三ヶ月
三ヶ月
「こんにちわ〜美樹さんいるぅ?」玄関から一郎の母、歩美の声がした。
「いるわよ〜どうぞ上がって来てぇ」槇草の妻、美樹はオムツを畳む手を止めて返事をした。
歩美はつっかけてきた下駄を脱いで廊下から茶の間に入ってきた。
「どお、小太郎君は?」
「ちょうど今寝たとこ、おっぱい飲んでご機嫌だったわ」
「そお、少しは楽になった?」
「そうね、首が座ったから片手が要らなくなった」
「そっか、心配だもんね」
「ちょっぴり責任が軽くなった感じ」
「分かるわ〜」
「お座りが出来るようになったらもっと有難いわ」
「すぐよ、寝返りだって出来るようになる」
「子供の成長って早いわね」
「そう、ふと気が付いたら腹ばいになってこっち見てるの、ビックリするわ」
「キツイけど楽しみ、ところでいっ君は?」
「元気に学校行ってるわよ、もう熊さんに心酔しきっててね、洋ちゃんと一緒に武術を習うんだって張り切ってるわ」
「あら、熊さんは許してくれたの?」
「それが、『おいは居候やけんそげなこつはでけん』って言われたらしいのよ」
「まあ」
「でも、全然諦めてないわ。あの子も強くなった」
「へ〜頼もしい、小太郎もそうなってくれたら良いな」
「悠さんがいるじゃない、大丈夫よ」
「そうね」
「そういえば悠さん、新しい職場は慣れたの?」
「うん、だいぶね。気難しいお客さんもいるから気を使うんだって」
「ふ〜ん」
「外人さんも多いからって、最近英会話にも通ってる」
「そう、大変ね」
「でも、根が単純だからあまり苦にしていないみたいよ」
「あはははは、で、子育ては手伝ってくれる?」
「そうね、お風呂入れたり、オムツ替えたりしてくれるわ」
「へぇ、昔の男はそんな事しなかったわ」
「時代が変わったのね」
「良いことよ、男にも子育ての大変さを味わって貰わなくちゃ」
「今度、同窓会があるの。悠さん非番だから小太郎を見ていてくれるって」
「あら、良かったじゃない。父と子の時間も大切よ」
「そぉ、でもちょっと心配・・・」
「男も育てなきゃダメよ、ゆっくり楽しんでいらっしゃい!」
「そうね、そうするわ」
「あら、もうこんな時間。夕飯の支度しなくっちゃ、作兵衛さんうるさいから、昔の男はダメね」
そう言って歩美はそそくさと帰って行った。下駄の音が遠ざかる。
「さて、うちも支度に取り掛かろう。もうすぐ悠さん帰って来るから」
美希は小太郎の寝顔を確かめて、台所に入って行った。