奪
授業中の教室。
気怠げにあくびをする生徒たち。その中の一人、何の気なしに窓の外を眺めている。窓枠とゆう名のスクリーンに映し出されるその光景、虚ろなその瞳が捉えているのは、体育の授業でマラソンをさせられている生徒たちの姿。小さな粒が楕円に引かれた白線に沿い目的なき周回を重ねている。
「?」
粒々で構成された配列、突如粒の一つの停止によって配列が乱れる。立ち往生する粒たちがこちらを向いて指差し始める。
「??」
目を凝らし見つめる。瞬間、目の前を通過する黒い影に目を奪われる。
「!?」
鈍い衝撃音が鼓膜を刺激する。
粒たちの悲鳴がこだまする。
異様な空気、無意識に立ち上がり窓の下を見下げる。
「・・・・鈴木?」
灰色のコンクリートが黒い液体で染め上げられていく。
「・・・・先生・・・・」
「どうした?」
転がる亡骸を指差す。
「・・・・・ひとが・・・・」
†
手を繋ぎ正門を出て行く榎真と芹。
片手には榎真の温もり、もう一方には鈍い輝きを放つ黒く冷たい鉄の塊を握る。
10:24
駐在所内。
警官が二人、のんびりとお茶を飲んでいる。
「今度の休みどこか行くんですかー?」
「ゴルフよゴルフー」
「いいなぁ〜、今度ご一緒させてくださいよー」
「いいけど高いよ、負けると」
「あっ、いっけないんだぁ〜」
「誰だってやってんだろ、んなもん。バレなきゃいいんだよ」
「ハハハハハハ」
無線が入る。
『・・・・・北中学校にてピストル強奪事件発生、直ちに・・・』
「・・・・北中って言ってませんでした?」
「あ〜、聞き違いだろ〜」
ゴルフの素振りを始める。
「すいませーん」
そこに制服に身を包んだ男女がやってくる。
「はーい、どうしたのかな?」
「こんな物が落ちてたんですけどー」
銃口を向ける芹。
「!?」