果
15:00
線路に降り立つ榎真と芹、柵を跨ぎ線路沿いの道路へと出る。
二人の瞳に一台のワゴン車が映る。騒音を撒き散らし猛スピードで近付いて来る。ローダウンにドレスアップされたフェンダーが、まるで地面を削るかのように向かって来る。その進路を塞ぐように道路の真ん中へ歩き出す榎真。急ブレーキ、白煙を上げるタイヤ、榎真の横をギリギリかすめるように止まる。
運手席、茶髪ロン毛の若者が窓から顔を出す。
「っぶねぇだろこのガキ!!」
怒鳴りつける。
「轢き殺されてぇ・・・・っ?」
銃を構える榎真。
「ガッ・・・・・」
吹き飛ぶ頭、しなだれる体。
「ひっ!!」
助手席の金髪男が声にならない叫びを上げる。そのもとへ歩み寄り銃口を向ける榎真。
「運転できる?」
恐怖に顔を引きつらせる金髪男、背後より銃を向けられロン毛の亡骸をトランクに詰め込む。
15:15
沿岸を走るワゴン車。
ハンドルを握る金髪男、後部座席に座り銃口を向ける榎真と芹。
「携帯ちょうだい」
手を差し出す芹。
「えっ?」
「携帯電話だよ」
「あっ、あぁはい、」
手渡された携帯を海に向かって投げ捨てる。
16:31
海を望む岸壁に囲まれた岬に立つ榎真と芹。
「・・・・・」
「・・・・・」
言葉なくただ海を見つめる。
写真を手に芹が呟く。
「・・・・あんなに楽しかったのに・・・・」
「・・・・きれいに見えたのにね・・・・」
呟く榎真。
「・・・・・・・」
谷底に向かって写真を投げ捨てる芹。ヒラヒラと舞い落ち、やがて視界から消える。
二人見つめ合い、そして抱き合う。
「・・・・行こう・・・・」
「・・・・果てへ・・・・」
駐車場。
車へと戻ってくる二人。芹がトランクを開ける。
「ただいま」
そこには口をタオルで塞がれ後ろ手に縛られた金髪男が
「んん〜・・・」
死体とともに詰め込まれ悶えている。
16:53
車中。
ポケットに手を入れる榎真、一枚の紙切れを取り出し金髪男に手渡す。
「ここに」
そこには一つの住所が書き記されている。