すべく神託に従って聖女を召喚をし、成功したから、私がここに居る。という事らしいです。つまり、私は異世界の国に誘拐された。らしいです。


 召喚者の条件は、魔王の力を抑えられる程の浄化の力を持つ聖女だそうです。アハハ、ラノベですか?確かにこんな話は良く読んでましたね。豊富な魔力が無いと、異界へは渡れない。とか。問題は帰還の方法の有無です。私は無事に日本に帰れるのでしょうか?


 「魔王ってたぶん強いのですよね?…私、日本で暮らしていて、闘った事など一度も有りません。学校では何時も理不尽な考えをする同級生から逃げていました。

 そんな私では恐ろしい魔王になんて立ち向かえると思いません。日本には魔法なんて有りませんでしたから、無理だと思うのです。…それに、事前に承諾も有りませんでしたよね?

 出来ない事を一方的に押し付けられても困ります。失敗したら、お互いに困りますよね?

 …あ、一番知りたい事ですが、私は日本に帰還出来るのですよね?」


 セオリーに則って、か弱く見える様に、俯きがちに下から見上げる姿勢で、両手を胸の前で組み、声を振るわせながら辿々しく、小声で問い掛けました。怯えているかの様に、庇護欲を唆る事を狙っての仕草です。彼女が大人に自分の都合を押し付ける時の仕草を真似てみました。


 「討伐を不安に思うのは仕方ないが、私達が教えるから安心しなさい。君は後方から魔法で応援する事が仕事だ。魔王を討伐する迄にはキチンと戦える様になる。…闘えなければ死ぬだけだがね。」


 老人の後ろから低い声が言い捨てるかの様に割って入って来ました。でっぷりしたお腹に派手な服です。ラノベ通りなら、この国の王様ですが、どなたでしょうか?


 「アイトバルト陛下。わざわざお越し頂きましてありがとうございます。召喚が成功しまして聖女様をお招き出来ました!」


 「ふむ。ズヴェニール神殿長、成功は当然だが、ソイツは使えそうか?名は何という?」


 あーヤダ!この人嫌い!一番嫌なパターンかも?隷属させられたら大変だから、本名なんて絶対に名乗らないからね!中学の時は絢香の字からジュンって呼ばれていたから、それで良いよね。


 私が黙って考えていると、アイトバルト陛下?が痺れを切らしたのか怒鳴り出したので、俯いて泣いてみました。すると老人が私を庇うように、優しく声を掛けて来ました。


 「これこれ、泣かなくて良いから、名を名乗りなさい。」


 「…ジュンです。」


 「ジュンか。良い名ではないか。アイトバルト陛下。ジュンは神殿で預かり、魔王討伐の為の力を付けさせたいと思いますが、宜しいでしょうか?」


 「そうだな。1ヶ月を目安に魔法を覚えさせておけ。王宮で謁見し、魔王討伐に行かせよう。」


 2人の間で話しが進んでいます。まぁ、誘拐犯のボス達の会話だから滅茶苦茶です。私の事なのに、私抜きで勝手に決めて行きます。…つまり、私、殺される運命だったみたいですね。こんな事なら、中学の3年間、我慢しなきゃ良かったかも。好き勝手しておけば良かったかも。それとも、あの宗教系の高校を選ばなかったら、此処に来る事も無かったのでしょうか?



 周囲を囲んでいた人の大半は、アイトバルト陛下?について城に帰って行きました。彼等は宮廷魔導士さん達だそうです。私を召喚した魔法陣(あの床の模様)に魔力を注いでいた人達だそうです。ご老人はズヴェニール神殿長で、残りは神官達と、神殿の聖騎士達だそうです。魔法陣を使う為に呼ばれたそうです。召喚の魔法陣は神殿に保管される掟があるそうです。ズヴェニール神殿長が丁寧に?教えてくれました。神殿に着くと私はシスターに預けられました。


 四面楚歌。私の今の状況を簡潔に表現してみました。味方なんていません。当然ですよね。私から見たら全員が誘拐犯とその仲間なのですから。そう思って頑なに心を閉ざしていたのですが、シスターの中で私と同じ歳の少女が専任でついてくれて、ずっと一緒に生活しているうちに、少しずつ話す様になりました。


