2.やっぱりマドレーヌは外せない ~即席ベーキングパウダーを作ろう~
我がグラン家の朝食にパンケーキが定番になって数日、私は新たな目標に燃えていた。
あ、次兄だけは甘すぎるって言うからベーコンや卵と一緒に食べるのを推奨してあげたわ!
そしたら他の家族もみんな気分で真似しはじめたけど…
…クレマン、仕事増やしてごめんなさいね…
ふと視線を遠くへ向けながら、朝一からバタバタしているクレマンに視線を向けた。
ちなみに今朝の私の朝食はおかず系パンケーキよ!
甘いパンケーキとしょっぱいベーコンの組合せが良いのよね♪
そうそう、私の新たな目標、それは自分の名前と同じマドレーヌを作りたい!ってこと。
そのためにはベーキングパウダーを作りたい。
重曹だけだと味とかが微妙になるから酸がいる…
日本だとクエン酸売ってたけど、こっちにはあるのかな?
重曹はアク取りとかで使ってるって確認したから確保できた!
んーーーー確か酢とかレモンとかでも代用出来たきがするけど、それだと日持ちがなぁ…
とりあえずお父様たちに商会で取り扱いが無いか調べてもらおう!
今日はレモンで作っちゃえ!
ってことで卵に砂糖、はちみつ、小麦粉、バター、重曹、レモンの果汁と皮…型は確か昔は貝殻だったって聞いたから貝殻は取り寄せてもらったから完璧!
順番にボウルに混ぜてっと…
あ、またクレマンが興味津々に見てるわ。
今度また教えるから待ってなさい!
材料を混ぜたら貝殻に流しいれて魔道具のオーブンへ。
オーブンがあってよかったわ!
さすがにオーブンは研究してなかったもの。
ルンルンで作っているとクレマンが我慢できなくなったのか声をかけてきた。
「お嬢様、いえ、師匠!今度は何を?」
「ふふふー!よくぞ聞いてくれました!!!今日は特製マドレーヌよ!!!」
「おぉ!師匠の名前を冠した菓子ですか!それはなんと素敵な!」
…昔、別のマドレーヌさんが作ったんだけど…
まぁこの世界の人たちは知らないからいっか?
「焼きあがったら食べさせてあげるから待ってなさい」
「「「俺も食べたいです!」」」
とドニ達がキレイにハモって反応してきた。
その反応は計算に入れてるから大丈夫よ♪
そんなこんなしているとマドレーヌが焼きあがった。
味見をしてみると、うんおいしい
「さぁどうぞ」
「「「ありがとうございます!頂きます!!」」」
「「「うまいっ!!!」」」
料理人たちの反応に満足して家族用の分をお皿に並べて取っておく。
「これは夜にまたお父様たちに食べてもらうから食後に出してちょうだいね」
「はい!」
さて、マドレーヌも問題なくできたので課題のハンドミキサーとクエン酸、後はお菓子の型とか、必要そうなものを相談しよう。
執事のセバスチャン(記憶を取り戻したときは思わず笑ったわ)に馬車を用意してもらって商会へ向かう。
もちろんお父様の部屋まで顔パスで入れるのでノックもそこそこにドアを開ける。
「お父様、ご相談が!」
「あぁマドレーヌ急にどうしたんだい?」
末っ子の私は突然仕事場に押しかけても怒られない。
末っ子最強!
お父様は両手を広げて私を迎え入れてくれると私を膝の上に抱き上げた。
…お父様、私もう12歳なのだけれど…
まぁそれはさておき、本題へ
「お菓子の件でお願いが」
「また新しいお菓子を発明したのかい?」
「それもあるし、新しいものを作りたいから材料と道具が欲しいの」
「ふむ、詳しく聞こうか」
商売人の顔になったお父様が私を応接用のソファーへおろしてくれた。
向かい側に座ったお父様に説明をする。
「魔道具とお菓子の型を作って欲しいのと、他の国にこういうものがないかを調べて欲しいの!」
近くにあった紙とペンを取り、カカオ豆やバニラビーンズの絵を描いていく。
「あとは、柑橘類の酸味を粉にしたようなものがあるかに調べてほしいわ」
矢継ぎ早につげる私にお父様も手帳を取り出しながらメモを取っていく。
「その絵の木の実はほかに特徴はあるかい?」
「両方ともどちらかといえば温かいところにあるかも、こっちの細い方は蔓が伸びてるかもしれないわ」
とバニラビーンズを指す。カカオの方に指先を向け、
「こっちは…そうね、結構大きい実のはずで、木ももしかすると10mくらいの大きい木になってるかも」
「ふむ、探してみよう。…それにしてもマドレーヌ、キミはどこでそんな知識を身に付けたのかい?」
…どうしよう…
う~ん…
信じてもらえないかもだけど、これからのことを考えると隠すのも大変かな…
「あのね、信じてもらえないかもしれないけど、私前世の記憶があるの」
「前世?」
「そう。こことは違う世界で、多分18歳まで生きてそこで何かの原因で死んだの。パンケーキとかのお菓子は私がその時によく作ったり研究していたものなの」
お父様は小さく息を付くと視線を私に向けてゆっくり語った。
「…そうか…信じがたい話ではあるが、素晴らしいものを作って見せたのも本当だし、何より可愛い娘の言うことだ。信じよう」
「…ありがとう」
「あぁ」
あっさりと信じてもらえて安堵した。
いつの間にか体がこわばっていたことをこの時に知った。
「そうだ、魔道具の話だが、私が間に入ってやり取りをするよりもお前が直接話をした方がわかりやすいだろう。ルドルフに案内させるから行ってくると良い」
「!それは助かるわ!ありがとうお父様!」
まさか工房に行かせてもらえるなんて!
あ、ルドルフは長兄で、工房って言うのは魔道具職人の人たちが作品を作ってる場所のことね。
前世で言う機械みたいなもので、電気の代わりに魔力を使って動かすようなものが多いの。
魔力を直接流し込むか、魔石を使って作るかの2種類があって、魔力が少ない人たちや極まれに魔力が無い人がいるからそういった人は魔石を使ったものを使うことが多い。
あとは子供とか魔力の制御がうまくできない場合ね。
小さな機械であれば魔力を流し込むタイプでも使える人は多いけど、大きい機械になると必要な魔力が増えるから、そうなると魔導士たちくらいしか使えないかも。
王宮のお抱え魔導士なんて転移装置まで動かせるらしいわよ!
瞬間移動とかうらやましすぎる!
あ、話が逸れた。
「お父様、工房にはもう今日行ってもいいの?」
「ああ、話をしておこう」
机の上にある呼び鈴のようなものに手を置くと魔力を流し始めた。
これは電話機みたいなもので、魔力を流すとこの魔道具同士をつなぐことが出来る。
離れるとその分魔力を使うから普通は同じ町の中程度までしか使えない。
『はい』
「私だ。マドレーヌを連れて工房に行ってくれ」
『すぐ迎えに行きます』
魔道具を通してお兄様の声が聞こえた。
数分もしないうちにお兄様が迎えに来てくれたので今から工房へ行ってきます♪
…申し訳ありません、ジャンル恋愛にしてるのに、まだ家族のみです(;'∀')
次話では一人出てきます!
…たぶん(;'∀')




