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8.スイーツメニュー開発依頼 ~レストランボヌールにて~

時間開いてすみません( ノД`)シクシク…

翌日早速お父様とレストランボヌールに向かうことになった。


少し遅めの昼食時間にお店に行って、食べ終わると店内の様子を見る。


あまり大きい店ではないけれど、木目と白で統一された店内はシンプルながらも清潔感があり落ち着く雰囲気になっている。


…この明るめの店内でパンケーキが出てくる未来を考えると涎が出そうだわ…


想像を巡らせていると、ボヌールの一人息子、トリスタンがやってきた。


周りを見るともう他のお客様はいなくなっていた。


「マドレーヌ、グラン会長、こんにちは」

「やあトリスタン。お父さんと話がしたいのだが」

「?呼んできますね」


トリスタンは踵を返して厨房に入っていった。


このボヌールは私が小さい時から通っているレストランで、トリスタンは私と同い年の一人息子だ。


お父様たちが友人なこともあって、今では親友のようにお互い好きなことを言い合える友達だ。


焦げ茶の短髪と同色の目をして、少し釣り目気味のトリスタンはお姉さま曰くやんちゃな感じが可愛くて良いらしい。


そういうものなのかしら。


「会長、お呼びですか?」


厨房からコック服に身を包んだトリスタンのお父さんが出てきた。


後ろにはトリスタンも一緒にいた。


「ああ、ベランジェ。忙しいところすまないな」


お父様がおじさまに声を掛けた。

名前で呼ばれたことでおじさまも合わせるように口調を砕けたものに変えた。


「どうしたんだ、ヴァレリー」


あ、ヴァレリーがうちのお父様でベランジェがトリスタンのお父さんの名前よ。


「ちょっとメニューで相談したいことがあってな」

「メニュー?珍しい食材でも手に入れたのか?」

「珍しいは合ってるがちょっと違うんだ」


言葉を切るとお父様は私に視線を向けた。


私は持ってきていたバスケットを開けてパンケーキをテーブルに乗せた。


「冷めてしまったが食べてみて欲しい」


持ってきたのはプレーンのパンケーキ。

はちみつやジャムはかけないで用意したわ。


おじさまは空いていた椅子に腰を掛けると私の用意したフォークとナイフでパンケーキをひとくちサイズに切るとまじまじと見ながら口に運んだ。


「ん?!」


おじさまの目が軽く見開かれた。


「なんだ、この食感は。そして甘い…」


すぐに二口目を口に運ぶ。


「これはどうしたんだ?」

「マドレーヌが作った」

「は?」


おじさまの視線がこちらに向く。


「えへへ♪」


笑ってごまかしてみるとおじさまはまたお皿に目をやって今度ははちみつを付けて3口目を食べた。


「…トリスタン、お前も食べてみろ」


そういいながらおじさまは今度はジャムをつけて口に運んでいる。


空いていた席にトリスタンが腰かけたので、トリスタンの前にもパンケーキを差し出した。


トリスタンはおじさまの顔を伺いみるようにしながらパンケーキを口に運ぶ。


「!?うまっ!!」


目を見開いたトリスタンはすぐさま2口目を口に入れている。


そんなに大きくなかったパンケーキはあっという間に残りわずかになっていた。


「トリスタン、ジャムやはちみつをつけるともっとおいしいわよ」


パンケーキが無くなる前にと思わず口を挟んでしまった。


おじさまも気付いたようではちみつの瓶をトリスタンの近くへ置いてくれた。


最後のひとくちにギリギリ間に合ったトリスタンははちみつをたっぷりとかけて口にした。


「!!!!!!!」


もうこれ以上開かないだろうというくらい目を見開いたトリスタンは声にならない叫びをあげていた。


隣でしっかりと味わうようにパンケーキを食べていたおじさまはフォークを置いた。


「…珍しい料理だった。ありがとう。…それで?」

「気に入ってくれたか?」

「あぁ。これをマドレーヌが?」

「そうだ」


お父様は私の方へ視線を投げると頭に手を乗せて撫でてくる。


相変わらず私を甘やかしてくるお父様だけど、私もこの大きな手で頭を撫でられるのは結構好きなのでおとなしく受けいれる。


「この店でこの料理を出してみないか?」

「は?」


おじさまの目が点になっている。


「この料理の基本のレシピをお前に教える。アレンジ等は好きにしてもらって構わない」

「冷めてもこれだけうまいのなら、お前の店で出せば良いじゃないか」

「冷めてもうまいが、焼き立ての方がもっとうまいんだ」

「おじさま、私からもお願いします。このカフェでアレンジされたこれを食べたいの!」


思わず口を挟んだ。


商売人のお父様がお金を生みそうなものを提供してくる様子を訝しんでいるようなのでつい。


「今回は商人として来たのではないんだよ。この子が作ったこれを世に広めたいと言うからお前なら正しくその気持ちを汲んでくれると思ったのでな」


お父様は私に視線を戻してまた頭を撫でてくる。


その目は家にいるときに見せるもので、仕事中に見せるキリっとしたものではなく、目尻の下がった優しい表情だった。


「わかった。うちとしてもこれは売れるだろうし、その話を受けよう」

「おじさまありがとうございます!」

「いや、良い話をありがとう。ところで、これは作るのは難しいのかい?」

「いいえ、とても簡単よ?」

「ならトリスタンに任せたいと思うんだが、いいだろうか?」


おじさまは隣のトリスタンに視線をやった。


「ええ!もちろん!」

「は!?おれ!?」

「あぁ。今のメニューにこれが追加になるときっと私一人では厨房が回らなくなる。それにアレンジを考えるのもお前の修行としても悪くない話だろう」

「頑張ってね!トリスタン!!」

「あ、あぁ、頑張る…」


突然の大役に戸惑っているトリスタンをよそにおじさまと話を詰める。


「今度改めて作り方を説明に来るわ。いつがいいかしら?」

「3日後なら店休日だ。私も作り方は知っておきたいから3日後でどうだろう?」

「わかったりました。3日後にまたお邪魔します」

「あぁ」

「ベランジェ、手間をかけてすまないな」

「いや、こちらとしてもいい話だ。ありがとう」


ふふっ♪

楽しみだわっ♪


あ、ケヴィンにハンドミキサーもう一つ作ってもらわなきゃ!

明日辺りに行ってみようかな♪

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