第88話 いざ参らん
私は今ログハウスで少しまったり中だ。
まぁ少しと言いながらここ3日間はベッドの上でゴロゴロしている。
「あ~る~じ~さ~ま~、あ~そ~ぼ~よ~。」
うるさいクモがうつ伏せで寝ている私の上に飛び乗り、腰の上でピョンピョン跳ねる。その様子をチラッと見ただけで、また視線を戻す私。
「ねぇアンタさぁ~いつまでそうしているつもりよ。ずっとうつ伏せで寝てたらペッタンコなお胸がまた小さくなるわよ。」
近くで座っているヨゴレがちょっと腹立つ嫌味を言ってくるが、またチラッと見るてはすぐに視線を戻す私。
「アンブ、ご飯だよ! 一緒降りよ!」
下からマヌケが上がって来て手を差し伸べる。すると私は一瞬で飛び起きて、マヌケの柔らかくていい匂いがする身体へダイブすると、そのままくっ付き虫のようにはりつく。
「なッ?! アンタ……この扱いの差はなんなのよ。」
「もう主様のいじわる~! もうこうなったらヨゴレ様で我慢しよっと。ヨゴレ様、あそぼ?」
「我慢って何よ! 失礼ね! アタシだって構ってほし……もう! 何でもない!」
プンプンと怒りながら下に降りて行くヨゴレ、その後を追って下に降りるマヌケにくっ付いた私とクモ。
「あ、やっと降りてきましたね主様。おはようございます。」
コンが美しい笑顔で挨拶をする。その後ろから突然現れた少女に唇を奪われる私。
「……えっ?! えぇぇぇええ?!」
私とその人物の口づけで一斉に悲鳴が上がる。
「ぷはぁ~、やっと降りてきたのぉ! 遅いの! 早くご飯食べるの!」
一同沈黙の後そう言葉を発するその子は、見た目が小学生な205歳のロリババアこと、北の勇者候補だ。
この子はコンの懸命な治療で普通の生活を送れるほどに回復していた。それでも来ている服を少し捲ってお腹を見てみると、まだ身体の中身が少し透けていてよく見るとグロイ。
でもぱっと見は分からないくらいにコンが人工で作った肌が馴染んできたようだ。
そしてこのロリババア、事あるごとに何故かキスしてきやがる。外国人のスキンシップみたいなもんだと適当にあしらってはいるんだけど、何故かその度にみんなが騒然となっている。
キスなんて普通にヘタレとしたことのある私はこんなことで動揺しないのだよ。大人の階段を上った大人の女性の余裕なのさ。
――全く、皆子供だなぁ~。
《ふふふ。桜夜ちゃんとキス出来るなら私も身体が持ちたいですねぇ。》
「スマコちゃんってば、そんなのダメだよ! キ、キスはいけません! アタシが絶対に許しません! ロリちゃんも今後は絶対やっちゃだめだよぉ!」
「いやなの! アタチはアンブとキスちたいの! キスが一番好きなの! 一番感じるのぉ!」
「アタシなんてまだ3回しかしてないのに! コンなんか4回だよ?! しれっと4回もするなんて主様浮気ものだよぉ! ふぇ~ん!」
――う、うるせぇ。こんだけ人がいたら騒がしくてしょうがないわ。
女の子同時で何やらまだ言い合っている中、私は席についてマヌケとコンが作ったご飯をハムハムする。
「主様も大変だな。モテモテじゃねぇか。」
――私モテてんの?
「ワレワレも男が3人しかいないから肩身が狭いもんな」
――確かにそうかもね。実はアンタらが一番可哀想かもね。
「多分、こうしてボクらが主と一緒にいるとおそらくは……」
クモ「ちょっと、なんでアンタらだけ主様とご飯食べてんのよ! ずるいわよ! あっち行きなさいよ!」
ヨゴレ「そうだよ! 男はあっちの隅っこで食べなさいよ!」
マヌケ「み、皆ぁそんなこと言ったら可哀想だよぉ……」
コン「それではマヌケ様は主様とご飯食べなくてもいいのですか?」
マヌケ「それは嫌」
――マヌケさぁん……突然真顔にならないで? マジで怖いから……。
さて、おふざけはこのくらいにして考えをまとめよう。実はここ3日間はゆっくりと休養をとって身体を休めていたのだ。
国の方は落ち着きを取り戻したからいいけど、私達にはまだやるべきことが残っている。それはヘタレの救出と、大天使の計画を阻止することだ。
あの時ヘタレに助けてもらったことは事実であり、訳あって私達の敵のフリをしている。そして何かしらの理由で大天使の計画を手伝わされているはずなので、それを絶対に阻止してみせる。
目指すはテンガラスにあると思われる天空界。
私はあの空船へ向かう為に上空を飛んでいた時、微かにアイレンズが空船の更に上空に何かがある反応を感知していたことを見逃さなかった。
今日はそこの場所へ行ってみる。一旦、龍魔の皆とヨゴレとロリババアは異空間へ収納する。
そして、マヌケと手を取り合い私はテンガラスへ空間転移した。
あの時と何も変わらない雰囲気のこの場所。しかし、すぐにそれは勘違いだと気づかされることになる。
どこからともなく、現れる大量の人影。
それは人間でも機械人でもない、天使族と呼ばれている者達。
人の姿をしているが、人間のような感情は一切見られず、機械人よりもはるかに強い魔動力を宿している。
一同に魔動力を発動したかと思えば、一斉に飛び掛かってくる。
「神成モード、雷光石火の術」
私はまたあの時の着物ワンピースに変身し、白い稲妻を纏った状態で向かってくる全ての天使族を目にも止まらぬスピードで吹き飛ばしていく。
「ア、アンブってば……その可愛い見た目に反して凄まじいねぇ。」
しかし、その天使族は手足の骨を折ろうが、背骨を折ろうが、コアを破壊しようが、それに構わず向かって来るのだ。その姿はまるでゾンビの様に。しかも、その数がどんどん増えてしまっている。
コアを破壊された状態では魔動力を発動できないみたいだが、その身体が止まることがない。それは、この者達がすでに死んでいることを確定付けている。
「神機ポジトロンモード、バスターカノン」
マヌケは高出力エネルギー砲を放ち、その身体全てを消滅させていく。
「早く……終わらせてあげよう。」
「……うん。」
「焔遁、砲炎火の術。」
私の攻撃は神成モードを100%で開放したので全てが格段に上がっている。私が放った黒い炎の閃光はその存在全てをのみ込む勢いで、どんどん天使族を焼きつくしていく。
しかし、どこからともなく次から次へと湧き出て来る。
《これではらちがあきませんねぇ。桜夜ちゃん、ここは皆に手伝ってもらいましょう。もう話はしてあるので。》
――さすがスマコ! みんな、お願いだよ!
私はすぐに異空間を開く。
デス「我らの主が呼ぶところ!」
ポチ「いつでもどこでも参上する!」
インコ「どんな指示も命令も!」
クモ「我らに出来ぬことはなし!」
コン「この忠実なる6つ刃が!」
ヨゴレ「いざ、参らん!」
ロリババア(声だけ)「なの~!」
どこかで聞いたことあるようなその恥ずかしいセリフとポーズを惜しみも無く披露する龍魔と愉快な仲間達。
私は久しぶりに思ってしまった。
――引くわ~。




