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   20:00



 第3スタジオ。


 一斉にカメラが向けられる。

 生放送される榎真と芹、そして銃を突き付けられている橋田の姿。

「みなさんご覧戴いておりますでしょうか、大変なことになりました!全国指名手配中の双子の兄弟がスタジ・・・」

 銃を天井に向け発砲する榎真。

「ひっ!!」

「キャァァァー!!!」

 さらに二発、三発と打ち上げ

「黙れよ」

呟く芹。

 静まり返るスタジオ内。

「くだらない前置きはいらない」

 硝煙の匂い立ち込めるそのスタジオは、討論番組の生放送。

 反射的に立ち上がり逃げ腰になったままその場に座り込むゲスト達。それを尻目に、橋田に銃口を押し付けたまま司会者の立つステージへと歩み寄る二人。

「どけ」

司会者に銃を向け退かし占拠する。背後には大きなスクリーンが設置されている。

「あ、あなた達の目的は・・・いったい何なんですか?」

 声の震えた司会者の男が尋ねる。

「・・・・・」

「・・・・・」

 二人顔を見合わせ軽く頷く。

 榎真が口を開く。

「私たちの両親は連続殺人犯の少年Aによって殺された」

 皆一様にハッとする。

 全ての視線が二人に集まる。

「何の罪もないお母さんとお父さんは私たちの・・・目の前で・・・」

 言葉に詰まる榎真。

「9人も殺しておいて死刑にならないなんておかしいだろ!」

即座に代弁する芹。

「今回の事件・・・・本当にあなた達がやったの?」

 ゲスト評論家の大西、一歩身を乗り出し発言する。

「そうだよ」

 即答する芹。

「まさかそんなこと訴えるためにあんなに大勢の人たちを・・・・」

 興奮する大西、

「・・・・・」

「・・・・・」

それを褪めた眼差しで見つめる二人。

 そして互い顔を見合わせ

「あなた達がしたことも少年Aのやったことと変わらないじゃない!」

ほくそ笑み告げる。

「同じなんかじゃないわ」

「それ以上だ」

 息を呑むゲストにスタッフ。

 二人の放ったセリフに、誰もが自分の立場に恐怖を覚える。

 スタジオ内を包み込む静寂、その中、一人怯むことなくそれを打開する大西。

「こんなことして天国の両親が喜ぶと思ってるの!?」

 強気な訴えに、無言のまま見つめる二人にさらに続ける。

「・・・・悲しんでるわよ」

 静かに視線を落とす二人。それを見て取り一転、優しく語り掛ける。

「・・・でもね、悪いのはあなた達じゃない」



   20:04



 北中学校職員室内。


 教員達が集まり食い入るようにテレビを見つめている。


『 悪いのは歪んだ社会のせい・・・・あなた達のせいじゃないわ・・・・ 』



   20:04



 新宿アルタのスクリーン前。


 スクリーンに映し出される大西の後姿、その先に俯く榎真と芹。

 アルタ前をただ過ぎ去って行こうとする人々の流れを、立ち止まり見入る人々の群れが堰き止める。



   20:05



 渋谷109スクリーン前。


 映し出される大西、笑みを浮かべ訴え掛ける姿に、信号待ちで立ち止まり見入る若者達の目が釘付けになる。

「撃っちゃえよ!」

「死刑だ死刑!」

「殺れ殺れ!」

車のクラクションが鳴り響く。



   20:05



 局裏口内。


「狙撃班前へ!」

「準備よし!」

 局内へ機動隊突入開始。



   20:05



「・・・・ただ寂しかっただけなのよね?」

 語り掛けられ銃を降ろす二人。

 ゆっくりと二人に近付いて行く大西、

「・・・じゃあ」

榎真の言葉に足を止める。微笑を称え

「なーに?」

軽やかに尋ねる。

「・・・・ゆるして・・・・もらえるんですか?」

 力なく尋ねる榎真。

 そのセリフに両腕を広げ、さらに歩み寄っていく大西。

「もちろんよ。あなた達は国に法律で守られてるの。罪を償っていくらでもやり直しができるようにってね」

 トリガーに掛ける指に力が入る榎真。

 それを見て取り息を呑む大西。

「・・・・それじゃ残された者たちの悲しみや怒りはどうなるんですか?」

 俯いたまま睨み付ける榎真。

「あなた達が生きて償っていくのよ」

 額に汗の滲む大西。

「僕たちが生きてること自体が遺族の憎しみや怒りを生んでるんじゃないの?」

 褪めた瞳で突き刺す芹。

「少なくとも私たちはそう思ってる」

 褪めた言葉を吐き捨てる榎真。

「そんな風に思っちゃ駄目よ!憎しみや怒りからは何も生まれないのよ!」



   20:07



 秋葉原 家電量販店テレビコーナー前。


 同じチャンネルになっている全てのテレビ。

 その前、食い入るように見つめる人だかり。


