第77話 クソブス
私は意識を失いかけているヨゴレを揺すっているんだけど、元に戻らない。こんな時にコンやマヌケがいたらいいんだけど、今は自分しかいないので本当に困った。
――ち、ちょっとスマコ! これどうしたらいいの?!
《ん? んなもん一発衝撃かましてやれば起きんだろ。》
――あぁ……衝撃を与えればいいだけか! 私が今まで一番感じた衝撃をお見舞いしてやる!
「忍法、電気ショックの術」
《おい! 変な術ばかり作るな!》
私はヨゴレの貧相な2つのお山ラインに沿うようにスッと手を這わせる。すると、ヨゴレは電気ショックを受けたかのように身体をビクつかせ、変な声を上げながら目を見開いて正気を取り戻した。
「ひゃぁんっ?! ち、ちょっとアンタね! こここ、こんな時になんてことしてくれてんのよ!」
《ヨゴレ様、落ち着け。それと思念で喋れ。ここはもう適地だぞ。》
思念「あ……ご、ごめんなさい。てかなんでアタシが怒られてるのよ?!」
何かよくわからないことを言っているヨゴレを無視して背中に担ぎ、アイレンズとスキル感知をフルで活用しながら素早く私達は船内を進んで行く。
思念「それにしても大きな船ね。ここにテンガラスの勇者候補がいるの?」
《間違いはないだろう。そして、おそらくは……。敵だ! 気を付けろ!》
思念「え? ひゃんッ?!」
私達を見つけた大勢の機械人が魔動力による攻撃を仕掛けて来た。
――敵の数が多い! まだ中にこんなにいたの?!
「暗遁、闇分身の術。からの氷遁、氷手裏剣の術」
《おっ、主が結構長文喋ったぞ!》
――う、うるさい! おかげで喉がカラカラよ!
私本体を合わせて5人の私はそれぞれに手裏剣を両手に持ち、相手の攻撃を躱しながら投げつける。
「があっ?!」
「きゃあ?!
「うっ?!」
コアへの狙いを定めた私の手裏剣でどんどん斬り裂かれる機械人。しかし、次から次へと人数が増えてくるので埒が明かない。
――仕方ない!
「氷遁、氷監獄の術」
私は地面に手を付け、氷結魔法を発動する。
この術は手から地面を通してその上に立っているもの全てを凍らせてしまい、多数の敵の動きを完全に封じ込めてしまうというもの。
この術で凍らせられたものは息をすることすらままならず、氷が身体の中にまで達することで凍死させてしまう。まさに地獄の檻無し監獄である。
この術により、周りから押し寄せていた大多数の機械人全てを凍らせて行動不能にすることに成功した。
しかし、この術は発動範囲を広げるほど魔力を使い過ぎてしまうので、今の私の魔力をほとんど持っていってしまった。
思念「や、やっばぁ~い。あんた本当に何者なの? 敵じゃなくて良かったぁ……。」
《しかしそれなりに魔力を使っちまったな。もう天使族クラスが出てきたら太刀打ちできんぞ。》
――分かってる。でも時間もないんだからしょうがないよ。もしもの時は……逃げるだけだよ。
私達は辺り一面に広がる凍った死体の山を通り抜け、船内の奥へ進んで行った。先ほどの騒ぎで私達が内部へ侵入したことが分かったのだろう。船内の機械人全てが魔動力を発動させた。
だが、それは私にとってとても好都合なことだった。機械人達の魔動力の発動に伴ってコアが起動しているので、私はアイレンズでそれを感知できる。位置が丸見えな機械人達に用事はないので、戦いを避けてどんどん奥へ入っていくことができたのだ。
この騒ぎの中でも人間の反応のままの者が勇者候補で間違いないだろうと思い、その反応がある場所を感知マップを広げて探し出した。
その場所には全部で7名の人間の反応が残っていたので、私達はそこへ向かって素早く移動し、やがて反応がある場所の扉の前に到着した。
1名は更に奥の部屋らしき場所におり、6名が隣の部屋にいるようだ。
私がその分厚い扉に手を付けた瞬間にその扉が爆発した。その爆発に巻き込まれて私の身体は吹き飛ばされて炎に包まれた。
――もちろん、闇分身体だけどね。
それで倒せたと思ったのか、6人のうち1人が悠々と無警戒で近づいてくる。
「忍殺、龍雷拳」
「うあ“ぁッ?!」
近づいたその者に向かって私は忍殺拳を放った。しかし、本当の人間だといけないので、かなり威力を弱めに打っていた。
仲間が吹き飛んで来たことで、残りの5名が魔動力を発動した。私に吹き飛ばされた1名もすぐに起き上がり、魔動力を発動させた。
「いってぇ! このくそブス! ぜってぇ許さねぇ!」
――ブ、ブス?! ブス言うなし! ブス関係ないじゃん!
ここには6名の機械人がいた。更に隣の扉の奥にいる1名は人間の反応のままだ。そして、ここにいる6名の機械人はかなり優秀なのだろう。
コアから発せられている魔動力量も立ち振る舞いなどがその辺りの機械人とは違っており、今までの機械人とはワンランク上の者達だと思った方がよさそうだ。
――そっちが多人数でくるならこっちもだ!
私は先ほど吹き飛んだ分の闇分身体1体を再度作り出す。なので数は闇分身が4体と私本体といまだに私の背中に乗っているヨゴレの合計6人になっている。
「フレイムバレット!」
機械人達はそれぞれが訓練されたような動きで、前に2人、真ん中に1人、後ろに3人という配置に付いた。その直後、後ろにいる3人から狙いを定めた遠距離攻撃が飛んでくる。その威力もやはり強力であり、変化服を着ている私でも当たれば怪我をしてしまうレベルなので、素早くそれを躱す。
尚も機械人達は私達の動きを誘導するかのように、続けざまに後ろ側へ同じ遠距離攻撃を仕掛けて来る。それにより後ろへ下がることが許されない状態に無理やり持ち込まれる。仕方がないので、私の分身体2人が先行し活路を作ろうと前にいる2人に攻撃を仕掛ける。
「忍殺、龍雷拳」
しかし、闇分身2人の攻撃は前の2人の盾を構えた重装備に弾かれてしまった。そのすぐ後ろから私をブス呼ばわりしたあの女の機械人が、前の2人の間から長い槍を突き出して攻撃をしてくる。それにより闇分身の1人の肩を貫かれて動きを止められてしまった。たまらず後方へ下がると、後ろの機械人3人が遠距離魔法で常に追撃をしてくる。
――私1人じゃダメだ。
「ヨゴレ、手……貸して」
「え?! う、うん! やる! 力になりたい!」
ヨゴレは私の背中から降りて、コアギアを発動させる。そして、あの巨大な魔物を吹き飛ばしたあの魔法を放つ。しかし、攻撃を仕掛けるヨゴレに向かって3方向から遠距離魔法が飛んでくるので、それを私の闇分身体3人が捨て身で受け止めて阻止する。その攻撃で闇分身3人は消滅してしまった。
「風魔法、インパクト・ドライブ」
ヨゴレは盾を持った前の2人に向けて全力の攻撃を打ち込むが、それを2人がかりで止めに入る。しかし、ヨゴレの攻撃で盾が上に弾かれて胴体がガラ空きとなった。
私(本体)と闇分身の1人は瞬時にその懐へ入り、身体の内部から破壊する桜雷拳を同時に2人へ向けて打ち込む。すると、その攻撃で身体の内部からコアを破壊された前の2人は倒れることになった。




