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   11:11


 駅のホーム。

 通勤ラッシュの去ったそこは、すでに人もまばらになっている。

 電車がやって来る。

 一番前の車両に乗り込む榎真と芹。

 他人同士が触れ合わない程度に込み合っている車内、ドアに身をもたれかけ二人肩を寄せ俯いている。



   11:19


 ざわつく署内。

「下り電車に乗るのを見たとの目撃情報が入りました!」

「先回りしろ!」



   13:13



 車両が切り離され三両編成になる。

 吊り革に掴まる乗客もいなくなった車内の中央、横一列に並んだシートの中央の席に腰を下ろす榎真と芹。しっかりと手を繋ぎ、言葉もなくただ向かいの窓の外、流れる景色を見つめている。連なりを深め始める山並み、トンネルの中を通り抜け進む。



   14:34


「非難全て終了とのことです。まもなく来ます」

 ひと気のない駅のホーム。

「こんな・・・・まだ子供じゃないですか、」

「本当にこの二人の犯行なんですか?」

「曖昧な目撃証言しか得られてはいない。だからこそ我々が呼ばれたんだろ」

「・・・・ですね」

 辺りは山に囲まれている。その景観に似つかわしくない黒いジャケットに身を包んだ男が二人、ノーネクタイのスーツ姿の男が二人、計四人が写真を見つめ話している。彼ら以外の乗客はいない。

 そこに電車がやって来る。

「いいか、合図を出すまで手は出すなよ」

「了解」

 ジャケット組とスーツ組で別れる。

 停車する。

 ドアが開く。

 一両目にジャケット組、二両目にスーツ組と別れて乗り込む。

 榎真と芹の向かいの座席、斜め前に二手に別れて座ってくる。耳にイヤホンを付けたサラリーマン風の男達、チラッと目をやる榎真、そして瞳のみを二両目に動かし見つめる。二両目に乗り込んだ男達が横目で榎真と芹を見つめている。その一人が襟に仕込んだ小型マイクで指示を送る。

「・・・・標的が行動を起こすまで待て」

 俯いた男達、無言の返事が暗黙の了解を示す。

 俯いたまま手を握り合い、会話すら交わさない榎真と芹。眠っているかのように揺れに身をまかせている。二人の左隣にはDSに熱中する少年が一人、右隣には居眠りをする老人が座っている。二人の座っている側の他の座席にはベビーカーの赤ちゃんをあやす女性が一人、女子高生が三人座っている。向かい側には居眠りをする初老の女性が一人、学生とおぼしき男が二人で話をしている。


 一駅通過。



   14:45



 二駅通過。



   14:55



 榎真の手が持ち上がる。

「!!」

 男達の眼光が鋭く輝く。

 榎真の手はうなじへ、寝ぼけているかのように掻き毟りその手は再び膝の上におさまる。

「・・・・」

「・・・・」

 胸を撫で下ろした瞬間、持ち上がる芹の手、その手は胸の内ポケットへ。

「!!」

 反射的に肩を動かしてしまう男達、俯いたままニヤける芹、その手には写真が握られている。

「・・・・」

 つくことすら許されないため息、それを呑み込む男達を尻目に写真を見つめる二人。そこには二人と両親の笑顔が写っている。


 山が開け海が見え始める。

 DSをリックの中にしまう少年、そして腰を上げる。横目で少年を見つめる二人が呟く。

「・・・・着いたね・・・・」

「・・・・降りよ・・・・」

 手にする写真を胸の内ポケットにしまう芹、その目の前を通過する少年、

「頭よ」

囁く榎真、

頷き立ち上がる芹、

ポケットから出されたその手に握られているのは拳銃、

「!!」

即座に立ち上がる眼前の男達、榎真と芹の前には少年が

「くっ!!」

一瞬の躊躇

「ガッ!!」

「オゴッッ!!」

浴びせられる容赦なき弾丸、

「キャァァァァァァー!!」

響き渡る悲鳴、

慌てて立ち上がる二両目の男達、その瞳の捉えたもの、それは榎真の向ける銃口。

 幾重にも鳴り響く銃声、弾け飛ぶガラス片、飛び散る血しぶき、倒れ込む二人。


 目の前に転がる二人の男の死体、

 二両目に転がる二人の死体、

「アガァァァァ〜・・・」

 二両目、流れ弾に当たって悶える数人の乗客、

「いやぁぁぁ〜・・・・」

 目の前にしゃがみ込む少年に銃口を向ける芹、

「静かに」

 騒ぎ立て二列目に逃げ惑う乗客たち、二人それを尻目に頭部の吹き飛んだ男の銃を手にする。

 運転席のドアの鍵に銃口を向け放つ芹、ドアを蹴り開け運転手に銃口を向ける。

「止めて」

 



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