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第75話 神々しさと切なさと

 無事に港町の危機を救った私達は港まで戻っていた。森へ逃げていた人達もあの子達が安全な場所へ誘導してくれていたので、全員が無事だった。

 しかし、今回はたまたまこの港町に私達がいたから良かったけど、いなかったらどうなっていたか分からない。


 とりあえず皆が無事なのを確認したので、私達はログハウスに戻ってしばらくゆっくりしていると、町の人達がいろいろと食べ物などの差し入れを持ってきてくれた。

 何か悪いなぁとは思いつつも、私が物欲しそうにしているのをマヌケが見ていたので、それはありがたく頂くことにしたのだ。

 そして、その中には気まずそうな町長(モトクズ)の姿もあった。お互い気まずそうにしながらもマヌケがいろいろと話をしていた。その内容は、もし今後も魔物が現れた時には無理に戦うことはぜず、安全に避難できる場所を確保しておいて皆でそこに隠れておくようにすると話していた。

 モトクズはそれを伝えると私達に頭を下げ、皆と一緒に帰っていった。


――確かに隠れているのが1番いい方法だと思う。私達がいつもここにいればいいけど、今の状態ではそうもいかないしね。下手に動いた方が危険だもん。


 もらった差し入れをハムハムしていたら、ヨゴレが口を開く。


「あ、あのさ……怖くて聞けなかったんだけど、アタシってここにいてもいいの?」


――な、なんで私に聞くの?!


 マヌケを見るとニコニコしながら私を見ている。私はいつもの無表情のまま、コクンと首を縦に振る。するとヨゴレはあのとろけるような笑顔でニヤケている。やがて、咳払いをして口を開く。


「ま、まぁ~どうしても一緒にいたいっていうんなら……しょうがないから、いてあげるわよ。」


「また個性的な人間の方が増えましたね。楽しくなりそうです!」


「コンちゃん? その個性的な人間が増えたというところについて少しお話しようかぁ。」


 笑顔で迫るマヌケに、冷や汗をかきながら後退りしていくコン。


「へっ?! い、いやですよマヌケ様! あ、主様?! すぐに異空間へ帰していただけますか?! クモの包帯を変えないといけません! は、早くお願いします!」


 面白そうなのでそのままにしておこうかとも思ったけど、クモの包帯を変えるのは本当の事だったようなので、もらった差し入れを持たせて皆を異空間へ帰してあげた。とりあえず、残った私とマヌケとヨゴレはお風呂に入った。その時に見た私の変化服とお風呂にはヨゴレも驚いていた。一瞬にして脱衣する私を見たヨゴレは思い出したようにつぶやく。


「そ、それは剥ぎ剥ぎの……」


――だから剥ぎ剥ぎって何なの?!


