第89話 マネシス
呼び出された5人の龍魔とヨゴレは、いまだにポーズを決めたままだ。
「……す、すごぉ~い! パチパチ!」
前の時と全く同じで顔を引きつらせながらも一応褒めるマヌケ。
――いやいや、自分でパチパチとか言っちゃってるじゃん。
「ていうか主様の格好なに?! メッチャかわいいんだけど! いつものセイフクってやつもいいけど、その服も可愛い! ヤバい! くっ付いていい?! 顔スリスリしてもいい?! 匂い嗅いでもいい?! ブフォッ?!」
私は要求がおかしな方向へ向かっているクモにアッパーブローをくらわして、今にも向かってきそうな大量の天使族と対峙する。
「主様、ここはワレらにお任せ下さい!」
「主様は先に行ってくれ!」
「ここが片付いたら後を行っていくよぉ~。」
「ちょっとアンタ! 気を付けなさいよね。」
皆はそういうとそれぞれが天使族へ向かって攻撃を仕掛けた。龍魔の力を纏った5人はともかく、ヨゴレは少し苦戦していたが、そこは隣でコンがしっかりサポートをしている。
その様子に安心した私とマヌケは上空へと羽ばたいて行く。
テンガラスの空船が浮かんでいた高度まで上がり、それ以上の高度へどんどん上昇していく。次第に酸素は薄くなり気温も低下していき、あっという間に氷点下の世界に突入する。そこで、自分たちの周囲だけを私の空間魔法で地上の層の空間と入れ替えて対応した。
やがて、成層圏を通過して中間圏に差し掛かるところに、スペースコロニーのような巨大な物が浮いていることをアイレンズで感知した。
それは周りの色と同化させていることで、目視で見つけることなど不可能に近かった。更にこの高度まで上昇することはこの星の人間や機械人、あの龍魔達でも無理である。それ故に天使族の隠れ家としては一番適しているといえる。
――間違いない。ここが天空界か天上界のどちらかだね。
《私の推測ではここは天空界です。》
――そうなの?! でもヘタレも大天使とかいうやつもここにいるよね!
《それは間違いないでしょうね。》
私とマヌケはそのスペースコロニーの中へ入り込んだ。
その中は膨大な敷地の中に、地上の自然が再現されていた。空気も普通にあるようで、重力は弱い。そして壁沿いに並ぶ、夥しい程のロリババアが入っていたような機械のカプセル。その中には人の形をしたものが液体の中で培養されていた。
「とうとうここまで来てしまったか。もう後には引けんぞヘタレとやら。」
「……」
声のした方を振り向くと、そこには私を真っすぐ睨み付けて来るヘタレの姿と、大天使の姿があった。
「……なんでここにいるのかなぁ?」
「……」
「何度も殺されそうになりながら、どうしていつも戻ってくるのかなぁ?」
「……」
「アナタのそう言うところが大っ嫌いなんだよ! お願いだから……私の前から消えてよ!」
ヘタレは神光モードを発動して、腰の剣を引き抜いて私に斬りかかってくる。それを微動だにせずに真っすぐ見つめる私。
「アンブッ?!」
ピタッと私の身体の前で止められる黄金の剣。
「……な……んで……あなたはいっつも!」
私を見るヘタレの目からはポロポロと涙が溢れこぼれていく。私は優しくヘタレの腰に手を回し強く抱きしめる。
「ずっと守ってくれて……ありがとう、乙羽」
「……さく……や」
そう、ヘタレはずっと私を守ってくれていたのだ。
あの王都の地下に初めて現れたのは、私とマヌケの写真を見たから。それは間違いないが、私達の生存をカオスに知られたら危険だと判断したからだ。わざとひどい言葉を浴びせ、私達に目立った動きをさせないようにしていた。
しかし私達の存在はカスに見つかってしまい、テンガラスでのクモの拉致から戦いに発展してしまった。あの時もヘタレは見守ってくれていたのだ。
そして、先日の大天使との闘いの時、間違いなく私は死ぬ運命にあったと思う。そこにヘタレは駆け付け、私に剣を刺して殺したように見せかけて魔力を渡してくれた。
――私の知らないところでもずっとずっと守ってくれるんだからこの子は……。
「それでは、交渉決裂ということでいいのかな?」
「きゃっ?!」
突然大天使はマヌケの背後へ周り、マヌケの胸に手を置く。
「こいつは私が作り出したのだ。壊すのも簡単なことだと言ったはずだぞ。」
「ま、待って! この2人に手を出すなら私は絶対に力を貸さない!」
「ふん、お前を実験し続ければやがてはその力もコピーが作れるだろう。だからお前はもういらん。」
「な……」
《それは無理ですね。あなたはその子のコピーを作れない。神機……いや、「マネシス」。》
「そ、その声は神成?! 何故お前の声がするのだ! 応えろ、「ウラシス」」
《アナタの気持ちも十分わかります。しかし、このやり方は間違っている。私達は次の世代へ……この子らへ後を託すべきではありませんか? 「アクシス」がそうしているように。》
「うるさい! どうして無口なお前がそんな流暢に喋っているのだ! それにそんな言葉づかいでは無かっただろうが!」
《これは桜夜ちゃんのAIスマコのおかげですね。私は今それと同化しているので。》
「こ、この! 誰がなんと言おうと私はここから抜け出さなければいけないのだ! こいッ!」
大天使はマヌケを突き飛ばし、代わりにヘタレを捕まえてどこかに連れて行こうとする。
「神成モード、雷光石火の術」
私は瞬時に大天使へ追い付き、ヘタレを奪い返す。
「なに?! お前……それはまるで神成ではないか! 無限キャノン!」
大天使は巨大ロボットを出現させ、カスを葬ったあのエネルギー砲を放つ。
「神光モード、光月流、光派心壁」
大天使の攻撃をヘタレが光の壁で防ぐ。
「マヌケ」
私はマヌケに手を差し伸べて、引き寄せる。
「神機ポジトロンモード、プラズマカノン!」
マヌケの2丁拳銃が大きなレーザー砲へと姿を変え、そこから高エネルギーが凝縮されたプラズマ砲を発射する。
「この愚か者め! お前は私のコピーだ! オリジナルに勝てるわけがないだろうが!」
そういった大天使の無限キャノンの威力が上がる。それによりマヌケのプラズマカノンが押し戻された。
「それでも……そうだったとしても、アタシはアタシだぁあ!」
突然、マヌケの魔動力が跳ね上がる。
「ツインバスターカノン!」
先ほどよりも遥かに威力が上がった高出力エネルギー砲が巨大ロボットへと迫る。




