躯
7月25日
『 今国会で少年法改定案の決議が決定しました 』
日常は終わることなく続く。
『 ・・核実験を実施したとの報告を受け日本政府は遺憾の意を表明、経済制裁を含めた・・・ 』
改札から押し出されるように溢れ出てくる人々の群れは決して流れを止めることはない。忙しなく行き交う人々の表情は誰しも明るくはない。それぞれが心に秘めた憂鬱を隠して歩いている。
背広に身を包んだ気怠い面持ちのサラリーマン達
制服に身を包んだ身の丈に合わない化粧で虚勢を張る女子高生達
「・・・・みんな・・・・」
ブツブツと独り言を呟くランドセルを背負った小学生
「・・・・んじゃえばいいんだ・・・・」
深い悩みなど何もなさそうな大学生達
「んなのやっちゃえばいいじゃんよ」
「ヒャハハハハハ」
その誰もが心に狂気を笑顔の衣に隠し歩く。
気に入らない他人を、心の中あらゆる手段で幾度となく殺し、今にも破れてしまいそうな薄い衣が剥がれてしまわぬよう歯を食い縛り耐えながら進む。
警笛が鳴り響く。
踏み切りの前、いっせいに行進を止める群れ。
その群れを掻き分け進む女性が一人、
「・・・・私は悪くない・・・・」
眉をひそめる彼女の瞳に映るのは、目の前の自転車に乗った男性
「・・・私は間違ってない・・・・」
バッグから取り出したもの、
それは包丁
「・・・・間違って・・・・ない・・・・・」