 魔王の被害に遭っているのは主に平民と呼ばれる一般の国民だそうです。私の専任になったシスターミーシャの両親は、辺境で冒険者活動をしていた時に魔王の手下に見つかり、惨殺されたそうで、シスターミーシャは身寄りが無くなり、回復魔法が使えた事で神殿に引き取られたそうです。


 私は本名の近藤絢香を隠してジュンと名乗ってますが、シスターミーシャの話から、バレるかもしれないと、悩んでいます。…ステイタスを見る機械が冒険者ギルドにはあるのだそうです。


 神殿にいるので、創造神のアモルフィア様の像に祈る事が日課に組まれています。何時もは振りだけをして時間を稼いでいたのですが、ステイタスの事を知り、今日は真面目に祈ってしましました。


 『アモルフィア様。私は一方的にこの世界に誘拐された日本人の近藤絢香(コンドウ・アヤカ)と申します。私が日本で読んでいた小説の様に、ステイタスの偽造とか、異世界に転位した事のチート能力とか、私に救いは無いのでしょうか?』


 目を瞑って祈っていたにも関わらず、眩しい光に包まれた事が分かりました。召喚された時の状態に似ています。もしかして、日本に帰れた⁉︎と目を開けると、真っ白な空間でした。イケメンな男性が目の前に居て、


 「絢香、ずいぶんと痩せてしまったね。魔王討伐の為には絢香の力が必要だから、召喚を止められなくて申し訳ない。本来なら、召喚された時に此処に呼んで能力を授けるのだが、今回は巻き込まれかかった少女達を日本に押し返していたので、絢香への対応が遅れてしまったのだよ。

 お詫びにチート⁉︎な能力の相談に乗ろう。因みに、言語理解と全属性魔法。インベントリは基本的に召喚者特典で自動的に付いているから、安心しなさい。」


 「はい。言葉が通じて、読み書きが出来るのは気付いてました。でも、全属性とインベントリは気が付きませんでした。チート能力は…あ、鑑定ってもらえますか?それと、自分のステイタスが見えて、偽装出来ると嬉しいです。」


 「ステイタスと言えば浮かぶよ。ステイタスオープンと言うと、他の人でも見えてしまうので、気を付ける様に。この世界の人のステイタスは機械を通さないと見えないからな。ステイタスは秘密にする物。という教えを広めたのだ。ギルドで登録する時以外は誰にも見せなくて良いからな。もっとも、本人の許可が無いと見れない筈だから、登録だけではバレない筈だ。

 鑑定のスキルも付けたから、知りたいと思って観ると情報が出て来る筈だ。偽装かぁ、あの王や貴族はなぁ…無理強いされないとも言えないから、偽装のスキルも付けておこう。」


 アモルフィア様がお詫びにと、いろいろしてくれました。インベントリの中にはこの世界のお金や着替え。生活に必要な道具を入れておいてくれていたそうです。その時が来たら、独りでも生活出来るようにしてくれたみたいですよ。魔王を討伐するまでは逃げられないけど、その後なら逃亡出来るように力を貸してくれるそうです。…日本には帰還出来ないので、そのお詫びだと言ってました。



 召喚の時にいた聖騎士のハリオット様から身を守る攻撃魔法を学び、神官長のレジデンツ様から、浄化と結界の魔法を学んでます。アモルフィア様とお話しして以来、格段に力が付いて、アイトバルト陛下に指定された期日には間に合いました。


 王宮の謁見の場に連れて行かれて、居並ぶ貴族の前で、魔王討伐のメンバーを紹介されました。


 王家からは、アイトバルト陛下の妾妃を母に持つ、第二王子のルドルフ様。18歳。王家に伝わる聖剣の遣い手として参加。勿論、リーダーです。


 ルドルフ様の婚約者でもある、女性騎士のコーデリア辺境伯令嬢。17歳。一応、私の護衛として選ばれたらしいです。すっごく睨まれてます。


 ルドルフ様を守る為に、宮廷魔導士のサイドライト侯爵子息様。28歳。攻撃魔法のトップに君臨しているそうで、この方が魔王を攻撃して注意を引き付けている内に、ルドルフ様が聖剣でとどめを刺す作戦と聞いてます。


