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第76話 雲の中身は?

 それからインチキから状況を聞いた。


 北の国王(キリサメ)はこの中央の国(ルドラルガ)に来ている。そして、インチキを使い国民を安心させて通常の生活を送る様に言わせた。

 

 一方インチキは、この王都の周りに魔物や機械人が配備されていて逆らうことが出来ないのだ。逆らえば、その瞬間に人間を襲わせるとキリサメに脅しをかけられている。

 インチキとしても国民がパニックになるよりはいいが、危険が常にあるということに変わりはない。

 

 それに衝撃だったのは、北の国(テンガラス)の住民が全てが機械人だったということだ。もうあの国に人間は存在しておらず、今はその大量の機械人が魔物を先導する形でこの国含めて各国に散らばっているらしい。


――だから天空界のことを街中で聞き込みしていたデスとポチとインコが襲われたんだね。まさか国の住民全てが機械人だなんて思わないもんね……。


 そして、この中央の国(ルドラルガ)、国王が死んだ東の国(リスリル)、今泡吹いて倒れている南の国(センテロス)の3つの国にその機械人達が迫っている。


――それで港町にもあんな魔物が現れたのか。でも機械人はいなかったね。


 そして明日の早朝、インチキとこいつ(エドルド)を処刑した瞬間に魔物と機械人に国を襲わせ、全ての人間を捕獲する計画を実行するらしい。


 因みに西の国(シリウス)は一度、西の国(ハピシス)へと戻り、国民への説明や今後のことについての話をしているところだという。

 まぁ西の国でシリウスに歯向かう者もいないようで、おそらくはすんなり事は進むのだろうとインチキは話していた。


「そうなると国の周りにいる大量の魔物と機械人が厄介だよね。さすがに相手しきれないよ。」


《主、皆を出してもらえるか?》


 私は異空間を開く。

 すると全員が出て来たので、狭い牢屋がギュウギュウになる。


「あ、あ、あ、あ、アンタねぇ! 変態! 鬼畜! けだもの!」


 私の顔を見るなり、顔を真っ赤にしたまま罵倒を浴びせるヨゴレ。


――それはまぁ……ごめん、私も寝ている時は記憶がないんだよ。


 その声に気が付いたインチキが声をかける。


「やぁ、無事だったんだね! 良かった。アンブくんたちと一緒にいるのかい?」


「あ、マキシム様……アタシ……。」


「インチキでいいよ! 君もそう呼んでくれ。」


「インチキ様……。」


 ヨゴレもとりあえず元気を取り戻しているし、重症だったクモも私にべったりくっ付きながら胸に顔をスリスリしている様子からすっかり完治している。


「主様、マヌケ様、朗報です! 魔物を操る薬を打ち消す薬を作成しました。」


「ほ、本当に?! 凄い! これで魔物は無力化できるかな!」


「そうですね。普通の状態に戻ればワレワレの特殊な音声で迷宮内へ帰すことが出来ます。」


――コンちゃんマジ有能すぎでしょ! 魔物だけでも無力化できればだいぶ負担は減るよね。


《そうだな。とりあえず期限は明日の早朝までだ。各自、しっかり準備するぞ。》


「「はい!」」


 それから私達は手分けして準備を進めた。


 コンが開発した魔物を操る薬の効果を無力化するその薬は、同じように霧状にすることで効果を発揮するようだ。

 なので、敵と同じようにマヌケがあの時限式のカプセルを神機カミオリの力で具現化し、その中にコンが妖術で作り出した薬をどんどん入れて行く。

 

 その間に私はヨゴレと2人で北のテンガラスへと来ていた。


「……ねぇ、なんでこの組み合わせなの?」


――だってあなたが何かしたいとか言うからじゃん! マヌケめぇ~、わざと2人で行かせるんだから……。


 そう、皆が仕掛けの準備をしている間に私は1人でテンガラスにいると思われる勇者候補ちゃんを探そうと思ったのだ。

 マヌケは私が1人で行くのをダメっていうから、クモでも連れて行こうと思ったのに、あろうことかヨゴレに行くように言ったのだ。


 おそらくは私達を仲良くさせようと思ってのことだと思う。


「……ねぇってば……返事してよ。さっきからアタシしか喋ってないじゃない。」


「……」


――気まずぅ……マジで気まずい。これは後でマヌケにお仕置き確定だね。


 こんなやり取りをしながらも私はヨゴレをおんぶして国の外である極寒地帯を超高速移動している。

 私はマヌケと違って空を飛ぶよりも走る方がずっと速く移動できるのだ。


 私やヨゴレが寒さと空気抵抗を感じずにいられるのは、私が空間魔法で周囲の空間を支配しているからなのだ。


 それにアイレンズとスキル感知を全開で展開しているので、出来ればそっちに集中していたい。

 まぁあんまり言いたくはないけど、今のヨゴレは正直邪魔でしかないのだ。


「ねぇ、この国の勇者候補を探してるんでしょ? こんな走り回っていて見つかるの? というかアンタのスピードが早すぎてアタシ引いてるんだけど。」


――うるせぇ……なんでこっちがいろいろ気を使ってんのに私が引かれなきゃいけないのよ。もうこの子ここに置いて行っちゃおうかしら……。


 私は少しイライラしながらも更に足を速める。


「……ねぇねぇ! あっこにある大きな雲さぁ、船の形してると思わない? 前も同じ形していたから覚えてるのよねぇ。あはは。」


――こいつ~人が一生懸命手がかりを探している時に……ん?! 雲?! 前と同じ形?! そんなわけないじゃん!


 私は翼を出現させて、ヨゴレが指さした雲へ向かって飛び立つ。雲へ徐々に近づいていくと、今まで感じなかった人の気配が雲の中からするではないか。


「へッ?! アンタいくらそんなにあの雲が珍しいからって飛んで行く事ないでしょ?!」


 私はヨゴレの言うことを軽~く無視して更に雲へと近づいた。


 すると、雲の中から魔動力の発動を感じた。どうやらここにいるのは全員が機械人のようだ。そして向こうも私達に気が付いているようだ。


 雲の中から突然魔動力による様々な魔法攻撃が飛んでくるが、もちろんアイレンズで見ている私にそんなものは通用するはずがない。


 瞬時にその攻撃を回避しながら更に近づいていく。


「きゃあああ?! ちょッま?! ひッ?! ぎゃッ?!」


――後ろが凄くうるさい……。


 私は全ての攻撃を回避して、雲の中に飛び込んだ。


 雲の中には空飛ぶ巨大な戦艦が現れた。その戦艦は全体から雲となる蒸気を排出しているようで、常にその姿を隠していたようだ。

 

 その戦艦に付いている砲台が一斉にこちらを向いている。


「あわわわわ?! ね、ねぇ……逃げよ?」


「……嫌」


「あぁぁぁぁあああああ?!」


 そして、その砲台から一斉に魔動力による魔法が放たれた。


 叫ぶヨゴレを無視して私は一気に急加速し、それらを回避していく。その攻撃と敵の様子からして非常に焦っているようだ。


 船台には何人もの機械人が姿を見せていた。


「暗遁、闇隠やみがくれの術」


 私が暗黒魔法で大量の黒い霧を発生させたことで、それが煙幕となり私達の姿を隠してしまった。

 私達の姿を見失った機械人達は大パニックを起こしていたが、その間に戦艦の中に入り込むことが出来た。


 潜入の時に声を出されると困るのでヨゴレの口を押えていたのだが、どうやら鼻まで抑えてしまっていたようで、息が出来ずに意識を失いかけてピクピクしていた。


――ご、ごめん。わざとじゃないのよ?!

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