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第7話 華麗に見参

 鹿の混信の火の玉攻撃を躱した私は、半身になり少し腰を落として左手は前に、右手は手の甲を下に向けて拳を握って構えた。これは、スパイと忍者の体術を合わせた忍殺拳の構えだ。


 私はそのまま鹿の近くまで一気に移動して、忍殺拳の突きを放った。手の甲を下に向けた状態から放たれる忍殺拳の突きは、インパクトの瞬間に回転が加わり殺傷能力を上げるのだ。

 その名を、龍雷拳リュウライケン


 おそらく急所と思われる首の付け根らへんを狙って放った龍雷拳(リュウライケン)により鹿の首から上が吹き飛んだ。

 そのまま鹿の本体は倒れ、やがてガラスが割れるようにパリパリと跡形も無く消滅してしまった。


――ふぇぇぇええ?! これ威力強すぎじゃね? お父さんがこれ打ってもこんな威力出ないよ?! でもまぁ、終わったぁ……。


 とりあえず危機は脱したようで安心した。しかし、鹿があちこちに火の玉をぶっ放してくれたおかげで、他の魔物が集まってくるような気配をアイレンズが表示している。なので、私はすぐさま気配を消して、その場を去った。


 安心したら凄くお腹が減りました。クレープが食べたい。クズ神のせいでそれしか考えられない。あいつの「クレープ美味しかったよ自慢」が頭から離れない。


――もう一度心に誓う。あいつは絶対に1発殴ってやると。


 とりあえず気配を消したままあちこちを歩き回っているが、どうやらこの洞窟はとんでもなく広いようだ。


 結構な距離を歩いているが、全く出口が見つからない。行けども行けども、岩・岩・岩。


 途中で何体かの魔物らしき生体反応をスキル感知で確認したので、それを回避しながら歩いている。スキル感知も本当に便利なスキルだ。私的にはわざわざ危険を犯して戦う必要もないし、向かってこない限りは全く戦うつもりもない。だから、魔物を避けながら進んでいけるのは本当にありがたい。


 それにスマコがスキル感知の情報を元に道筋のアドバイスをしてくれている。また、私は常に神成カミナリモードを発動したままにしている。これは、スキルも神成カミナリモードも無理のない範囲で常時開放していれば勝手にレベルも上がるし、神成カミナリモードにも身体が自然と慣れていくらしい。それに、突然危険が迫った時にも対応しやすいので安心だということだった。


 本当にスマコは頼りになる。もともと七つ道具の中でも結構スマコには頼りっきりだった。アイレンズの中で文字のやり取りだけだったけど、他の道具とは違って意思の疎通が出来るAIだったので、いつもどうしたらいい? とか、スマコお願い! という言葉は多かった気がする。


 それが今では言葉を交わせるということで更に親近感が湧いてしまった。


――そんなわけでスマコ、どこにむかってんの?


《何がそんなわけなのかわかりませんが、そのまま真っすぐ進んで下さい。》


――ねぇスマコ、ここ広すぎない? ずっとこんな場所が続くの?


《スキル感知の情報によると、この先に細い通路があります。それを上って行くとまた広い空間があるのですが、そこでは水の音が聞こえます。水の音が聞こえるという事は、何かが水の中にいるということ。更にそこからは魔物の反応がないことから、魚である可能性が高いと解析します。》


――さすがスマコ! 私はまだそこまでの情報とか分かんないから凄く助かるよぉ。でもこんなところにもお魚はいるんだねぇ。そういえばさっきの鹿ってさ、バラバラになって消えたよね? こっちの星では、あぁやって生き物は消えるものなのかな?


《いえ、あれは魔物だけです。》


――なんで?


《この迷宮の中に生きている魔物は、細胞がデジタル形式となっており、それを複数のプログラミングにより繋げて動かしています。それを形成しているプログラムは……》


――もういい! もういいから! 全然何言っているかわかんないから! ……えっと、つまりあんな感じで消えるのは魔物だけで、他の魚とかの生物は消えないってことだよね?


《その通りです。》


――なるほど! それなら、本当に魚がいたら捕って食べることも出来るかもしれないね! 

 

 ヘタレを探すのにもまずはこの迷宮で生き残ることが大事だ。それには絶対に食料がいるからね。


 私は周りの魔物に気を付けながら気配と足音を消した状態で移動しスマコが教えてくれたその通路に向かう。


 普通の人間には私の気配を感じることは出来ない。もとから影が薄いのが取り得でもあったんだけど……。


 しかし、鹿みたいに鼻が利く魔物がいたならそれを回避することは出来ない。どうしても人間からは独特な匂いが出てしまっているみたいだし。


 ヘタレは私が気配を消していてもすぐに見つける。なんで私だとわかるのか聞いたことがあるんだけど、


「だってアンブ。いい匂いするもん。」


 と抱き着きながら匂いを嗅がれていた。いやいや、むしろヘタレの方こそいい匂いがするんだけどなぁ~って思いながら私もクンカクンカしていた。ヘタレは私が近づくと瞬時に匂い感じ取っていたようだった。


――あの子は鹿と一緒なのか……。ふふふ、ちょっと笑るね。


 自分からどんな匂いが放たれているのか、自分でわからないから非常に怖い。もちろん毎日お風呂には入っているけど、香水なんて付けているわけではない。少なくとも体が臭いとか今までに言われたことはないけど、そもそも本当に臭かったらそれを本人の前では絶対に言えないしね。


 まぁ、そんなわけで匂いに敏感な魔物が出現したら私の隠密は意味を成さないのだ。その危険も頭に入れながら、スキル感知とスマコの力を借りて慎重に進んで行く。


 順調に狭い通路がある場所までやって来ることが出来た。通路は更に暗いけど、アイレンズのおかげで私には昼間と同じくらいには見えている。そのくらい通路には所々に小さなクリスタルみたいな石があり、それがほんのりと光っていた。


 更にその通路を進むと、道が行き止まりになっていた。しかし、上を見上げると大きな穴が空いており通路はその先に続いていたようだった。


 私は神成カミナリモードを10%に引き上げて、壁を蹴り上がりながら上って行く。30mくらいは上っただろうか、絶対に下を見たらあかんやつや……。


 そう思いながら私は上だけを目指して蹴り上って行く。

 やがて出口に辿り着き、広いエリアに出た。

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