『 これからをどう生きるかを考えなきゃ 』


 大西の熱弁がサラウンドで響き渡る。

「やらせ?」

「なの?」

「さぁ」



   20:07



 額から流れ落ちる汗を拭うこともせず、あくまで微笑み掛ける大西。

「そんなの他人事だから言えるのよ」

「偽善だね」

 睨み付ける二人。

「そんなことないわ!」

 断言する大西。

 冷ややかに見つめる榎真が尋ねる。

「じゃあもし自分が同じ目に合ってもそう言い切れる?」

 一瞬の躊躇。

 慌てて返す。

「も、もちろん」

 腕を上げパチンと指を鳴らす芹。



   20:08



 サブコントロールルーム。


 腕を上げ指を鳴らす芹、

その合図を見て取りビデオの再生スイッチを押す樫沢。



   20:08



「よかった」

 呟く榎真、芹と顔を見合わせほくそ笑む。

 その背後のモニターに映像が映し出される。

 ざわつくスタジオ内。

 怪訝な面持ちで画像を見つめる大西。

「!?」

 すぐさま悟り二人に目を向ける。

 不敵な笑みで返す二人。

 映し出されているのは大西家の全景。

「・・・・・・・」

 モニターを凝視する大西、その瞳に映るのは、穴の開いた血だらけのクッション。

「!!」

 頭部を打ち抜かれ転がる大西の家族の姿。

 愕然と膝を落とす大西、

 褪めた瞳で見下す榎真、芹。



   20:10



 第3スタジオ裏側。


 裏口の外、配置につく機動隊員30人。

 腰を屈め浸入して行くそこはセットの裏側。

 張りぼてのセットを裏側から包み込むように、それぞれの配置に散ばる。

 榎真、芹の声がベニヤ板を挟んだ向こう側から聞こえてくる。


「早く言ってよ」

「「どう生きるかを考えなきゃ」ってさ」


 狙撃手二人に手招きをする隊員、そのもとに駆け寄る狙撃手。隊員の指差すそこには5センチ程のセットの隙間、二人を睨み付ける大西、そして二人の斜め後ろ姿を捉える。ライフル銃の照準が、二人へと合わされる。トリガーにかかる指に重みが伝わる。

「言えないの?」

「ウソつき」

 狂人のごとく目を見開き

「!!!」

顔を歪め二人を睨み付け

「ァァァァァァァー!!!」

奇声を発し襲い掛かる大西、

その足目掛け発砲する芹。

「ヒッ!!」

 銃声にビクつく橋田。

「ィッギャァァァァァァァァァァー!!!」

 両手で押さえる足から噴出す血しぶき、

 引き金を引きそうになる狙撃手、 その耳のイヤホンへ「待て!」の声。

「目障りだから連れてって」

 榎真の言葉に、スタッフが駆け寄る。

「人殺しィィィィィィィィー!! 」

 肩を担がれ連れて行かれる大西、

「殺してやるゥゥゥゥゥー!!!]

悶え叫ぶ。

「・・・・・」

「・・・・・」

 引き摺られ連れ出される。

 その姿を哀れみの瞳で見つめ

「偽善者が」

呟く芹

「口先だけなら何とでも言えるわよ」

吐き捨てる榎真。

「人権人権人権」

「人権人権人権人権人権・・・・」

「人権っていったい何だよ!!」

「なんで未成年だったら赦されるんだ!!!」

「殺した方の人権ばっかり優先されて殺された方は無視!?」

榎真

「なにそれ!?」

榎真

「ばっかじゃないの!!!」

榎真


「未成年なら何しても償えるってのか!?」

「そんなのおかしいでしょ!!」


 静まり返るスタジオ。

「・・・・・」

 唇を噛み締める芹

「・・・・うっ・・・うぅ〜・・・・」

涙ぐむ榎真。

 言葉をなくした二人に、恐る恐る声を掛ける司会者。

「あなた達、まさか自分達も刑務所に入って少年Aに復讐しようなんて思ってるんじゃ・・・・」

 寂しげにはにかむ二人。

「そんな馬鹿なことはことは考えてません」

「それに無理だ・・・・顔すら合わせてもらえないでしょ」

「犯した罪は自分達で償います」

「それじゃ自首なさるんで・・・す・・・・!?」

 背を押され突き飛ばされる橋田、ゆらっと前のめりに押し出され解放される。

「!?」

 「突撃!!」イヤホンへ告げられる合図

 盾を突き付け突進する機動隊


「ごめんなさい」

「ごめんなさい」


 カメラに向かい頭を下げる榎真、芹

 銃口を互いの額へ

 見つめ合い微笑み

「またね」

 芹

「・・・・」

 頷く榎真


   20:13


 新宿アルタスクリーンに映し出される機動隊員達の後姿、

 スクリーン前、群れと化した人々が息を呑み見入る


      †


 渋谷109スクリーン。

 画面が切り替わる。 

 見入る人々のざわめきが波となり揺れる。


  『 しばらくお待ちください 』



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