第84話 オスの猛攻
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オスの衝撃的な事実発言に戸惑いを隠せないアタシ。
――だめだ、思考が追い付かない。
「さて、お喋りは済んだ。そろそろ行くぞ?」
オスは巨大な斧を高く振りかぶり、豪快に振り下ろす。
「神の身前で懺悔せよ、聖光地圧」
地面に振り下ろされた斧からアタシを中心に地割れが起き、その周りの地面が盛り上がって両側から圧し潰すように厚い土の壁が迫っている。
アタシは瞬時に翼を広げ上空へ逃げようと飛び立った。
すると、それを待ち構えていたかのように空中で斧を振りかぶっているオスが迫る。
「具現、ギガントアーム」
アタシは咄嗟に機械で出来た大きな腕を具現化し、その斧を受け止める。しかし、巨大な機械の両腕で受け止めたにも関わらず、腕の約半分程は斬り込みを入れられてしまった。尚も、もの凄い力技で押し込まれそうになる。
「ツインバスターカノン」
アタシは無防備なオスに向けて高出力レーザー砲を放つ。その攻撃はしっかりと直撃したにも関わらず、その鎧には傷一つ付いていなかった。
オスはカスと違って、防御力に特化した力を持っており、その強靭な身体と更に身に纏っている鎧にまで魔動力を纏わせている。また、カス程ではないがその攻撃力もやはり強力であり、その辺の機械人など比べ物にならないのだ。
今のアタシでは、オスにダメージを与えるのはおろか、その強靭な鎧を貫くことは不可能に近い状態だ。対して、アタシの具現の力やポジトロンモードは魔動力の消費がとても激しい。まだ余裕があるとはいえ、このまま持久戦になればこちらが力を使い果たしてしまうのは目に見えている。
――何か……手は。
「滅べ、聖光石雨」
オスは間髪入れずに、地面に斧を振り下ろし地中の大小全ての岩を空中へ浮かべる。そしてそれはまるで隕石の如く、アタシに向かって高速で降って来た。
アタシは身体を翼で覆ってガードするが、強烈な岩の連続衝突により、どんどん翼が削られていく。
――このままじゃやばい! なんとか……
「ということで行くよ」
「ッ?! アンブ!」
アタシの翼の中にフワッとサラサラの髪を靡かせて舞い降りた愛しき人。
何が、「ということ」なのかは相変わらず分からないけど、その姿と声を聞いただけでも嬉しくて心がドキドキしてしまう。
そして、アンブはその細い腕で優しくアタシの腰に手を回しギュッと抱きしめられた。もうそれだけで痛みや疲れが飛んでいくようだった。
そしてアンブは瞬間にその場から少し離れた場所へ空間転移を行った。
標的がいきなり消えたことに困惑している様子のオス。
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――危なかった! あのままだったらマヌケの綺麗な身体に傷を負わせていたかもしれなかった。そんなこと私が断じて許すまじ!
私はマヌケの身体に怪我がないか、弄る様に手を這わして確認した。
「ちょ?! ひゃん?! あはははは、くすぐったいから! ストップ、ストップ!」
――良かった。どこにも怪我はないみたいだね。
《主よ、アイレンズで見れば一発だろが……》
――いいの! 私は自分で確認したいの!
《ただ触りたいだ……》
――さて、仕切り直しだよ!
私はスマコの言葉を遮り、マヌケと頷きあって再度オスに向けて攻撃を仕掛けるのだった。
「焔遁、砲炎火の術」
「ツインバスターカノン」
マヌケの高出力エネルギー砲と私の黒炎魔法が交わり、オスへ向かう。オスはその攻撃を瞬時に察知し、両腕の強靭な盾を構えてそれを受け止めた。しかし、2つの攻撃が交わったことで威力が増しており、徐々に後ろへ後退していくオス。
「何ッ?! やはり出てきよったかアンブ……ふん!」
オスは自身の足を地面に食い込ませ、踏ん張りを効かせてその攻撃に耐えて見せた。
――おばあちゃんが言ってた。力を合わせるというのは、足し算じゃなくて掛け算なのだと。
――桜夜よ、数字の0になんの数字をかけても所詮0のままじゃ。それは2人いても1人の力と何も変わらないんじゃよ。しかし、力を合わせるということは想いの強さに比例する。その想いの強さで1にも2にも3にも力は増大していくものじゃ。即ち、相手と自分、その両方の想いやりを1つにした時……それは足された力ではなくて、何倍にもかけられた凄い力になるんだよ。
おばあちゃんとの会話の記憶が蘇る。
そう私達は今、想いの力を合わせて何倍もの力を発揮している。それは自分達でも気付かないほどに強力な力になっているのだ。
「くっ?! この俺が押されるなんてな……本当に恐ろしい奴らだよ」
オスは私達の攻撃の勢いを横にずらしながら、突進してきた。
「「氷遁……ドラゴンウェイブ」」
マヌケが放った水の龍を私の氷遁で氷の龍へと姿を変えた。
そして、その氷の龍は意思を持っているかのように牙と爪を剥き出しにオスへ攻撃を仕掛ける。
その龍へ向かって巨大な斧を振り抜くと、その斧を氷の龍は口を開いて受け止めてみせた。オスの斧は氷の龍が牙で咥えている箇所からどんどん凍らされていく。
「聖光炎上」
しかし、オスは自身の斧に炎を纏わせてその氷を溶かしていく。そのまま氷の龍も溶け出し、やがて縦に引き裂かれてしまった。
私はオスが斧を振り下ろしたその瞬間にはもうその背後から攻撃を仕掛けていた。
「忍殺、桜雷拳」
「お前ならそう来るよな。聖光の針」
オスの背中の鎧からたくさんの光の針が伸びる。背後から勢いを付けて攻撃していた私はその大量の針が全身に突き刺さり、串刺しの状態のまま空中へ持ち上げられる。
「と見せかけて、ここだろ?」
オスは串刺しの私には目もくれず、自身のすぐ横から迫る私に盾で殴り付ける。すると串刺しの私と盾で殴られた私が消滅する。
「なんどやっても無駄だぞ?」
それと同時にオスの視界の下側から私は拳を向けていたのだが、それすらもオスは先読みしており、私の腹部にカウンターの拳をめり込ませてその闇分身体も消滅させる。その流れで、遠くから狙っていたマヌケの銃弾も、盾で簡単に防いでしまった。
「やめておけ、お前らの戦闘は完全に見切っている。それにお前らの使い魔達はまだ迷宮にいることも分かっているぞ。つまり、お前たちに勝ち目はない。」
悔しいがその通りだった。
オスの強靭過ぎる防御力を攻略することは不可能に近かった。あのカスでも全員の力を持ってやっと貫くことができたのに、今は私とマヌケしかいない上に、カスよりも硬いオスの防御を貫くことはとても絶望的であった。




