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第86話 真の神成

 私は薄れゆく意識の中で、微かに聞こえた声に耳を傾ける。


「光月流が奥義、光月流桜こうづきりゅうおう


「っ?!」


 その言葉の後に自分の胸に鋭い痛みを感じる。そこには見覚えのある黄金に輝く剣が深々と私の心臓に刺さっていた。

 それとは違う形の剣がカスの心臓にも刺されており、そのままうつ伏せに倒れて動かなくなっていた。


 そしてその目線の先には、恐ろしい程の憎悪を顔に滲ませた空中に浮いているヘタレの姿があった。


「どういうつもりなのかなぁ?」


「……すまん。これはお前の役目であったな。それよりも、608号まで一緒に殺さなくても良かったのではないか? いくら人形でもこのレベルを作るのは大変なんだが。」


「私の目的はその子を殺すことだけだと言ったはずだよ。私以外が絶対に手を出さないのがアナタに手を貸す条件だったはず。それを破って先に手を出したくせによく言えたものね。」


「……まぁいい。これでお前の念願の目的も果たせたわけだ。後は今後の計画の為に協力してもらうぞ。609号、後はその599号を殺せ。」


「……はっ。」


 その言葉を最後に大天使とヘタレはどこかへ行ってしまった。


「アンブ? ねぇ、嘘だよね? もう嫌だよ……どうしていつもアタシの前からいなくなろうとするの? 置いていかないでよぉ……」


 口から血を流す私を抱きかかえながらボロボロと涙を流すマヌケ。その後ろから巨大な斧を振りかぶり、マヌケに向かって振り抜いているオス。


 そして私は今、その全てがスローモーションのようにゆっくりと動いている不思議な感覚に見舞われていた。


――これの感覚は……何?


――これは融合ですね。


――融合?! なんの? ってかアンタ誰!


――私ですか? 全くもう……ずっと一緒にいたではありませんか。神成ですよ。それともスマコと名乗った方がよろしいですかね?


――スマコなの?! 神成ってどういうこと?!


 それからスマコは自分自身について説明を始めた。もともと私の中にいた神成は、あのクズ神によってAIのスマコの中に意識を統合されたらしい。というかそれを神成は望んだのだそうだ。

 しかし、無理やり意識をスマコと共有したために神成は力を2つに分けることになる。それが、あの魔王の力だ。あの力を開放した時に出て来た悪スマコが魔王の力側の神成。基本的に意識は一緒なのだが、言葉使いと態度が悪くなってしまうそうだ。


 つまり、神成は魔王の力と2つで1つらしい。


――さて、そろそろ真の力を発揮する時ですね。今こそ私の2つの力を1つに。


 そして、マヌケに抱かれていた私は突然眩い光と衝撃波を放つ。その衝撃波でマヌケを斬り裂こうとしていたオスは遠くへ飛ばされる。


 突然のことに全く何が起こっているのか分かっていないマヌケだが、私が無事だと分かるとまたしがみ付いて泣き出した。私はマヌケの頭を優しく抱き寄せて、オスの方へ向き直る。


――神成……いや、スマコ行くよ!


 私は忍術発動のあの忍者ポーズを取る。すると、稲妻のようにビリビリとした青いオーラと、黒く闇に飲まれそうな漆黒のオーラが混ぜ合わさっていく。


神成カミナリ開放、100%」


 私を包み込むように真っ白の稲妻のオーラが身体に纏わりついていく。すると、私の来ていた服がどんどん変化していく。


 私のトレードマークの赤いマフラーはそのままで、忍者のような黒と桜色の綺麗なピンクがアクセントの着物ワンピースに、魔法少女のような大きめのリボンやイヤリングなどが装備されていく。


――なにこれ、超~可愛いんだけどぉぉおお!


《ふふふ、よくお似合いですよ主様。》


――なんか主って呼ばれるのもおかしな話よね。真実聞いちゃったし、アンタは名前で呼んでよ。私はその方がいいな!


《それでは桜夜ちゃんと呼びますね》


――うん!


 私の突然の変身に、顔を赤らめながら目を丸くして驚いているマヌケ。


「か……かわ……いい。」


 そして、それには構わず私に向かって巨大な斧を振りかぶっているオス。その斧には全く構わず、マヌケを抱きかかえて軽く歩き出すように動き出す。


 すると、私の通った後には稲妻が走った後のような光の残像が残り、それに触れた瞬間にオスの全身へ電撃が走る。電撃には強靭な盾も鎧も全く意味を成さない。


「ぐああぁぁぁ?!」


「忍殺……龍雷拳」


 私は稲妻の如し光の速度でオスの懐に入り、稲妻を纏った状態で回転を加えた本当の「龍雷拳」を放つ。その拳は軽々とオスの強靭な盾も鎧も破壊してしまい、その勢いは盾を持っていた腕の骨までをボロボロに粉砕してしまった。


 声にならない悲鳴を上げながら吹き飛んだオスはそのままうつ伏せに倒れてしまった。


「……どうやらここまでのようだ。殺せ。」


「……」


 私は何も言わず、マヌケを抱きかかえて空間転移する。


「全く、楽に逝かせてもくれぬのか。そっちに行けばまたお前に合えると思ったのにな……カス。俺とお前は2人で1つ、カオスだったな。ふふ……。」


 オスはそう呟くと、自身の折れた手で巨大な斧を空中に放り投げる。それはやがて勢いよくオスに向けて落ちてくる。


「今逝くぞ、カス。」


 そしてその斧の鋭い刃によってオスの首が飛んだ



 それを遠くから見守った私は、港町のログハウスに戻っていた。


 インチキやエドルドによって、とりあえず国民達は落ち着きを取り戻しつつあるようだ。全ての機械人はキリサメを含めてすべて死んでしまった。勇者候補の血液がないと生きながらえない運命に終わりを告げたのだ。


 因みにシリウスは機械人ではなく人間であった。本当なら死刑か監獄行きがいいところではあったが、コンが引き取った。コンの助手ということでは有能な能力を持っているし、この手の危険人物は監獄に入れておくよりもコンが面倒を見ていた方がいいとインチキも納得している。


 そして、デスとインコとポチには薬剤が入ったカプセルをセットした後に、迷宮内にいるはずの南の勇者候補を探してもらっていた。

 すると、その人物はあろうことか迷宮の最下層に辿り着き、魔物を自動で作り出ようにプログラミングされていた機械を破壊してしまっていたのだ。それにより、迷宮内の意思を持たないデータだけの存在である魔物は全て消滅してしまった。


 その勇者候補は、もともと中層くらいにいたらしいが、突然魔物が全くいなかったことで陽気にどんどん奥に突き進み、気が付いたら最下層にいたらしい。掟に従い、不思議な機械を破壊してルンルン気分で帰宅途中のところをあの3人に見つかった。魔物姿の3人を見た瞬間に気絶してしまったので、そのままログハウスに連れ帰って来たのだった。

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