 そしてこのお風呂にはヨゴレも驚愕していた。


――まぁ無理もないと思うよ。日本人である私から見てもこの温泉はなかなかものだもん。


 ヨゴレは身長がマヌケより少しだけ高いけど、膨らみが貧相だ。マヌケやコンには程遠く、私よりは大きい。けど、身長が少し高いせいなのか実際より小さく感じる。


「……」


「な、なによ! 何か言いたそうね! 言っとくけどアンタよりは大きいわよ!」


「でもヨゴレちゃん、身長のわりに小さく見えるね。」


「んな?! くっ……。」


 マヌケは思った事をすぐに言っちゃうのだ。しかも本人に全く悪気が無いのが更にたちが悪い。私もそうだけど、この歳の女の子が体形を気にしないわけがないのだ。

 マヌケみたいにそこまで気にしていない人ほど、スタイルが抜群なのは世の中の残酷現実なのだ。


 それから私達はワチャワチャイチャイチャしながらお風呂から上がり、ベッドに横になる。するとモジモジしているヨゴレが口を開く。


「あ、あのさアタシもここで寝ていい? 今までコンのところで寝てたんだけど、あの子の研究所……なかなか強烈でね。アタシは床でもいいからさ。」


――何となく想像できるわぁ~。いろいろとえぐい物がいっぱいありそうね。


「そんな事言わずにこっちおいでよ! 一緒に寝よ。」


「んな?! し、しょうがないわねぇ! どうしてもっていうなら寝てあげるわよ!」


 とても嬉しそうにベッドに入り込んでくるヨゴレ。


――ふふ。本当は一緒に寝たかったくせに素直じゃないんだから。


「あ、でもヨゴレちゃん、宇宙に飛んで行く覚悟はある?!」


「はぁッ?! どゆことっ?!」


 それから私達は眠りについた。いつも通りマヌケの温もりを全身に感じる。


――なんかまだ知り合って間もない子が隣で寝てるなんて想像もしなかったな。ちょっと前の私なら絶対にありえなかったな。まぁ全然平気では無いのだけど……。多分マヌケが隣にいることで安心してるんだと思うな。ってかもう2人とも寝てるし! ヨゴレも今までそんなに寝れてなかったのかもしれないね……。もう寝よ、おやすみ2人とも。



――う~ん。この心地いい感触は昨日と一緒だからまたマヌケの上で寝てたのか。


 私は昨日と同じように裸のマヌケの上に寝ていたみたいだ。横向きに目をぱちくりと明けてみると、窓から差し込む日の逆行に照らされているヨゴレの姿があった。ヨゴレはお尻を突き出したように四つん這いの姿のまま寝ているようだ。その姿は逆光によってシルエットのみ見えているので、神々しさすら感じる。


――こいつもどんな格好で寝てんの?!


 私は状態を起こしてもう一度ヨゴレの姿を見た瞬間に切なさを感じた。それはマヌケと同じように全ての衣類を剥ぎ取られ、寝ているというか気絶している状態のヨゴレを目の当たりにしてしまったからだ。この状態は、確実に原因が私であるという証明になっている。


 私はその切なさを紛らわそうと、マヌケの上でスリスリを堪能する。


《おい、変態。さっさと起きろ! 王都へ行くぞ。》


――へ、変態言うなし! ち、違うもん! 変態じゃないもん!


《分かったからささっと2人を起こせっての。》


 私は変化服をいつもの服装へ変化し、2人を起こす。マヌケはすぐに起きたが、ヨゴレは全く起きる気配が無かった。

 仕方がないので服を着せて、異空間へ放り投げてから私達は王都へ向かった。


 インチキの城の屋上に到着し、アイレンズとスキル感知を発動する。すると、この王都内はまだ人の気配があるようだ。ただし、王都の周りにはそれ以外の魔物の気配もしている。ある一定の距離を保ったまま動く気配もないその様子から、操られている魔物だと推測する。


 私がインチキに近づいたことでインチキの花びらから盗聴ができる。私はイヤホンを起動し、インチキの花びらから音を飛ばす。


「マキシム、これからどうするのだ? 全ての国は機械人と魔物に囲われていつでも襲う準備が出来ていると脅されている。それにお前の国の技術が向こうへ渡った今、我々にはもう対抗できる手段がないぞ。それに明日には俺もお前も殺されてしまう。」


「エドルド、まだ諦めてはいけない。命ある限り、国民を守る為に尽力するのだ。」


「しかし……どうしたらいいというのだ。」


「……アンブくん。」


「……何?」


「うおぅ?! アンブくん?! な、な、なんでここに?!」


「お前たちどうやってこの牢屋へ?! それよりもお前がマキシムのお気に入りのアンブとやらか……お前、そんな趣味なのか?」


「お、おい! お前そんな言い方……ひッ……」


 私はつい、南の国王エドルドを威圧してしまった。それによりエドルドは口から泡を吹き倒れてしまった。


「それよりインチキさん、状況を教えてください。」


「いやいや、自然と話はじめちゃうの?! なんか扱いひどくない?! こいつも一応国王……」


「もう少しアンブの威圧が遅かったらアタシが撃ち殺していたところですよ? まだそれで済んで良かったじゃないですか?」


 そう、私がアイツを威圧したのはマヌケからとんでもない殺気を感じたからだ。銃に手をかけそうな雰囲気を咄嗟に察知してしまったので、その前に失神してもらった。


――まぁ私自身もあんな言われ方したら気分がいいものではないしね。


「ご、ごめん……なさい。」

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