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3.有ると便利だ、ハンドミキサー ~魔道具職人とご対面~

ルドルフお兄様に連れられ、魔道具職人たちの工房へ向かった。


長兄のルドルフお兄様は超が付く真面目人間。


まぁ下に手のかかる弟妹がいればそうならざるをえなかったのかもしれないけれど。


おまけに口下手だから21歳になるのに女性の気配すらないの!

困ったもんだわ!


ほっとくとお兄様は無言を貫くから、ずっと私が喋ってたわ。

おかげでのどがカラカラよ!


馬車で町のはずれの方まで行くと工房はその一角にあった。


馬車の音でか外に年配の人が出てきた。


少し陰鬱な雰囲気のあるおじいさんだ。


「ジョスさん、お疲れ様です」

「話は聞いとる、来い」


おじいさんはジョスさんっていうのか。


ザ・職人!って感じで気難しそうって言うのが第一印象ね。


お兄様に続いて静かに工房に入っていく。


中へ入り見渡すと数個ある半個室みたいになったところに人がこもって作業をしていた。


入口すぐそばにある別室に通されると、形だけといった感じで置かれたテーブルとソファーだけがあった。


促されて座るとお兄様が話し始めた。


「会長から話があったかと思いますが、作って頂きたい魔道具がありまして」

「ああ、簡単には聞いとる。そこのお嬢さんの望むものをとな」

「ええ、詳しくお話させていただいても?」

「待て、お嬢さんには若いもんを付ける。若いと言っても実力は保証するがな」


――コンコン――


扉をたたく音に続いてドアが開いた。


そこに立っていたのは私と同世代くらいの少年だった。


ぼさぼさに伸びた髪に大きめの眼鏡をかけていて顔が良く見えない。


「ジョスさん、何か?」

「ケヴィン」


ジョスさんは少年に手招きをし、隣に座らせた。


「お嬢さん、こいつがあんたの魔道具を作るケヴィンだ」

「は?」


間髪入れず不機嫌な声が聞こえた。

もちろん私じゃないよ。


声のケヴィンは不機嫌そうなオーラを放っている。


「なんで俺がこんな子供の相手をしないといけないんです?」


――カッチーン――


「あんたも子供じゃない!!」


それに私なんて前世入れたらいい大人よ!

初対面だって言うのになんて失礼なのかしら!


思わず言い返したら隣のお兄様から咎める視線が降ってくる。


お兄様を一瞥し不満を伝えてケヴィンに視線を戻した。


無言のにらみ合い(ケヴィンの目は眼鏡と前髪で見えてないけど)を続けていると、口を開いたのはジョスさんだった。


「二人とも落ち着け。ケヴィン。このお嬢さんは会長からの依頼だ。お前も職人ならきちんと仕事をしろ」


ジョスさんは視線をケヴィンに合わせて話した後、私に視線を向けて続けた。


「お嬢さん。若くても技術は一人前だ。お前さんの欲しい道具をちゃんと作れるまずは一個作ってみねーか?」


腹は立つけど、私は大人だもの!ジョスさんの顔を立てるわよ!


こくりとジョスさんに頷き、少し引き攣りながらケヴィンに笑顔を向けた。


「わかったわ。よろしく、ケヴィン」

「ふんっ。仕事だからな」


ケヴィンも不承不承って感じではあるけど頷いてくれた。


「じゃあ早速商品の打ち合わせをしてこい。俺はルドルフ坊と話がある」

「ジョスさん、坊はそろそろ…」

「嫁の一人も見つけられねー半端もんは坊で十分だ」


お兄様がたじたじになっていて面白いけど、すたすたとケヴィンが歩いていくから途中までしか聞けなかった。


出遅れた分を詰めるため小走りになりながらケヴィンを追いかけると入る時に見た半個室みたいな部屋の一つに通された。


コの字に囲まれた部屋?は4畳くらいの広さがあって、奥に大きめの机とセットになってる椅子、壁には色々な道具が掛けてあった。


部屋の隅にあった踏み台を机の前に持ってくると顎でそれを示しながらケヴィンは椅子に腰かけた。


私がそこに腰を下ろすと、紙とペンを取り出したケヴィンが口を開いた。


「あんたが欲しい道具ってのはどんな道具か詳しく言え」

「紙貸してくれる?」


不満そうではあるものの、気持ちを切り替えたのかやる気になってくれているので私もきちんと合わせる。


無言でずいっと出された紙とペンを借りてハンドミキサーの絵を描き始めた。


「私が欲しいのは調理器具なんだけど、形はこんな感じね。あ、持ち手のところは握りやすい大きさがいいわ。それでここを回転するようにしてほしいの。あ、泡だて器わかる?あれを魔石で自動的に高速で動かせるようにしたいの」


描いた絵を指差しながら説明する。


「出来るけど…こんなもの何にするんだ?」

「お菓子を作るのよ!」

「お菓子??」


あ、そっかお菓子が存在しないから伝わらないのか。


「甘くておいしい食べ物よ!」

「それをこれで作るのか?」

「そうよ!卵とかクリームを泡立てるのに必要なの!」

「…わかった」


卵やクリームを泡立てるという調理方法が無いのでぴんと来ないらしく、不思議そうにしている。


「あ、出来るだけ軽くしてもらえると嬉しいわ!」

「ああ」

「あと回転のスピードを何段階かで調節できると助かる!」

「…ああ、とりあえず試作してみる。明日の昼には出来ると思うけど?」


思ったより早いな。

まぁ回転するだけだものね。

機械みたいにモーターだの回路だのない分シンプルなのだろう。


「じゃあ明日見に来るわ。午後で良いかしら?」

「大丈夫。ってかこれだけでいいのか?」

「今のところは?今後は状況にもよるけど、もしかすると大型の調理器具を作ってもらうようにお願いするかもだけど」


お父様と相談してからになるけど、どうせならケーキ屋さんかカフェみたいなものを作ってお菓子を広めたいのだ。


「わかった。とりあえず明日の午後な」


話は終わったとばかりに私から視線を外し、私の描いた絵と机の上にあった魔石を見比べ始めた。


「じゃあよろしくね」


私も目的は果たしたので席を立った。


お兄様のところに行こうと廊下に出たところでお兄様がこっちに向かっているのが見えた。


「終わったか?」

「ええ。明日試作品を見に来るころになったわ」

「早いな」

「本当に!でもこれがうまくいけばいろいろなお菓子が作りやすくなるの!」

「そうか」


お兄様と合流するとほほ笑みながら頭を撫でてきた。


お父様といいお兄様といい、私もう12歳なんだけど。


と思うけれど、まぁ嫌いじゃないので素直に受け入れる。


明日の試作品を楽しみに家路についたのだった。


あ!そうそう、その日の夜に家族に出したマドレーヌも大絶賛されたわよ!

やっと一人、身内以外の異性が出てきました!


とりあえずまだ子供なのでそういう展開は先のお話ですが…


今後も不定期更新していきますので温かい目で見守ってくださいm(__)m

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