 魔王を打ち倒す為、剣王の異名を持つ第三騎士団長のドミット伯爵様。31歳。物理攻撃のトップです。第三騎士団は魔獣討伐を主に行う集団で、実力者の集まりだそうです。


 そして、教会から、私の指導の為に、聖騎士のハリオット公爵子息様。19歳。サイドライト様は唯の?結界ですが、ハリオット様は聖結界を張ります。私も聖結界を修得させられました。私の張る聖結界は、魔王の力を抑えて、弱める事が出来るのだそうです。ハリオット様の聖結界では、アンデットを消す位だそうです。(それでも凄いと思うのですが…)


 この他に、ドミット伯爵様の第三騎士団が付くそうです。魔王のいる魔王城のある辺境までの護衛だそうです。辺境を目指して馬で移動すると言われました。乗馬は憧れてましたけど、経験有りません。相談の結果、ハリオット様と相乗りする事になりました。


 王都を取り囲む城壁の門までは、ルドルフ様を激励する人の波でパレードのようでした。人気があるのですね。私は目立ちたくないので、ベールを下ろして俯き、ハリオット様に隠れるように小さくなってました。なんだったら従者のお仕着せをもらえばよかった。



 草原の中の道を進むと、頭の片隅にマップが広がりました。赤い点がチラホラと付いて、自由に⁉︎動いてます。右手の赤い点を馬上から観ていると、『スライム』と名前が出て来ました。早速、魔獣と遭遇したようですが、皆さん無視して通り過ぎてます。


 ハリオット様に『スライムが居ますが倒さなくても良いのですか?』と尋ねると、小さな魔石しか取れないので、Fランクの新人が狩る対象だそうです。今夜の野営地の近くにも出没するらしいです。『攻撃魔法の練習に狩りましょうね。』といい顔で宣言されました。


 シスターミーシャの同行が許されず、女性はコーデリア様と二人きりですが、一切、接触はありません。私の護衛なんて了解していないのでしょう。婚約者のルドルフ様に付きっきりでイチャついて?ます。私もあの場で紹介?されただけで、その後の接触はありませんから、知らない人に興味も出ませんので、お互いに無視している状態です。


 野営地の側でスライムに向かってサンダーを落としていると、サイドライト様が来ました。


 「ジュンは珍しい攻撃魔法も使えるのだね。普通はウィンドカッターやファイアボールを使いそうだけど。雷魔法は珍しい。」


 と話し掛けて来ました。スッとハリオット様の陰に隠れて、


 「ウィンドカッターでは威力を抑えるのが面倒ですし、ファイアボールでは森林を焼きかねません。サンダーは対象を個別に捉え易いので楽なのです。」


 と答えると、目を丸くして驚いてます。私が首を傾げてハリオット様を見上げると、


 「火・水・風・土の4つの基本魔法を使い熟せないと操れないのが、雷魔法なんだ。」


 と苦笑しながら教えてくれました。そっか、基本魔法だ!と気付いたので、丁度出て来たスライムに土槍で刺してみました。物理攻撃には強いと聞いたのですが、魔法で作った土槍には、突かれて核だけを残して消えました。魔法攻撃扱いだと効果があるのですね。


 魔王のいる辺境には、珍しい薬草が生えていたり、討伐した魔獣の魔石は価値がある為、採取してくる事は神殿にも利益になる。と、マジックバックを用意してもらいました。持ち主の魔力に性能が比例するレア物だそうで、討伐の期間だけ貸し出す誓約書を書かされて、所有者登録しました。私は召喚者なので魔力が多いので、容量が多く、時間経過も遅いみたいです。


 アモルフィア様によると、インベントリは珍しいスキルの部類になるそうなので、誰にも秘密にしています。インベントリの中なら、容量無制限、時間経過無しなので、物によってはこっそりとインベントリにしまってしまうつもりです。

設定間違えました。

4話で完結です。

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